
本書を読むと、著者のロマネスク好きは分かるのですがいくら読んでもタイトルの「ロマネスク革命」の意味が分かりません。
明確な用語の定義付けがあるわけでもなく、まして従来のフォションやマールとの違いについての説明も独りよがりで根拠となる説明や例証も足りないし、実際、どの程度、学会で受け入られているのか本書では全く分かりません。
ゴシック偏重の傾向に対し、ロマネスク好きが一人で独自理論で専門書籍ではなく一般書籍で書きなぐっている、それ以上のものが読み取れませんでした。
また、単純に文章のロジックを追っていっても素直に首肯できるような明快且つシンプルで説得力ある内容とは言い難く、まずは文書そのものに違和感を覚えます。
エミール・マールのような流れるように、また、目から鱗が落ちて、さらに腑に落ちるような説得力ある文章でもありません。著者の自己満足以上のものとは思えませんでした。
大仰なタイトルなど使用せず、淡々とロマネスク美術の魅力を語られれば・・・と思いました。
正直、全体を通じてもロマネスクの魅力が伝わりません。企画倒れで残念な内容になってしまった本のように思われました。
【目次】
第1章 かわいい謎 異様な造形
第2章 ロマネスク再発見
第3章 語りだす柱頭
第4章 かたちの自由を求めて
第5章 海獣たちの変貌
第6章 聖堂をいかにデザインするか
第7章 ロマネスクの作り手たち
第8章 世俗化と大量生産の時代へ
終章 ロマネスクの美
ロマネスク美術革命 (新潮選書)(amazonリンク)
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「フランス・ロマネスク」饗庭 孝男 山川出版社
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「ロマネスク彫刻の形態学」柳宗玄 八坂書房
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会