2015年11月15日

「社内失業 企業に捨てられた正社員」増田 不三雄 双葉社

最初は仕事が出来なくて昔でいうところの「窓際族」とか、「シュガー社員」でしたっけ?
やる気もないし、仕事も大して出来ない人達をイメージして本書を読み始めたのですが・・・。

全然違うんですね。

仕事をしない中高年というよりも、日本の会社を取り巻く効率性・生産性至上主義の歪んだ社内環境の中で、結果として戦力にならない、会社にとっても当事者本人にとっても不幸な事態が生じていることを指していることが分かりました。

確かに今時ならありがちな話ですし、実際、自分の身の回りでも実例を見ていますが、どうしょうもないんだろうなあ~というのも率直な感想でした。

日本の企業は今、人を育てることができない環境にあるような気がします。
本書でも書かれていますが、新卒に即戦力を求めますもんね、確かに。

中途で入社しようものなら、何から何まで一人で情報集め、手探りでも進めていかないと!
勿論、誰の助けも無しに本当に一人で出来てしまう人もいたりするのですが、それは多数から見ればむしろイレギュラーの範疇のはずです。その特異例を新卒に求めれば、即、死ぬかと(会社辞めちゃうってことです)。

中途もねぇ~。
当然、能力があっても社内事情や個々の特有の業務内容を熟知しているわけではないのですから、どんなに一生懸命やってもOUTPUTとして出てくる成果物は穴だらけで不備・不具合満載だったりします。
職場環境に慣れる前に、短納期で成果求められますもん。当然でしょう。

それを事前に察知してフォローする人もいなければ、事後にフォローする人もいません。
しようと思っても仕事出来る人ほど、目先の仕事を山積みされているわけでそんな余裕なんて時間的にも精神的にも持てるはずがありません。

かくして、仕事の成果も職場環境も劣化していくのでしょう。
日々、それを目の当たりにしているようで辛いですねぇ~。

心ある、能力のある人はオーバーワークの過労で疲弊し、体壊して職場去っていくし、運が良ければ、転職で結果としては人が去っていくばかり・・・。

同じ仕事するのでも最低限クリアレベルで表面的に仕事をこなしていくだけでも大変ですが、更にそれ以上に丁寧にやろうとすると仕事遅いだのマイナス評価。しかし80%の仕事では、より高みには向かえないでしょう。

与えられたマニュアル以上のことを一切しない業務委託等を推し進めていった結果の行きつく先は、平均水準のひたすら切り下げのみ。コストは下がるが質も下がり、下がった質を上げるには当初の数倍のコストが発生する。

適当に仕事を流していけさえすれば、イイと考える人の方が強く職場に生き残るんでしょうか。
個々の人がみんな、適当な訳でもなく、個々人レベルでは一生懸命やろうとしても、全然、実態と噛み合ってないように感じられてしまう。

まあ、苦労して教えても人がドンドン辞めていくしね。
数ヶ月でいなくなるのに、自分の貴重な時間を割いて教える気もなくなるでしょう。
教える労力に見合わないし、かえって効率が落ちるだけなら、そのまま放置という気持ちも分からないでもないです。

私自身も自分の余裕がなくなるにつれて、周囲へのフォローを減らす一方です。
上司もそういうのを評価しないところか、マイナス評価されてまで会社に貢献してもしかたないでしょう。
社員は会社に求められることをするのが正しい訳ですし、それは上司から評価される仕事をする、ということですからね。

上がそれなら、下は上に習います。
かくして、劣化を是とする環境が出来上がり、誰もが自分の仕事を黙々とやる、という実にありがちな職場環境が完成します。

勿論、劣化する事実は数字なりなんなりで後々しっかり出てくるわけで、それに対して慌てて対処をするものの、実効性なんか上がるわけないってのもしばしば見られる現象だったりするわけです。

そして、人は去っていく・・・と。

もっともそれで会社の利益があがっている間は、経営者が優秀ってことでいいんでしょう。
長期的に持続するかは不明ですが、経営陣も生成流転しましね(苦笑)。
上から下まで、数年後は知らないよ~という感じになりつつあるのが悲しい限り。

私自身もいささか染まってきて腐りかかっている気がしてなりません。最近。
待ってても何もありませんし、自ら行動するしかないんでしょうね。

そういう意味でも本書は、自分の状況を改めて考えなおすいい機会になりました。
誰もがひとごとではない!という感じに襲われる本かと。

もっとも本書の内容を肯定はしません。
甘っちょろいことは事実ですし、はっきり言って『ゆとり』じゃね~の?という感じもありますもん。
ただ、本書のいうようなことも事実だと思います。
あとは受け取る人、それぞれの受け止め方の話ですね。
【目次】
はじめに 社内失業とは
第1章 追い詰められる社内失業者
第2章 社内失業のイメージと実態
第3章 社内教育ができなくなった企業
第4章 社内失業を生む職場
第5章 社内失業の解決方法
社内失業 企業に捨てられた正社員 (双葉新書)(amazonリンク)
posted by alice-room at 20:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスB】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック