2016年01月24日

「フランスの聖者たち」渡邊 昌美 八坂書房

franceseijya.jpg著者も語られているが本書はフランス版古寺巡礼記とでもいうべきものであって、フランスの有名な巡礼地にある古い教会とそこに祀られる聖者(聖人)と由来などをエッセイ風に書かれている。

寝る前に少し読んで、2か月ぐらいかかっただろうか?
読了する前にほとんど最初に読んだ内容を忘れてしまっていたりするのだけれど、本書の内容自体も別に目新しいものではない。

著者の本書以外の作品を読んでいれば、どこかで読んだ内容だし、私の場合、他の本からの知識と相まって、本書を読んで取り立てて新たに興味を覚えた部分は少なかった。だが、読んでいてどこかしら既知でありながらも心地よく、寝物語として読むには私個人限定かもしれないが、なかなか良い本でした。

適度に眠くなるし、読物のようにストーリーに執着して読了せずにはいられなくなるのも困るしね。
全くつまらなければ、そもそも読むのを止めてしまうし・・・ね。

内容は巡礼寺の説明で縁起や聖人伝などが語られています。
その辺はまあ、普通な感じ。

本書を読んでいて、私が一番、関心を持った事。
それはシトー教会の厳しさ。

クリュニー修道院の繁栄と豪奢な生活、過剰なまでの美や装飾を良しとする価値観と対比されるシトー会は一切の装飾を拒否した建築や質素な生活で有名ですが・・・まさか、それほどまでとは・・・・。

「過酷な生活と烈しい労働のために、初期シトー会士には28歳を超えて生き続ける者は稀であったという。」こんなふうに本文で書かれているが、思わず映画「バラの名前」を思い浮かべてしまいますね。

行き過ぎた『清貧』の過酷さは半端ないです。
しかし、それ故にそれが建築として表現された洗練された美というものは、また、比類ないものなのだろうと思わずにはいられません。

ヨーロッパの難民問題やIS関連の治安懸念で今年は微妙ですが、落ち着いたら、改めてロマネスク建築ともどもル・トロネとか見に行きたいなあ~。イスタンブールのアヤ・ソフォアさえ行けないのは悲しい限り・・・。
【目次】
第1章 聖堂の四季―サン・ドゥニ(1)
第2章 歴史の工房―サン・ドゥニ(2)
第3章 ピレネーの桃源郷―サン・ベルトラン・ド・コマンジュ
第4章 たまごの聖母さま―ノートルダム・ドラフレード
第5章 大天使の要塞―モン・サン・ミシェル
第6章 金色の乙女―サント・フォア・ド・コンク
第7章 泉の僧院―フォントネイ
第8章 海から来た聖者―サン・ジルダ・ド・リュイス
第9章 遙かなる旅路―巡礼と同胞団
第10章 幻の聖なる道―サンチャゴ巡礼(対談 小川国夫×渡邊昌美)

フランスの聖者たち―古寺巡礼の手帖(amazonリンク)
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サン・ドニ大聖堂1~フランス(20100625)
posted by alice-room at 19:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 歴史B】 | 更新情報をチェックする
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