というのは、本書の魅力は内容にではなく、あくまでも装丁にあるからだと思います。小説としては、おそらく読むの時間の無駄かも・・・と思うぐらいですが、最近見た本の中では一番美しい装丁だと思いました。
私が購入したのは古書だったので、カバーは無かったのですが、表紙はアラビア文字が描かれており、地の部分はマーブル紙のようなデザインになっています。表紙の見返しには、草花のデザインがあしらわれていていかにもイスラム風。
各章の扉頁も凝っていて、アラビア文字と幾何学的デザインがうまく配されていて、こういうの大好き!! なんかコーランのような美しさです(勿論、本物のコーラン写本等の美しさにはかないませんが)。
本文でも、文章を囲むように上がアラビア文字、下が日本語で配されており、心憎いほどの粋な気遣いです。さりげないんだけど、こういった装丁は今では珍しいんじゃないでしょうか? 最近は、装丁に凝った本がいろいろあるのですが、どうしても私の目には奇をてらっただけで美しいと思えたり、センスの冴えを感じたりするほどのものがなかったので、本書は実に珍しいと思います。
装丁だけで本書は持っている価値があると思っています。
一応、内容について触れておくと。千夜一夜物語のような幻想的なアラブ譚を期待していると、痛い目にあいます。私のように。舞台はあくまでも現代で、個人的には全く面白いと思えないタイプ(=現実的なお話)の短編集になっています。
ただ、イスラム圏の文化に相当詳しい方が書かれているのだろうと思うですが、知識の生かし方が違うような気がしてなりません。こういったリアルさなら、ネット上で散乱しているアルカイダのリクルート動画とか、ラップでの広報動画の方が私にははるかに面白いです。(←すみません、かなり俗悪な関心があります)
とにかく本書については、内容は一切期待せず、トレヴィルの現物を見る機会があれば、是非装丁を見て欲しいなあ~。この装丁で何か他のものを作ってくれたら、私、迷わず買うのになあ~。
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