
フランスの中世都市トロワを舞台に、そこで生きた人々の生活を各種の資料を元にしてより生き生きと具体的且つ明瞭に紹介していく本です。
大変分かり易い表現と具体的な描写で、当時の生活習慣などが実によく理解できます。無味乾燥になりがちな歴史の本と異なり、面白いんですけど、おそらく資料からでは明確に分からない点についてはかなりの推測と想像を加えて書かれています。
著者は歴史家ではなく、作家だそうですから、うっかり本書の記述を鵜呑みにするのは早計ですが、まあ歴史家の書いた文章でも全てが正しい訳ではないので、その辺を読者側で十分に理解して、その分を割り引いて受け取る限りでは、面白いし、大変勉強になります(笑顔)。
都市生活の種々の一場面を切り取って、その場面毎に説明をしている感じでしょうか。水平的な(=同時代的な)視点での切り口で、垂直的な(=歴史的な)切り口による解説は、少ないように思いました。本書で関心を持ったら、他の具体的なテーマで書かれた本へ向かっていく為のきっかけになるかと思います。
逆に言うと、この手の本をあまり読んだことがない人でも抵抗感なく読めるかも。中世の生活を知るには、良い入門書かもしれません。
そうそう個人的に面白かったのは12章の写本の話。手書きで写して本を作成しなかればならない時代ですが、書き写しの途中で一文が抜けてしまった場合。欄外にその文を書き、綺麗な挿絵の人物がどこにその文が入るのかを示す、とかちょっと洒落た処理をするのは、初めて知りました。なかなか楽しいです。
他にも写本が非常に大変なので、最後の頁に以下のような言葉が書かれていたそうです。
「筆写した者が作業を続けられ、よいブドウ酒の飲めますように」
「これでおしまい。先生が太ったがちょうをくれますように」
「筆写した者にいい牛と馬が与えられますように」
「ここまでの苦労にこたえ、筆写した者に美しい女性が与えられますように」
「筆写した者に牛と美しい女性が与えられますように」
最後のは、どう考えても強欲過ぎる気がしますが・・・。いろんなものがもらえるんですね。羨ましいなあ~(笑顔)。
【目次】中世ヨーロッパの都市の生活(amazonリンク)
プロローグ
第一章 トロワ 一二五〇年
第二章 ある裕福な市民の家にて
第三章 主婦の生活
第四章 出産そして子供
第五章 結婚そして葬儀
第六章 職人たち
第七章 豪商たち
第八章 医師たち
第九章 教会
第十章 大聖堂
第十一章 学校そして生徒たち
第十二章 本そして作家たち
第十三章 中世演劇の誕生
第十四章 災厄
第十五章 市政
第十六章 シャンパーニュ大市
エピローグ 一二五〇年以降
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短期バイトも終わり、そのあと学生時代の友達が来て旅になだれこんでいました。
楽しかったけど、さすがにけっこうお疲れさんのOZです(笑)
この本面白そう~。
また欲しい本のリストが長くなってしまった。
でも、バイト代が思ったより多かったので余裕かましてます?!(笑)
実は何年か前に家族でナンシーに旅行したとき、このトロワにも行きました。
今でも中世風の素敵な町でしたよ!
細かい風景は忘れてしまいましたが、そのときの写真をみながら読むのも楽しいかも。
この本は、とっても読み易いし、普通の歴史の本では出てこない豆知識みたいな感じのお話なども多く、飽きないかと思います。まして、実際のトロワをご存知だったら、私が読んだよりも何十倍も実感があった面白そうですね。羨ましい!
何でもそうですが、自分が経験したことや知っていることに関してだと同じものを読んでも全然感じ方が違いますもんね。写真を見ながら読むなんて素敵ですね!