
「復刊ドットコム」とは、絶版や品切れなどで現在では入手できない本の希望者をネット上で募り、一定数を超えた時点で復刊交渉を行って可能な限り、復刊を実現させていくサイトです(当然、利益は復刊書籍の販売により獲得される)。
まさにネットが実現を可能にしたビジネスモデルであり、本好きの人なら、実際に活用するしないにかかわらず、おそらく一度以上は訪れたことのあるサイトであり、非常に期待を持って見守っているサイトではないかと思う。
本書は、その復刊ドットコムを立ち上げた創業者が、全く新しい事業を暗中模索の中で試行錯誤し、黒字を維持しつつ、現在まで継続し続けてきている軌跡を描いた本です。
実際に復刊が可能になるまでの交渉の大変さと共に、交渉した結果として復刊が実現しない困難な理由を具体的に挙げているのがとても興味深い。
往時の本で現代では差別用語にあたってしまい、そのまま出版できないが修正することもできないので復刊できない場合や、著作権が複雑な所有になっていて該当者全員による許可が獲得できない場合。復刊自体は可能であっても、安価な漫画本などで少数限定出版では単価が高くなってしまい、実際の購入が期待できずに断念する場合など、ビジネスである以上、利益を確保することがいかに難しいのかが如実に伺われる。
同時に本書を読むまで、正直このサイトが他社の復刊計画の参考とされるほど業界での評価が高いとは知りませんでした。あくまでもニッチであり、他の出版者は冷ややかな視線なのではと勝手に誤解していました。
また、熱烈な復刊希望者の存在故に実際に復刊した本の売上でも、他社を圧倒するだけの売上がそのサイト上で達成されているのも凄いなあ~と思いました。いわゆるロイヤリティーの高い顧客・顧客予備軍を抱えていることが強みなのがよく分かります。
その辺はなかなか読み応えがあるし、本の流通・出版業界、あるいはネットビジネスとしても勉強になります。
その一方で2章以降かな。私的にはほとんど面白くないし、読むだけの価値を覚えなかった。実際に復刊された本などに関する話などに内容が移っていくのだけれど、私が復刊して欲しい本とは内容・ジャンルが甚だしくかけ離れているので、どうしても興味を持てなかった。
そういえば、復刊ドットコムを何度か見たことがあるのだが、たいていの場合は私の欲しい本で絶版のものが対象になっていたことがなかった。漫画や写真集、特殊なマニア向けのものが多かったので自分には利用価値が見出せず、私には関係のないサイトとしていつも認識していたことを思い出した。実際に、本書を読むことでその思いがしっかり裏付けられたのは、読んだ価値があったかもしれない。
ただ、小山田いくの作品とか、「少女アリス」とかはなるほどなあ~と思っていたが、99%は興味の対象外ですね。勿論、私の関心は別にして、非常に価値のある素晴らしいビジネスだと思います。今後も更に発展していって欲しいと思いますが、これは一般論で個人的にはイマイチです。
個人の尺度で言えば、安く欲しい本が入手できればOKなわけであり、オークションでも古書マーケットからでもたいていの場合は、入手できるような気がします。情熱とその対象たる本との『縁(えにし)』があれば、出会えるものでしょう。駄目なら、それは縁がないか努力が足りないかのいずれかでしょう♪
特に文字ベースの情報としての本であるならば、国会図書館で複写してもいいし、いざとなれば、手書きで全文写せばいいだけのことですし(極論ですけど)。まあ、中世の写本ではありませんが(苦笑)、今はすごくいい時代だと個人的には思います。そのうちgoogleの全文検索とか利用して対価を払えば、いくらでも入手できるかもしれませんね。個人的にはいろいろと期待してますが・・・。
話がとりとめのない方向へ向かっていて恐縮ですが、個人的にはもっと使える復刊ビジネスがあると嬉しいなあ~。別に復刊でなくても、とにかく必要な情報が本・雑誌・ネットの形態を問わず、入手できれば最高ですね!
amazonやgoogleにはそういう意味で期待していますが、まだまだ発展途上であることを強く感じます。それらの更に上をいく新しいサービスが生まれることを期待しちゃいますね。う~ん、待ちの姿勢だな、私も。自分で作り出すくらいだったら、頼もしいのだけれど・・・。
余談が過ぎましたね。総括。時間があれば、前半を斜め読みすると面白い程度。購入してまで読む必要は覚えません。私は本屋で全部読み終わってしまいました。面白かったら、資料用に買おうかと思いましたが、そのお金でネットワーク関係の別な本を買いました(笑)。
【目次】復刊ドットコム奮戦記-マニアの熱意がつくる新しいネットビジネス(amazonリンク)
欲しい本を手に入る10の方法
プロローグ「埋もれてしまった名作」から「懐かしの思い出の作品」まで
1章 復刊ドットコムストーリー
1手に入らない本が多すぎる
なぜ復刊ドットコムがはじまったのか?
2儲からない試行錯誤から読者が望む復刊へ
月商十六万からのスタート
読者投票がつくるサイトの誕生
コミケ、そのエキサイティングな広場
ダルタニャン物語と藤子不二雄Aランドという大きな壁
出版社が復刊できない本
新しいコミュニケーションの場
3ニッチなサイトが成功したわけ
双方向サイトが成功の秘訣
eコマース成功のコツ
2章 熱い復刊リクエストから見えてくる人気本の秘密
1人気の商品とは?
おもしろ投票ジャンル
2復刊ブックガイド
懐かしのコミックス・アニメ…子どもの頃に買えなかった本
ゲーム系…TRPGからマザーまで
音楽の本…エンタメの王道
児童書〜アニメ読み物 …トラウマ系絵本とは何か?
実用書や専門書…意外な人気で、色あせないネタ
ビジュアルな書籍…一夜にして500人が投票した本とは?
人気投票ランキング…復刊会員22万人が選んできた「これが、読みたい本だ!」
まだまだあるぞ!「単行本未収録作品」ランキング
3子ども時代の夢を果たす「復刻ブーム」
「掘り出し物・レア物コーナー」…高客単価と大人買い
3章 復刊にまつわるエピソード
1岡田あーみんはなぜ復刊できないのか?
絶版本が抱える紛争の数々
復刊を断念するケース……「残念」リスト一挙公開
2憧れの著者に会いに行く!
マンガ家たちの素顔
個性あふれる絵本作家たち
良書には推薦者が集う
3時代の波に揺られて復刊された本
4章 本好きのためのパラダイスとは?
1熱意がビジネスを超える
ファンだけが知っている情報…ファンサイトとの連携
「信頼」を基盤とするビジネスモデル
2新しいコミュニケーションを創造する
電子書籍→携帯電話へ
復刊の最前線からみた出版権と著作権
3一〇〇万人の自給自足の読者生活をめざして
読者による生活共同体へ