
著者の描く漫画には、共通のファクターを持つ女性主人公がしばしば登場する。普段はだらけている怠け者みたいだが、ここぞという時にはバリバリ活躍するヒーローで、周りの誰からも愛される性格。昔話なら、三年寝太郎みたいなもんか? 本書のおせんさんもしかり、きりきり亭のぶらうんしかり。
しかも、この女性が滅法いい女で上っ面な建前や世間体には左右されず、自分が持つ固有の価値観に基づいて義理・人情を通しつつも嫌味にならず、何か問題が起こっても、周りの者をも気にかけながら、何故か円満解決してしまう。
日本人の心情として、一番ぐっとくるとタイプのストーリーだと思います。これぞ大和魂というか、やまとなでしこ(ずいぶん意味が違うが・・・)というか、古き良き日本人の姿なんだと思う。
ちょっとしたエロさもあるが、どちらかというと生き生きとした性の猥雑さ程度で、決して嫌な感じはしないと思う。自分らしくあるがままに生きるとは、こういうことかもしれない・・・と思わせてくれる稀有な漫画です。私は大好きなタイプのお話です。
基本設定としては、老舗の料亭の若き女あるじが主人公で、料理を通じて人情の機微や人間関係を自然といい方向に持っていくお話です。いやらしくなるほど薀蓄が多く、エセグルメを作り出した「おいしんぼ」とは違って、あくまでも嫌味がなく、自然体の粋なノリが本書の身上。これお薦めです。
おせん(1)(amazonリンク)
関連ブログ
「きりきり亭のぶら雲先生」1、3巻 きくち正太 幻冬舎