
言葉は悪いですが、場末の玉暖簾や赤提灯の居酒屋を巡ったどこにでもある(あった)情景を描き出したメモみたいな感じの本です。今の流行ではないのでしょうが、こういった雰囲気も嫌いではない、つ~か結構好きなんで私は大変楽しく読ませて頂きました。
見た目は、年季が入っていてこの店大丈夫かな?と心配になるようだけど、たま~に本当に美味しい肴を出して、信じられないほど安いお店ってあるけど、そんな店も紹介してます。
もっとも、それはごく一部だと思うんだけどね。私の個人的経験からだと飛び込みで探した赤提灯だとほとんど90%以上の場合、外れで汚くて料理もイマイチで値段がそれなりに高い店ってのが多かったからなあ~。
昔は新しい店をよく探して挑戦してたけど、最近は面倒で新規開発はとんどご無沙汰。ほどほどのところで定番の店を作って、妥協して飲んでるなあ~。
本書では、酒好きの著者が自分の足で体験したお店のうち、いろんな意味で印象に残ったお店を紹介しています。新鮮なホルモン(特に、レアな部位)を生で食べれるところとか、煮込んでもつ煮にしたものとか、読んでいてお酒が無性に飲みたくてしかたなくなります(笑)。
料理もさることながら、いかにも大衆酒場的な居酒屋の雰囲気が満ち溢れ、どことなく郷愁を誘うような文章が、なんとなくイイ。実際、この手の居酒屋は当たり外れがあり、常連さんが多過ぎても居心地が悪いし、なかなか難しいものがあるが、この本を読むとたまにはまた一人でお店に行ってみるのも悪くないかなあ~と思う。
昼間からデンキブランやホッピーを飲んでて、ちんぴらヤクザと知り合いになったり、寄席の芸人の方と知り合いになったりするのもまた悪くないだろう。そういうのは楽しいものだ。本書には、特に何も意味はないが、読んでいてなんかイイ感じだから、酒を飲む前に読むことをお薦めする。あるいは、ちびちび飲みながら読むのも悪くないだろう。
私は本書を読んだ晩、かしらの焼き鳥(にんにく味噌)と野菜スティック(肉味噌つける)、かつおの刺身、カレーの残り、ズキの炒め物、ナスの油炒め、チキンナゲットを肴に黒ホッピーと焼酎で飲んでいた。うん、やっぱりお酒は美味しいです(満面の笑み)。
【追記】
そうそう、最後にちょっとだけいちゃもんをつけると、デンキブランを飲みながら、ビールを飲む姿をカッコいいとか書かれていましたが、それって普通だと思うんですが・・・。私はいつもデンキブランとお水、そしてビールを同時並行で飲んでますけどね。
あと、お酒をグラスに注ぐときに受け皿にこぼすのは当たり前じゃん。受け皿から溢れそうになるまでなみなみと入れてもらうでしょう、普通。著者は下の受け皿から飲むと言ってますが、コレ疑問?
先にグラスを少し飲まないと表面張力で保っているのがこぼれてしまうから、ほんの少しだけそちらを飲んでから、グラスを左手で上げて、受け皿の酒を飲むのが常識だと思うのですが・・・。昔、誰か酒飲みの人から教わったんだけどなあ~。
あっ、でも本書で書かれている「角打ち」って私経験なかったりする。酒屋さんの一角でお酒を買った人がそのまま持ち込めて、簡単な肴を出してそのまま飲めるところのこと。
実は、都内にもその手の美味しいお店があるらしく、知り合いから今度教えてもらう予定。早く行きたいなあ~。
【目次】下町酒場巡礼(amazonリンク)
第1章 煮込みには焼酎が似合う
第2章 泡盛が奏でる至福の時
第3章 店構えに吸い寄せられて
第4章 豊潤なるもつ焼きの世界
第5章 これが下町の酒場だ
第6章 都の北は宝の山
第7章 泪橋は今宵もふけて
第8章 門前、街道沿いに憩いの店
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