2015年09月13日

「21世紀の資本」トマ・ピケティ みすず書房

今年の頭だっけ? ピケティ本人も来日して講演してたりして去年辺りから日本でも大いに盛り上がっていたピケティ氏の本です。

TEDとか東大での講演とかは動画で見てましたし、東洋経済さんとかの30分で分かる~とか20分で分かる~とかの概略説明特集が飛ぶように売れていた(笑)あの大元の本です!

勿論、俗物の私もそちらの特集は読んだのですが、確かにうまくポイントをまとめていたとは思いますが・・・今回、改めて本をちゃんと読んでみて思いました。ピケティさんの本の一番良いところが結果としてほとんど削られてますね、あの手の要約記事だと。

というか・・・ピケティさんのあの r>g は大衆向けにはシンプル且つインパクトがあり、直観的にもしっくりくるものがあり、現在の日本も含めた世界で感じられる漠然とした『格差』拡大への疑念を明確化してくれそうな感じで大変、受けてる訳なんですが・・・・。

まあ、ご本人も著作でもまた講演でも言われているように、それが極めて政治的なレッテル貼りになってしまうのは避けようとされてましたね。もっとも、この手の本を喜んで飛びつき、賛成するも批判するもどちらも本をちゃんと読んでない(or読んでも理解できていない?)輩だったりする訳で、結果として印税でピケティさんをお金持ちにしてくれる大切な顧客でもあるので痛し痒しかもしれませんね(笑)。

昔のダン・ブラウンを取り巻く環境に似た感じ?
モノは全然違うけれど、結局、大騒ぎしてくれるのは誤解している読者層っていうのだけは共通です。

まあ、えらそうに読了した感じで書いてる私も読み終わったのはまだ400頁ぐらい。残り200頁ほど残っていますが、感想やら何やらドンドン忘れてきそうなので、まずはメモ。

読み始めに経済学の予備知識はあまりいらないような感じで書かれていますが、それは間違いでしょう。
マル経は要らないと思いますが(私もそもそも知らないので)、最低限、マクロ・ミクロといった近代経済学やざっとした経済学史ぐらいは教養として理解していることを求められていると思います。

某大手新聞社の経済記者レベルの教養水準だと、正直、無理です。

私が学生時代、新聞の経済面を読んでいてずいぶんと経済理論的に間違ったことをさも正論のように書いている記事を何個も見つけた覚えがありますが・・・経済学の教科書程度でかまいません、独学でもいいと思いますが、ちゃんと本読んで勉強すれば分かるレベルのことさえ知らない記者が記事書いてる日本です。

きちんと基本は分かったうえで本書も読みましょう♪
ビジネスが出来てもマクロ経済の話が分かるとは限りません!
個々の経済行為はマクロ経済に密接に結びついていますが、それを理解するにはきちんとした手順を踏んで理解することが必要でしょう♪

巷に溢れているピケティ論は、ほとんど自説を補強するための材料として、誤解され、あるいは故意に歪曲されて利用されて、結局はその人の政治的主張でしかない内容ばかりですので、聞き流しましょう。

勿論、私がここで書くのも私が自分で好き勝手に受け取ったピケティ論になるでしょう。
その認識を持っていれば、まだ良心的ですが・・・・巷には安保の話が何故か「戦争反対」なり、それを叫んでいる論理の飛躍を意識的or無意識的にしちゃう人達で溢れてますから、なんとも言えませんね。

まあ、現在の日本でも進行中と思われる「経済格差の世代を通じた固定化」が、本当にデータとして裏付けられ、その状況が進む一方であるならば、日本でも法律改正された相続税とかは大いなる英断と思うのですが・・・公務員への各種抑制策なども含めて決して無策で手をこまねいているだけではないのに・・・そういった面は誰も評価せず、株式のキャピタルゲイン課税とかもそうだし、消費税の税率上げて直接税から間接税へという流れは、これほど正統的な話でも全て反対とか・・・・理解に苦しむ・・・・???

おっと、内容がそれた。

本書の話ですが、とにかく豊富なデータに裏付けられて大きな視点で『富』がどの層にどの割合で所有され、それが国民所得全体に対していかなる割合を占め、それが時系列的にどのように変化していくか、またそれをとりまく経済学的、政治的、社会的な環境も含めて、それをもたらす要因についても意識しながら、トレンドを追っていくのですが、個々の国により、異なるものがあったり、複数の国で共通のものがあったり、それらを可能な範囲で解明していこうとするのですが、読んでて本当に面白いです!!

イギリスで永久に利払いされる国債が、農地で得られる地代と等価と見なされ、それが普遍的なモノと認識されていたとかね。デリバティブのブラック・ショールズ式とかでは安全資産としてリスクフリーの国債との裁定の話がありますが、学生時代に習った時、国債はリスクフリーというのが微妙な感じがしたけれど・・・。
こういう歴史的背景があったんですね。この歳になって、本書を読んでようやく実感が湧きました(苦笑)。

そういえば「オークションハウス」という漫画で、破産しかかったかつての名士が出てくるのですがその破産の理由が国債の暴落とか・・・・ね。かつてなら、まさに有り得ない(!)というのが実際の感覚だったんだろうなあ~とふと思い出しました。

そういやあ~デフォルを懸念されてたギリシヤ国債はリスクフリーじゃあないよね?
何年か前のNHKスペシャルでは日本国債のデフォルト可能性を取り上げたし・・・何があってもおかしくない世の中です。

そうそう、戦後のインフレが資本収益率を上回り、国民所得に対する資本収益の割合上昇を抑制し、長らく格差縮小傾向にあったというのもね。なるほどと思いました。

今では買収に怯える西武グループですが、創業者の堤氏は戦中・戦後に没落しつつあった旧華族等から土地を購入する契約を結び、その代金支払いを思いっきり引っ張り、分割・後払いにして、インフレでただ同然に土地を入手した話は有名ですが、これなんかもまさにピケティ氏の指摘に合致しそう(笑)。

他にも東急の強盗(五島)慶太とかも同じたぐいかなあ~。あちらはちょっと違うか?

まあ、他にも本書を読んでいると腑に落ちることが多々あり、それが実際に適切な統計資料解析によるものか、裏とるだけの暇も時間もないので一般読者には分かりませんが、それを差し引いても実に興味深い示唆に富んだ内容だったりします。読んでて楽しいです♪

そうそう、新興国が先進国に経済的側面でキャッチアップしようとする際には、通常では有り得ないような経済成長率(数パーセント)になることもあるが、やがてそれは他の先進国と同様に鈍化し、やがては1%とかの低い割合に収束するとかね。

高度経済成長期の日本や、何から何まで信用できない数値の中国の大本営発表数字とか、納得しちゃいますね。

あと米国のスーパー経営者の高額報酬とかね。
映画の「ウォール街」を思い出します!!
あれ見て当時は金融を目指していたのですが・・・何故かメーカー、小売りを経て現職へ・・・分からないものです。

あと・・・NHKスペシャルの海外報道番組だったかな?
アメリカのNYの特定地区(パークアベニュー)にいわゆる本物のセレブ(映画スターとかの小物じゃないです)が集まっているところがあり、そこに住んでるのは投資銀行のCEOとかね。

彼らは自らの資産を増やし、税から逃れる為の法律や制度作りの為に、シンクタンク作ったり、特定の政治集団に資金援助したり、ロビー活動して、更に自分達の資産増加を促す環境を作っていく様子を描き出していました。

えっと「パークアベニュー 格差社会アメリカ」とかってタイトルだったかな?
まさにピケティー氏が描く0.1%の人達ですねぇ~。

中流階級の世襲、ってのも本書には出てくるのですが、世界中にその世襲ができなくなっている傾向が著しいのが世界の関心事だったりしますね。日本も中流階級が失われつつある感じが実感としてありますもん!
親より生活水準が落ちていきかねない不安。

待っているだけで収入が上がっていくなんてことは期待できないし、マンションを買って、それを一定期間後に転売して得た利益を元にして更に大きな物件を買って・・・。
支払いのローンはインフレで限りなく実質的負担は減っていくし、所得も増えて・・・。

な~んてことが当たり前のように誰でもが期待出来てしまう、イージーモードの時代は終わったしまったんでしょうね。既存のインフラが老朽化して、その維持管理さえ、困難で縮小均衡しか予想できない社会。

まあ、私は働かなくても暮らしていけるように、早くなりたいです。
家の書斎か図書館に籠って本を読んでいられれば、それで十分なのですが・・・。

会社で不毛な仕事に追われる日常は耐え難いが今は資本蓄積まで我慢、我慢・・・。
それが蓄積出来るのかさえ、怪しいのですが・・・・ね?実際は。

本書は何にも政治的意図無しに、単なる経済の本として読むと面白いです。
読む人次第、その人の引き出し次第でいろんな気付きを得られると思います。

ただ・・・6千円は高いですね。
図書館で一度読めば十分なような気がします。

どうせ、数年もしたらみんな忘れてるしね。ブームも終わってます。
ただ、その時に読んでも本書の価値は変わりません。
きちんとした素養を持って、読める人なら、読む価値のある本だと思いました。
【目次】
はじめに
データなき論争?/マルサス、ヤング、フランス革命/リカード――希少性の原理/マルクス――無限蓄積の原理/マルクスからクズネッツへ、または終末論からおとぎ話へ/クズネッツ曲線――冷戦さなかのよい報せ/分配の問題を経済分析の核心に戻す/本書で使ったデータの出所/本研究の主要な結果/格差収斂の力、格差拡大の力/格差拡大の根本的な力――r>g/本研究の地理的、歴史的範囲/理論的・概念的な枠組み/本書の概要

第I部 所得と資本
■第1章 所得と産出
長期的に見た資本-労働の分配――実は不安定/国民所得の考え方/資本って何だろう?/資本と富/資本/所得比率/資本主義の第一基本法則――α=r×β/国民経済計算――進化する社会構築物/生産の世界的な分布/大陸ブロックから地域ブロックへ/世界の格差――月150ユーロから月3000ユーロまで/世界の所得分配は産出の分配よりもっと不平等/収斂に有利なのはどんな力?

■第2章 経済成長──幻想と現実
超長期で見た経済成長/累積成長の法則/人口増加の段階/マイナスの人口増加?/平等化要因としての人口増加/経済成長の段階/購買力の10倍増とはどういうことだろう?/経済成長――ライフスタイルの多様化/成長の終わり?/年率1パーセントの経済成長は大規模な社会変革をもたらす/戦後期の世代――大西洋をまたぐ運命の絡み合い/世界成長の二つの釣り鐘曲線/インフレの問題/18、19世紀の通貨大安定/古典文学に見るお金の意味/20世紀における金銭的な目安の喪失

第II部 資本/所得比率の動学
■第3章 資本の変化
富の性質――文学から現実へ/イギリスとフランスにおける資本の変化/外国資本の盛衰/所得と富――どの程度の規模か/公共財産、民間財産/歴史的観点から見た公共財産/イギリス――民間資本の強化と公的債務/公的債務で得をするのは誰か/リカードの等価定理の浮き沈み/フランス――戦後の資本家なき資本主義

■第4章 古いヨーロッパから新世界へ
ドイツ――ライン型資本主義と社会的所有/20世紀の資本が受けた打撃/米国の資本――ヨーロッパより安定/新世界と外国資本/カナダ――長きにわたる王国による所有/新世界と旧世界――奴隷制の重要性/奴隷資本と人的資本

■第5章 長期的に見た資本/所得比率
資本主義の第二基本法則――β=s/g/長期的法則/1970年代以降の富裕国における資本の復活/バブル以外のポイント――低成長、高貯蓄/民間貯蓄の構成要素二つ/耐久財と貴重品/可処分所得の年数で見た民間資本/財団などの資本保有者について/富裕国における富の民営化/資産価格の歴史的回復/富裕国の国民資本と純外国資産/21世紀の資本/所得比率はどうなるか?/地価の謎

■第6章 21世紀における資本と労働の分配
資本/所得比率から資本と労働の分配へ/フロー――ストックよりさらに推計が困難/純粋な資本収益という概念/歴史的に見た資本収益率/21世紀初期の資本収益率/実体資産と名目資産/資本は何に使われるか/資本の限界生産性という概念/過剰な資本は資本収益率を減らす/コブ=ダグラス型生産関数を超えて――資本と労働の分配率の安定性という問題/21世紀の資本と労働の代替――弾性値が1より大きい/伝統的農業社会――弾性値が1より小さい/人的資本はまぼろし?/資本と労働の分配の中期的変化/再びマルクスと利潤率の低下/「二つのケンブリッジ」を越えて/低成長レジームにおける資本の復権/技術の気まぐれ

第III部 格差の構造
■第7章 格差と集中──予備的な見通し
ヴォートランのお説教/重要な問題――労働か遺産か?/労働と資本の格差/資本――常に労働よりも分配が不平等/格差と集中の規模感/下流、中流、上流階級/階級闘争、あるいは百分位闘争?/労働の格差――ほどほどの格差?/資本の格差――極端な格差/20世紀の大きなイノベーション――世襲型の中流階級/総所得の格差――二つの世界/総合指標の問題点/公式発表を覆う慎みのベール/「社会構成表」と政治算術に戻る

■第8章 二つの世界
単純な事例――20世紀フランスにおける格差の縮小/格差の歴史――混沌とした政治的な歴史/「不労所得生活者社会」から「経営者社会」へ/トップ十分位の各種世界/所得税申告の限界/両大戦間の混沌/一時性のショック/1980年代以降のフランスにおける格差の拡大/もっと複雑な事例――米国における格差の変容/1980年以降の米国の格差の爆発的拡大/格差の拡大が金融危機を引き起こしたのか?/超高額給与の台頭/トップ百分位内の共存

■第9章 労働所得の格差
賃金格差――教育と技術の競争か?/理論モデルの限界――制度の役割/賃金体系と最低賃金/米国での格差急増をどう説明するか?/スーパー経営者の台頭――アングロ・サクソン的現象/トップ千分位の世界/ヨーロッパ――1900―1910年には新世界よりも不平等/新興経済国の格差――米国よりも低い?/限界生産性という幻想/スーパー経営者の急上昇――格差拡大への強力な推進力

■第10章 資本所有の格差
極度に集中する富――ヨーロッパと米国/フランス――民間財産の観測所/世襲社会の変質/ベル・エポック期のヨーロッパの資本格差/世襲中流階級の出現/米国における富の不平等/富の分岐のメカニズム――歴史におけるrとg/なぜ資本収益率が成長率よりも高いのか?/時間選好の問題/均衡分布は存在するのか?/限嗣相続制と代襲相続制/民法典とフランス革命の幻想/パレートと格差安定という幻想/富の格差が過去の水準に戻っていない理由は?/いくつかの部分的説明――時間、税、成長/21世紀――19世紀よりも不平等?

■第11章 長期的に見た能力と相続
長期的な相続フロー/税務フローと経済フロー/三つの力――相続の終焉という幻想/長期的死亡率/人口とともに高齢化する富――μ×m効果/死者の富、生者の富/50代と80代――ベル・エポック期における年齢と富/戦争による富の若返り/21世紀には相続フローはどのように展開するか?/年間相続フローから相続財産ストックへ/再びヴォートランのお説教へ/ラスティニャックのジレンマ/不労所得生活者と経営者の基本計算/古典的世襲社会――バルザックとオースティンの世界/極端な富の格差は貧困社会における文明の条件なのか?/富裕社会における極端な能力主義/プチ不労所得生活者の社会/民主主義の敵、不労所得生活者/相続財産の復活――ヨーロッパだけの現象か、グローバルな現象か?

■第12章 21世紀における世界的な富の格差
資本収益率の格差/世界金持ちランキングの推移/億万長者ランキングから「世界資産報告」へ/資産ランキングに見る相続人たちと起業家たち/富の道徳的階層/大学基金の純粋な収益/インフレが資本収益の格差にもたらす影響とは/ソヴリン・ウェルス・ファンドの収益――資本と政治/ソヴリン・ウェルス・ファンドは世界を所有するか/中国は世界を所有するのか/国際的格差拡大、オリガルヒ的格差拡大/富裕国は本当は貧しいのか

第IV部 21世紀の資本規制
■第13章 21世紀の社会国家
2008年金融危機と国家の復活/20世紀における社会国家の成長/社会国家の形/現代の所得再分配――権利の論理/社会国家を解体するよりは現代化する/教育制度は社会的モビリティを促進するだろうか?/引退の将来――ペイゴーと低成長/貧困国と新興国における社会国家

■第14章 累進所得税再考
累進課税の問題/累進課税――限定的だが本質的な役割/20世紀における累進税制――とらえどころのない混沌の産物/フランス第三共和国における累進課税/過剰な所得に対する収奪的な課税――米国の発明/重役給与の爆発――課税の役割/最高限界税率の問題再考

■第15章 世界的な資本税
世界的な資本税――便利な空想/民主的、金融的な透明性/簡単な解決策――銀行情報の自動送信/資本税の狙いとは?/貢献の論理、インセンティブの論理/ヨーロッパ富裕税の設計図/歴史的に見た資本課税/別の形態の規制――保護主義と資本統制/中国での資本規制の謎/石油レントの再分配/移民による再分配

■第16章 公的債務の問題
公的債務削減――資本課税、インフレ、緊縮財政/インフレは富を再分配するか?/中央銀行は何をするのか?/お金の創造と国民資本/キプロス危機――資本税と銀行規制が力をあわせるとき/ユーロ――21世紀の国家なき通貨?/欧州統合の問題/21世紀における政府と資本蓄積/法律と政治/気候変動と公的資本/経済的透明性と資本の民主的なコントロール

■おわりに
資本主義の中心的な矛盾――r>g/政治歴史経済学に向けて/最も恵まれない人々の利益

索引、原注、図表一覧
21世紀の資本(amazonリンク)


posted by alice-room at 22:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスB】 | 更新情報をチェックする
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