2007年05月22日

「スペインの大聖堂」菅井日人 グラフィック社

写真が豊富に使われており、その多くがカラーなのは良いが、写真自体は全然良くない。構図が適切であるとはいい難いうえに、大聖堂そのものを中心にしたタイトル通りの意図を持った写真ではなく、余計な人物や景色に貴重な写真を用いて大変もったいない。

一方で肝心な大聖堂の姿を十分に写真として撮っておらず、本末転倒も甚だしい。建築物としての大聖堂を的確且つ十分に捉えていないので、大聖堂理解に役立っていないのが、なんともイタイ本である。

また、写真そのものの色調や色合いも綺麗とは言えず、発色も良くない。コメントでさんざん美しいステンドグラスというものの、そこに載っている写真は、黒っぽくつぶれていたり、平板に写っていてお世辞にも美しいとは思えない。著者はプロの写真家であると経歴が書かれていたが、全くの期待外れで本当かどうか私には信じかねる?(勿論、印刷時の問題もあるのかもしれないが・・・それでもね) 小細工など要らない。対象を正確に、且つ的確な構図で美しく写したものが見たかった。やや独り善がりな技巧的な写真(しかも美しくない)が目につく。

本書は、ある種写真集に近い感じで、説明として文章が入っているのだが、この説明もいただけない。必要な記述が欠けている反面、エッセイ的な要素を入れてしまい、結局意味のないコメントになってしまっている。むしろ、割り切って旅行ガイド的な名所説明の方が、はるかに有用で好ましい。

いろんな意味で、お金を出して買う価値を見出せない本だった。申し訳ないが、現在の高性能のデジカメだと、素人でもかなりのものが撮れるし、ネット上にある写真に負けている。この本。

これを買うなら、芸術新潮などで組まれている特集号を購入しましょう。あちらなら、まず外れはありません。
【目次】
スペインの大聖堂
アンダルシア地方
ラ・マンチャ/マドリッド地方
カスティーヤ・イ・レオン地方
ナバラ/バスク/リオハ地方
カンダブリア/アストリアス/ガリシア地方
ムルシア/バレンシア地方/バレアレス諸島
アラゴン/カタルーニャ地方

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posted by alice-room at 21:07| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】 | 更新情報をチェックする
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