2016年01月17日

「本を愛しすぎた男: 本泥棒と古書店探偵と愛書狂」アリソン・フーヴァー・バートレット 原書房

読み始めはビブリオマニア高じて、本泥棒ってのはよくある話でその中でも一癖も二癖もある悪い奴だけで何故か興味をそそられる・・・そういうのを期待していたのですが・・・。

読み始めて4分の1も過ぎないうちに、あれれ?これって単なるカード詐欺の話ではないかと思ってしまいます。カード詐欺の対象が稀覯本(といっても値段が高いだけで価値があるのか無いのか分からないような初版本とかも多数、装飾写本とかもあるにはあるけれど・・・)ってだけで、古書店組合の対応も当たり前過ぎて、古書を関連を期待して読むと失望します。

ずいぶんともったいぶったタイトルに副題ですが、本を盗む動機からして本を読むからでもないし、まあ、眺めるだけってのもいいんですが、本を持つことでステータス的に自分が上流階級の一員になったかのような感じが得られるという俗っぽい&安っぽい理由で興ざめも甚だしい限り。

過去に読んだことのある、この手のようなビブリオマニアのような狂おしいまでの所有欲とかこの本と狙いを決めたものに対するあくなく、ある種清々しいまでの純粋な執着心とかそういった類のものではなく、ベスト100に入った本を集めるとか、他力本願的な適当な収集態度が苛立たしいというか腹立たしい。

また、本泥棒に取材している著者も食い詰めたフリーのライラーみたいなノリで、本にも対して興味がないののに、一般受けするかな?程度の立場で取材して、本書が書かれているのが分かり易いくらい丸分かりで読者ンもテンション下がりまくり。こりゃ、駄目でしょ。

盗まれる対象の本も、HGウェルズの「透明人間」とかジョージ・オーウェルの「1984年」の初版とか、正直どーでも良かったりする。

著者はまずは「フィロビブロン」とか読んだ方が良いのでは?と思うぐらい、不案内感が甚だしく、泥棒さんに何度もインタビューして聞き出した内容が、社会への不満を自らの不正行為の正当化にすり替える程度の主著とは・・・・ね。

盗人猛々しいとは、まさにこの言かと。
それを適当に言い訳しながら、そのまま書いてる著者に対する不満の方が読んでいて爆発しそうになりますね。かなり不愉快でした。

一応、読了はしましたが、本書は全くお薦めしません。
モーガン・ライブラリーやアイン・ランドの「水源」も名前だけでスルーしてるし、なんだかねぇ~。

何でも集めたがるのは単なる俗物のミーハーでしかなく、この泥棒のどこが本を愛しているのか小一時間問い詰めたくなりますが、時間の無駄でしょうね、きっと。

ビブリオマニアに関する本や、本泥棒の話なら、もっと面白くて興味深い本がたくさんありますので本書以外の本を読みましょう♪
【目次】
序章 『薬草図鑑』
第1章 大古本市
第2章 本泥棒ジョン・ギルキー
第3章 仮釈放
第4章 金鉱
第5章 古書店主ケン・サンダース
第6章 透明人間
第7章 この男は嘘をついている
第8章 宝島
第9章 ブリック・ロウ・ブックショップ
第10章 狂人たち
第11章 怒り
第12章 快適な暮らし
第13章 自慢の息子
第14章 悪魔の散歩

本を愛しすぎた男: 本泥棒と古書店探偵と愛書狂(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「書物への愛」リチャード・ド・ベリー 北洋社
「愛書狂」鹿島茂 角川春樹事務所
「ある愛書狂の告白」ジョン・バクスター 晶文社
「世界古本探しの旅」朝日新聞社
「書物の狩人」ジョン・ヒル バートン 図書出版社
「書物の敵」ウィリアム ブレイズ 八坂書房
posted by alice-room at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 本】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック