
な~んか堅い内容かと思うと、実際はそうでもなく、単なる好事家や好き者でも楽しめちゃうような作りですが、それだけではない研究者としての思い入れも含めてかなり楽しく読めちゃう本です。その手のものに抵抗がない人なら、絶対に楽しめますね! いろんな本や川柳から題材を採っていますが、非常に分かり易い(まさに)意訳をしてくれていて、それが安っぽくならないギリギリの程度で噛み砕いてくれていて、誰でも分かし、内容がとっても興味深い。
幼きは5・6歳の子供の性的高まりや乳母への限りない愛着など、今読んでも男性諸氏には誰でも心当たりがなくもないかつての思い出にう~む、となってしまいます。さすがに乳母はいませんでしたが…。
年頃になれば、至る所で見目麗しい男の子が、年頃の青年達の毒牙の危険にさらされていた社会状況とか、へえ~っと思うことばかり。もっとも、それで殿様の覚えがめでたく、後々も立身出世につながることも珍しくなく、まさに麗しき愛の取り持つ機縁かな?と思いました。何よりも「心身ともに」が副臣には望ましいし、合理的かも? 女性よりもしっくりしていいとか、生々しい表現が至るところで描かれていて、それだけでもちょっとそそられる文章になっています。きっと買うのは男性じゃなくて、ヤオイ系の女子高生あたりの気もしますが・・・。倒錯の国ニッポン万歳!(って皮肉かい?)
他にも個人的に関心をそそられる事柄がいっぱい。「洗濯」が性的なことに結びつくって想像つきました? 私は知らなかったけど。江戸時代には、吉原みたいな売春婦を置く場所を設置する際に、お上への陳情書に書かれる名目として人足や船頭の衣類の洗濯をさせる女性を置くからと称したらしいです。なるほどねぇ~。売春は駄目だけど、特殊浴場としてサウナの機器を設置すれば良いというどっかの国と変わりませんね(同じ国で時代が変わっても、人は変わらないのです)。
あと、ご存知歌舞伎だと、四代目松本幸四郎が陰間茶屋で色子として男色サービスを提供していたが、そこから逃げて役者に弟子入りして功成り遂げた話も、さすが梨園の世界と納得してしまうものでした。人当たりがよくて優しい風情は、幼い頃の苦労が身に付けた賜物だったそうです。人生、何が役立つか分かりませんね。
他にもふたなり(アンドロギュヌス)の話や挙げるのにキリがないくらい興味深い事例なども多数。さらっと読めてしまいますが、何かというと異常性欲がどうのこうのと、大騒ぎする神経症気味の現代には、そのおおらかさが羨ましくもあります。もっとも、著者もそうはいいながらも、流行り病やちょっとしたことでいつ死ぬとも知れぬ人生であった、その刹那さ故のおおらかさであったことも指摘されていてバランスのいい本です。ちょっと、読むにはいい気晴らしになりますね(笑顔)。
江戸の性談―男は死ぬまで恋をする(amazonリンク)
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「昭和美少年手帖」中村 圭子編 河出書房新社
氏家幹人氏は、この手の題材が得意ですね。僕は、同じ作者の『江戸の少年』(平凡社ライブラリー)を持っていますが、その中にも、美少年が青年に狙われる話が出てきます。この本は、題名が、あれなんで、買いませんでした。(笑)
江戸と明治は連続しているので、そのような事件は明治にもあったようです。多分、お読みになったことがあると思いますが、確か、森鴎外の『ヰタ・セクスアリス』にも、少年が青年に追い回される話が出てきたような記憶があります。記憶違いでは、ありませんよね?最近、記憶力には自信がありません。(苦笑)
この本は、書店でたまたま目に入り、ちょっと読んでみたらなかなか見かけによらず、いけそうなんで即買いしてしまったものです。でも、ちょっとタイトルが…というのは、気持ちがよく分かります。センスがいいとは言いかねますね(失笑)。
森鴎外の『ヰタ・セクスアリス』、読んだような気がするのですが、私も全然覚えていなかったりします(お恥ずかしい)。性の目覚めみたいなやつでしたよね。もし、二人で飲んでたら、話題が盛り上がりつつも、「え~っとあの本、あの本」とか「題名忘れたけど、ソレ、ソレ」とかいう会話になりそう(笑)。
いつになるか分かりませんが、楽しみですね!以前、海外に住んでいる人と2年ぐらいメールしてて絶対に会うことはないと思ったのに、会う機会があったりするぐらいです。人の出会いはまさに縁ですね。