中でもそこまでやるか~って思ったのが、ディズニーの人魚アリエルについての話。あれはさすがにダン・ブラウン氏の独創的こじつけだと思ったいたのに、それもこの本だったとは・・・。もっとも、素材はこの本や「レンヌ=ル=シャトーの謎」とかかも知れませんが、小説としてベストセラーにした力量は、まさに作家の面目躍如たる所。「天使と悪魔」も読ませて売れる小説でしたもん(尊敬!)。私が元ネタの本知ってても、これだけ売れる本書けなかったろうし。
でも、この本はもうありとあらゆるネタ(というか知識)が詰め込まれています。しかもそれが読み易いんだから、困ったもんだ。読んでるだけで理解してつもりになっちゃいます。後半では名画の数々(珍しくダ・ヴィンチは出てきません)が異端のシンボルを隠し持っていると、暴かれていきます。ボティッチェリ、フラ・アンジェリコ、ラ・トゥール、カルロ・クリヴェッリ等々。マグダラのマリアと共に、異端の印がチラホラってね。みんな、うちのブログでも出てきたような名前です(クスクス)。
あと一角獣とタペストリーという、定番のアレもやはり異端的なシンボルが隠されているそうです。なんせユニコーンは処女にしかなつかないというのもねぇ~。ここに出てくる乙女は、実は異端の女神である豊穣神なんだって、でこれが花嫁であり、そこにやってくるのは花婿たるイエスだそうです。連作になるタペストリーについて順を追って説明してくれるので、この部分も知っておくといいかも?
そもそも一角獣と乙女の主題は、中世を通じて定番中の定番でしたし、この本で扱っているのはNYのメトロポリタン美術館別館のクロイスターにあるタペストリーです。私も、911の数ヶ月後にNY行って見たので覚えていますが、そういう意味があるとは知りませんでした(金ピカの宝石で飾られた十字架ばっかり見てたので)。なんか、知らない作品でないので思い入れしそう。元々は、ロックフェラーが金にあかせてフランスの貴族の城館にあったものを購入したもので、その貴族がいたのはアルビジョア派の根拠地の近くだったというオマケ付き。さあ、著者がどう解釈するのか?楽しみでしょう。是非、読んでみて下さい(笑顔)。
マグダラのマリアを崇めようとする大きな力に対し、それをカトリック側が抑圧しようとする動きから、逆に聖母マリア崇拝が中世に力を持ってくるといった考察など、幾つかの本でも読みましたが、分かり易くかかれています。もっともその行き過ぎが、聖母マリア自体も罪のない女性から生まれたとして、聖母の母までも聖人として崇めるところまで行き着くのはなかなかコミカルにさえ思えますね。
そして、シャルトル大聖堂を初めとするゴシック建築や大聖堂、ギルドやフリーメイソンにも話題は広がる&広がる。いやはや参りましたね。それらが有機的に結びつく重層的な関係を説明してくれるので読者はなかなか目が話せません。あのソロモンとシバの女王が描かれているのも確かシャルトル大聖堂でしょ。なんか、seedsbookさんにもご紹介頂いていてパリに行った時にますます行きたくなってます。この本を読んだせいだ(困った)。
そうそう、あとね。聖杯についてケルト神話に出てくる「ブランの大釜」との類似性みたいなのも指摘されてました。この魔法の大釜で煮ると、死んだ人が生き返るんだそうです。聖杯伝説で聖杯の光を浴びて負傷者が回復するのと一緒ですね。先日、ちょうどこの「ブランの大釜」について書かれてた本を読んだばかりなので、妙に納得しちゃいました。みんな、深層の部分で結びついているんですね。なんかとっても面白い。そういった感じのものがいっぱい&いっぱい出てきます。
関連書籍や出典も豊富に出てますから、これを読んで興味があれば、さらにディープにはまれること間違い無し!それが幸せか否かは保証の限りではありませんが・・・(フェードアウト)。お好きな方は、是非御一読を!
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関連ブログ
「マグダラのマリアと聖杯」マーガレット・スターバード 感想1
「レンヌ=ル=シャトーの謎」 柏書房 感想1
「ケルト神話と中世騎士物語」田中 仁彦 中央公論社
「黒い聖母崇拝の博物誌」イアン ベッグ 三交社社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
今、アマゾンで捜したのですが、ドイツ語版まだ見つかりません。
高くても日本に注文してしまおうかなあ。なんて思ってしまいましたが、来春日本に行く時まで、Alice-roomさんのお勧めをメモしておいて、担いで帰ってくるのが理性的かもしれませんね。
やっぱりシャルトル行って来て下さい。いろいろ確認してきて欲しいです。
シャルトル、かなり行く気になってます。もっとも直前でルーブルから抜けられない恐れもまだありますが・・・。まさにgod knowsって奴で。
実は、以前に、「マグダラのマリアと聖杯」の最後の方にも出ている、「聖杯と剣」(リーアン・アイスラー、法政大学出版会)を読みました。
こちらは、さらに、その背後にある古代からの女神の宗教から説明してあり、それがイエスの時代や、その後の歴史に与えた影響などが展開され、ものすごく面白い本でした。
今も手に入る本ですので、もしもっと深く知りたい方にはお勧めかもしれません。
もちろんaliceさんも読んでらっしゃるだろうな、と思ってましたが、やはり^^
aliceさんの感想を拝読して、益々内容が楽しみになってきました。読み終わって良かったら買おうかな。
この本どこにしまったか、忘れてしまいました(苦笑)。