考えようによっては近未来SF的な設定かと思いきや、あくまでも和風のホラーです。
妖怪とは違う「妖人」・・・・とか、まあ、その世界観の構築にかなりの紙面が割かれ、その甲斐もあって、独自の世界観をかもし出しつつ、日本的妖怪らしい雰囲気も取り込んでいて、それでいて違和感のないホラー小説になっています。
但し、あくまでも今時のホラー。
なにやら説明のつかないまま、不思議な恐怖感とうやむやなうちに終わってしまう怪談とは異なります。
合理的な説明がついてしまうのがねぇ~。
不条理的な不満は残らない代わりに、余韻の残り方があくまでも今風なのです。
最終的に人間心理の綾というか微妙さで引っ張る系です。
京極氏の妖怪本流行以来、個人的には嫌な風潮が流行っているなあ~と思っていますが、本書なんかも率直にいうとその流れですね。但し、あそこまで嫌らしさはない。
もう少し曖昧な部分も雰囲気として残しているので、その点では気付かない人なら、普通に雰囲気によって読めてしまうかもしれません。読後感は悪くないです。和風な風情もしっかりあります。
でも・・・この作品は続編が出ているようですが、もういいかな?
特に後続シリーズを読みたいとは思いませんでした。普通の怪談がいいな、私なら。
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