2007年07月03日

「賃金,価格,利潤」横山正彦 大月書店

50円の平台で見つけて一年ぐらい未読で積んでおいた本。ちょっと暇つぶしに読んでみた。う~ん、これも有名な本なんだと思うけど、近代経済学を曲がりなりにも学び、資本主義社会で生きてきたものの感覚から言うと、寝物語に聞こえる。

ある人が「マルクス経済学は『科学』ではなくて『哲学』だ」とか言ってたように思ったけど、およそ科学的という感じでは確かにない。

初めに直観と個人的価値観に基づく仮定があり、それにより現実をいかに説明できるかという内容であるかのように思った。勿論、大学でもマル経などやったことないので、完全な門外漢による感想なので説得力がなくて恐縮だが、いろいろと現代の経済では破綻している仮定(理論)が目につく。

目次を書いてみたが、10章の「利潤は商品をその価値どおりに売ることによって得られる」なんてのがまさに好例だろう。商品の価値があたかも絶対的にあるかのような考え方は、幻想以外の何物でもない。

例えば、一つの例を挙げよう。以前はやったダイエットリング。指につけているだけで痩せられると、一個一万円から8千円の定価だったが、ブーム中は飛ぶように売れた。半年後、ブームが終焉し、在庫を抱えた業者は一個一円でいかがですかと私のとこに売りに来たことがあった。最後はただでもと言われたくらいだ。この半年の間に、絶対的な商品の価値に変動があったとは思えない。そもそも現代において物の価格は、実質的な価値に依存しない。あくまでもそれを購入することで消費者が得られる効用(←広告に踊らされた幻想が大いに影響する)を背景にした需給で決まるに過ぎない。

ブランド物のバッグでもいい。全く同じ素材で全く同じ工場で作ったバッグが、ブランド物のバッグとしてマークが入り、無意味なギャランティカードがつくだけで3倍以上の価値がしている。

少なくとも本書では、それらについて一切の説明ができない。また、労働者の賃金は、特別な生産要素ではない。いくらでも買えるし、一人の人間としては限界があっても労働力としては制限がないはずだ。グローバルな枠組みで考えれば、実際、24時間稼動の工場なんていくらでもあるし、必ずしもそれが従業員への過重労働に繋がるわけではない。

本質的な意味で、勝手な仮定に基づくアドホックな理論としか思えない。歴史的な意義は、当然尊重されてしかるべきだろうが、学問ではないような気がしてならない。

どうせなら、経済学ではなくてむしろ社会政策としてならば、積極的な価値判断が含まれてもOKだし、政治学にでもすればよかったのに・・・などと思ってしまう。

今だから、こんなこと言えるんだろうなあ~。昔だったら、資本主義の犬、とか言われたりして・・・。それとも不勉強な人と思われるぐらいか? 

人の行動を欲望(美名でいうと、効用?)に基づく行動(=合理的経済人)と規定した近代経済学は正解ですね。まさに、人間の本質の一つがそれでしょう。もっとも効用は、屈折した表現をすることもあり、それだけではないから、難しいし、面白いのですけどね。
【目次】
1生産物と賃金
2生産物、賃金、利潤
3賃金と通貨
4需要と供給
5賃金と価格
6価値と労働
7労働力
8剰余価値の生産
9労働の価値
10利潤は商品をその価値どおりに売ることによって得られる
11剰余価値が分解する種々の部分
12利潤、賃金、価格の一般的関係
13賃上げの企て、または賃下げ反対の企ての主要なばあい
14資本と労働との闘争とその結果
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posted by alice-room at 22:21| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 未分類A】 | 更新情報をチェックする
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