2016年12月06日

「新平等社会」山田 昌弘 文藝春秋

雇用とか社会問題を取り扱う本が新書形式の薄っぺら且つ中身のないものばかりしか読んだこと無かったのですが、本書は久ぶりに読む価値のある社会問題を取り扱った本です。

いたずらにマスゴミ受けや大衆受けするような迎合主義とは一線を画し、率直に分析した資料やデータを元に耳障りの良くないことを含めて事実と思われることを軸に、そこから見えてくるものを正面から捉えようとしています。

本当に昨今見た中では唯一まともな社会問題の本かと。
逆に言えば、本書以外があまりに著者の独善的かつ主観的な思い込みによる適当な妄想の垂れ流しレベルの本で酷かったということでもあるのですが、本当に久しぶりにまともって感じがしました。

ニューエコノミーにおける必然的な仕事の二極分化も、そこに至る過程の説明がロジカル且つ丁寧になされ、首肯できるものとなっています。

結婚の話も事実ベースに忌憚なく分析結果を語っており、興味深いです。
結婚に当たって、女性は経済的責任を男性に求める。しかし、女性を満足させる経済力をもつ未婚男性の数は1975年以降徐々に減っていく。一方、期待する生活水準は上昇する。その結果、男性に高い経済力を期待する女性、及び経済力が低い男性に未婚者が増えていく。
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既婚男性と未婚男性の間には平均して各年代で100万円から200万円の年収格差があり、恋人がいる男性といない男性間でも100万円程度の年収格差があるという調査結果だった。
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データをあげながら「低収入の男性が結婚できず、それが少子化につながっている」というロジックを説明した。」

今、日本の社会が置かれている状況について、正確に理解するのに適した本だと思いました。

勿論、本書での説明がすべて正しいかはわかりませんが、少なくとも一定程度の客観性のある説明だと思います。また現状分析を踏まえた提言についても個人的には納得いかないものも多いのですが、それであっても本書は読むだけの価値があるかと思います。

類書が酷過ぎるってのもあるんですけれどね・・・。
実際、大変勉強になりました。
【目次】
はじめに 格差に関する議論が盛んなのはなぜか?

第1部 格差社会を超えて
格差問題を考えるための三つの問い
格差に関わる社会問題を考える際の五つの領域
格差の現代的特徴と平等社会のイメージ
新たなタイプの格差の出現とその理由
新たな平等社会を目指して

第2部 格差社会の断面
仕事格差―フリーター社会のゆくえ
結婚格差―結婚難に至る男の事情、女の本音
家族格差―家族の形が変わり、新しい格差を生む
教育格差―希望格差社会とやる気の喪失
「家族主義の失敗」とリスク構造の転換
おわりに 生活の構造改革を目指して―格差が問題化しない社会を

新平等社会―「希望格差」を超えて (文春文庫)(amazonリンク)
ラベル:書評 社会
posted by alice-room at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 未分類B】 | 更新情報をチェックする
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