一方で肝心な大聖堂の姿を十分に写真として撮っておらず、本末転倒も甚だしい。建築物としての大聖堂を的確且つ十分に捉えていないので、大聖堂理解に役立っていないのが、なんともイタイ本である。
また、写真そのものの色調や色合いも綺麗とは言えず、発色も良くない。コメントでさんざん美しいステンドグラスというものの、そこに載っている写真は、黒っぽくつぶれていたり、平板に写っていてお世辞にも美しいとは思えない。著者はプロの写真家であると経歴が書かれていたが、全くの期待外れで本当かどうか私には信じかねる?(勿論、印刷時の問題もあるのかもしれないが・・・それでもね) 小細工など要らない。対象を正確に、且つ的確な構図で美しく写したものが見たかった。やや独り善がりな技巧的な写真(しかも美しくない)が目につく。
本書は、ある種写真集に近い感じで、説明として文章が入っているのだが、この説明もいただけない。必要な記述が欠けている反面、エッセイ的な要素を入れてしまい、結局意味のないコメントになってしまっている。むしろ、割り切って旅行ガイド的な名所説明の方が、はるかに有用で好ましい。
いろんな意味で、お金を出して買う価値を見出せない本だった。申し訳ないが、現在の高性能のデジカメだと、素人でもかなりのものが撮れるし、ネット上にある写真に負けている。この本。
これを買うなら、芸術新潮などで組まれている特集号を購入しましょう。あちらなら、まず外れはありません。
【目次】
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