
コンパクトにまとめた感のある「人と思想」シリーズの一冊。
図書館でラス・カサス、トマス・アクィナスと同時に借りたのが本書。
本当は偽アレオパギテスとか探したんだけれど、それは無かったのでね。
さて、本書の玄奘ですが、最初にある具象と抽象という思惟の相違がもたらした仏教受容の形態という視点は、私、全然知らなかったのでそこでちょっと新鮮な驚きでした。まあ、言われてみれば、確かにプラグマティズムの中国とゼロという観点を生み出したインド。そりゃ、ごもっともだなあ~と納得しながら、読んだ次第です。
仏塔(ストゥーパ)の意味付けなんかも元々は寺の中心にあり、日本でも仏教寺院の様式として古いものほど、仏塔が中心にあったりしたのを中学だか高校だけで学んだのを思い出しました! まあ、それも中国から日本に伝来した順番でもあるんだけれどね。
で、その後はようやく具体的な玄奘の旅のお話となる。
しかしまあ、本当に命を懸けて仏教の経典を求め、教えを求めて旅していたことが分かります。
と同時に、どんだけ玄奘が優秀な人材であったかも分かります。
時にはその才故に、引き留められて旅自体が困難になる危険さえあったりするのですが、結局、どこに行ってもその仏教の学識故に尊ばれ、たくさんの支援を受けつつ、旅の継続を可能にしたまた、その情熱とかも凄いの一言に尽きるでしょう!!
本書を読むと、やっぱり「大唐西域記」読まなきゃなあ~と痛切に感じてしまいます。
本当は先にそっちを読みたいと思ってはいるのですが、大部だけになかなか手が出ず後回しになってしまったりする・・・ありがちだけど。
あと思ったのですが、シッダールタが飢えた虎に身を捧げるとか他にも仏教的な犠牲的行為が仏教的考え方として出てくるのですが、キリスト教とかだったら、自分の身を差し出すとかいう発想はないんですよね。弾圧とかに対して命を懸けても屈せず、殉教とかはあっても命の捉え方一つを取ってみても全く視点が異なることを感じました。
それなりに面白かったかな?
でも、購入して手元には置いておくほどでもないかと。
先日、中公の「哲学の歴史3」(中世哲学)は、一度読んだ後でも手元に置いておきたくて、わざわざあの高いのを購入したけれど、本書はそういう本ではないです。
【目次】
1 玄奘の時代と仏教
具象と抽象(中国的な思惟とインド的な思惟)
仏像の出現―抽象から具象へ(1)
経本崇拝―抽象から具象へ(2)
「法舎利」―抽象から具象へ(3))
2 唐代にいたる仏教の受容と変遷
インドから中国へ―中国仏教の展開
唐代の西域情勢と異民族・異宗教
3 玄奘伝
おいたち
旅立ち
西域への旅
インド
釈尊の故郷
ナーランダー
東インドから南インドへの旅
帰路
帰朝
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