
あの読書人の著者がまさか生前に蔵書を手放されるとは思いもよりませんでした。
ご自身が経験された蔵書維持、管理、引継ぎ、売却に至るまでの苦悩の経過を描かれています。
そして、その経験を踏まえて蔵書に関する様々な話を書かれています。
但し、個人が集めた蔵書であっても残す価値があるものは、文化として公的な支援を要する・・・というのはやはり申し訳ないが理想論に過ぎるかと。バブル時代の夢を引きずり過ぎでしょう。
ただでさえ、大学でも文科系の予算が切り詰められ、人員や経費が削減されているおりもおり、所詮は何もかも自己責任でやるしかないと思います。
実際、著者も最終的にはそうされているのに、他力本願的理想論(希望論)は、かなり違和感を覚えました。
いつの時代もどんな王侯貴族でさえも集めた財(貴重品、蔵書、資産等)は散逸するのが時の習いですから。
逆に、本が売れた幸せな時代を生きられて羨ましいなあ~と思いました。
好きな企画を立てて、それが通って、それでお金が稼げるなんて、幸せな時代ですよね。
まあ、人を羨んでも仕方ありませんが(苦笑)。
そういった思いは別として、蔵書を持つ人には他人事ではない、切実な悩みが本書を読むと共感します。
勿論、そんなに冊数の多い蔵書を持っているわけではありませんけどね。
今も本棚の文庫本の整理してるだけで腰痛くなってきたし、買うのはやっぱり控えねば。
自宅購入して引っ越してきた際にも本は厳選して不要な分は20~30箱以上、売り飛ばしてだいぶスリムになったのですが、また増殖してきた・・・・ふう~、困ったもんだ。
図書館を利用して極力抑えてもいい本だったら、結局買ってしまうからなあ~。
まあ、本書を他山の石として、本は自分で管理できる範囲にしようと強く思った次第です。
著者の意見に同意はしかねるものの、実に興味深い本でした。
蔵書家だったら、一読しておいてよいかもです。
【目次】蔵書一代―なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか(amazonリンク)
序章 “永訣の朝”
第1章 文化的変容と個人蔵書の受難
第2章 日本人の蔵書志向
第3章 蔵書を守った人々
第4章 蔵書維持の困難性