
もうだいぶ前に、著者のあの有名な「ハーメルンの笛吹き男」を読んで大変感銘を受けたものですが、その著作に至るまでの著者の在り様、考え方、生き方、学問に対する姿勢等が本書からは伺え、本当に興味深い本でした。
あと・・・大塚久雄氏の名前が出てきたのには、そうなんだ!と別な意味で感慨深いものがありました。
他にも私でも存じ上げているような方の名前なども出てきて、そちらもいろいろと思うことがありました。
本書の中で改めてヨーロッパ中世の概念である“二つの宇宙”については、当然知ってはいましたが、私の理解は非常に浅かったんだなあ~と改めて感じさせられました。それに対する認識を本書を通じて再度認識し直しました。
個人的には大きな収穫ですね。
装飾写本の人体図と天球図が重なったような図案を頭に思い浮かべました。
また、中世の音楽についての見識も目を開かさせる気がしました。
実際、うちの外から聞こえてくるのは寺の鐘より、教会の鐘だったりする・・・。
しかも、カソリックのそれなりに知られた教会の鐘なのですが、本書の説明を読んで聞くとまた違った意味に感じられてきますね。
著者の作品を何冊か読んだ後で本書を読むと、更に他の著作の内容への理解が深まるように思います。
『中世』という世界を捉えるのに、本書の視点は大変有意義なものがあると思いました。
改めて阿部氏の著作読んでみたくなりました(笑顔)。
【目次】自分のなかに歴史をよむ (ちくま文庫)(amazonリンク)
第1章 私にとってのヨーロッパ
第2章 はじめてふれた西欧文化
第3章 未来への旅と過去への旅
第4章 うれしさと絶望感の中で
第5章 笛吹き男との出会い
第6章 二つの宇宙
第7章 ヨーロッパ社会の転換点
第8章 人はなぜ人を差別するのか
第9章 二つの昔話の世界
第10章 交響曲の源にある音の世界
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「刑吏の社会史」阿部 謹也 中央公論新社
ラベル:書評