美術史がご専門の方らしいですが、だったら・・・エミール・マールやパノフスキー、フォションがどうとか中途半端な記述をせず、その辺の流れをもう少し丁寧にして、具体的に解説される図像の説明に際して、どこまでが従来のものでどこからが著者の言われるアプローチの成果なのか、明示して頂きたかった。
ところどころに不要な著者のエッセイ的な自己語りが入るくせに、肝心な図像の説明が何の背景的、歴史的な説明もなく、○○を表していると断定されてもあっけに取られます。
あくまでもエッセイなのか、図像の説明をしたいのか、目的を明らかにしてから文章を書くという基本が抜け落ちています。
著名な中世美術史の碩学の名前がたびたび上がるのですが、文脈上必要でしょうか?
肝心な図像の説明はガイドブック並みの表面的な説明で呆れました。
フランスではなく、イタリアだし・・・。まあ、それはおいといて・・・ですが・・・。
数10頁読んで、もう耐えられなくなり、残りは飛ばし読みして内容をざっと見てみてもあえて読むに値しない本でした。講談社選書メチエには、もう少し内容のある本が多かったような気がしますが大変残念な本でした。
【目次】教会の怪物たち ロマネスクの図像学 (講談社選書メチエ) (amazonリンク)
第一章 怪物的図像とイコノロジー的アプローチ
・従来のイコノロジー研究の限界
・ロマネスク美術の三つの境界侵犯
・新しいアプローチの可能性
第二章 神の創造の多様性としての怪物・聖なる怪物
・セビーリャのイシドールスによる「驚異的なもの」
・神の被造物
・「聖性の顕現」
・反人間形体主義
第三章 怪物的民族と地図
・中世の写本における怪物的民族の図像
・スーヴィニーの八角柱
・床モザイク上の怪物的民族
・ケンタウロス、ミノタウロス、サテュロス
・モデナ大聖堂の怪物的民族
・言語上の誤解が生んだ怪物
・物と動物の境界を越える怪物
・「他者」の表象としての怪物
第四章 「自然の力」の具現化としての怪物
・セイレーンとワイルドマン
・グリーンマン
・「四大」と怪物
・「風」の怪物
第五章 世俗世界を表す蔓草
・モデナ大聖堂のピープルド・スクロール
・キールティムカとグリーンマン=オケアノス
・怪物的形体の装飾的生成
・ロマネスクの美意識と蔓草
第六章 悪徳の寓意としての怪物から辟邪としての怪物へ
・悪魔としてのハイブリッドの怪物
・異教徒や悪徳のアレゴリーとしてのハイブリッド
・悪徳に満ちた世俗の海
・変身について
・悪魔払いされる怪物
・不安の克服の手段
・グロテスクと笑い
・笑いと辟邪
第七章 古代のモティーフの継承と変容、諸教混淆
・セイレーン=人魚と古代美術
・イタリアの紋章と人魚
・ロマネスクの人魚と諸教混淆
・新世界の諸教混淆
・セイレーンと音楽
結び 怪物的中世
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「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「中世の美術」黒江 光彦 保育社
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスク彫刻の形態学」柳宗玄 八坂書房
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅」中村好文、木俣元一 新潮社
「カラー版 イタリア・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新社
「世界の文化史蹟 第12巻 ロマネスク・ゴシックの聖堂」柳宗玄 講談社