2007年07月10日

「図説 キリスト教文化史1」ジェフリー バラクラフ 原書房

本書は章毎に異なる著者が書いた共著であるが、だてに上智大学中世思想研究所が監修してるわけではなく、実に客観的な歴史的事実に即したキリスト教の解説がされていると思います。

決して、熱に浮かされたようなほとばしる情熱は無いものの、適当な牽強付会による歴史解釈でも、宗教がかった偏見に満ちた歴史観でもなく、おそらく学問として妥当と思われる姿勢を貫いていると思います。

その一貫した姿勢の下で、キリスト教という宗教が歩んできた歴史や社会に及ぼしてきた影響を一歩、対象から離れたところから冷ややかに眺めている感じがします。

逆にそれ故に学ぶべき視点が多く、より整理した形でのキリスト教史を理解することができたと思います。宗教としてのキリスト教ではなく、社会に多大なる影響を与えた歴史的位置付けにおける一つの思想としてのキリスト教を知るには、結構良い本だと思います。

たっかいけどねぇ~。私は定価の約10分の1だから買ったけど、なかなか買えません。有益だけど、一度読めば十分かな。定価での購入は二の足踏むなあ~正直なところ。

ただ、図版もそこそこあるし、内容も実にしっかりした骨太の本です。でも、序章はいささか勢い過剰気味。序章はもっと淡々として簡潔であった方が良かった。
【目次】
序章 キリスト教世界とは何か
Ⅰ古代世界
 1章ローマ帝国におけるキリスト教
 2章キリスト教芸術の誕生
Ⅱ宣教の勝利
 3章蛮族の改宗
Ⅲ東方教会
 4章ギリシア教会と東ヨーロッパの諸民族
図説 キリスト教文化史〈1〉(amazonリンク)
posted by alice-room at 22:17| 埼玉 ☔| Comment(6) | TrackBack(0) | 【書評 宗教A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。おひさしぶりです。
ヒミツノートの羽村です。
(新しくブログを立ち上げ、ハンドルを変えました)
組織内部のドロドロを見た後には、こういった俯瞰的な本を
読むと整理されてよさそうですね。
3章の蛮族の改宗など、興味ありです!
レイラインと関係してくるのかしら~?なんて(笑)
Posted by 侑子 at 2007年07月11日 22:58
どうもお久しぶりです~。いささか堅い調子ながらも、基本をしっかりといった感じの本でした。おっしゃるとおり、知識の整理には結構役立ちそうです。
3章のところですが、もっと政治的な解釈が中心です。キリスト教会関係者・世俗の為政者、お互いに利する所があって急速に相互依存を深めていった・・・そんな感じの説明でした。残念ながら、レイラインでは出てきませんでした。

ブログ、後ほどお邪魔させて頂きますね。
Posted by alice-room at 2007年07月12日 23:29
こんばんは~。
2泊3日で小旅行してきました。
(日本帰国の前哨戦?!笑)
目的地でも教会はみてきましたが、経由地のシオン。
(ちなみに日本で有名なお城のあるのはシヨン)
ここの丘の上のお城にある聖堂にいったんですが、
これは素晴らしかったです。
解説ガイドつきで300円も素敵(笑)
建物自体は後期ロマネスクと初期ゴシックのミックス。
でも非常に珍しく興味深かったのは聖堂の真ん中の仕切り壁です
。宗教戦争前は民衆は神父さんのお説教を壁越しにしか聞けなかったし、観られなかったですね。
壁といっても中二階のようなもので上に上がれます。当時は神父はそこで貴族や他の聖職者などにむかって説教していたそうです。
世界で現存するのはシオンのほかにイタリア、トリノの近くの教会、それとドイツ、ニュールンベルグの近くの教会の三箇所だけだそうです。
それからそのお城に常駐していたのは僧侶ではなく、よくわかりませんが、教会堂議員とかいう人たちだそうです。
この職務、および真ん中の壁、alice-roomさんならご存知かもしれませんね。
あ、あとそこには世界で最古の使用可能のパイプオルガンがありました。
Posted by OZ at 2007年07月22日 05:38
OZさん、お帰りなさい。
>目的地でも教会はみてきましたが、経由地のシオン。

あの地理に疎いといいますか、偏ったことしか知らないので場所がピンとこないのですが、「シオン」ってどこの国の地名ですか? シオニズムのシオンしか知らないもので・・・(苦笑)。

>建物自体は後期ロマネスクと初期ゴシックのミックス。

そういうのは私、大好物です(笑顔)。うっ、うっ、建物と彫刻とか見てみたい~!
聖堂の仕切り壁ですか、全然知りませんでした。そういうものがあるんですね。ミサを行う内陣のその中にあるのでしょうか? 有名な教会堂とかだと巡礼者が多くて、ミサを行うのに不都合がある為、アプスを巡礼する民衆とミサを受ける人々を区切る為に、教会内に仕切り壁を作ったという話なら何かの文章で読んだことがあるのですが、それとはちょっと違うみたいですよね。

教会堂議員って、たぶん日本語でしばしば見る「聖堂参事会員」と訳されているものではないでしょうか? 教会の土地や建物自体を有しているのが、大都市の場合、この聖堂参事会員であって管理も行っていたりする場合もあるようです。地元の名士などがなっていて、あくまでも世俗にありながら、神への奉仕に勤しむ人々のようです。もっとも歴史的にその意味や役割はだいぶ変遷しているようで、時代によってずいぶん役割が違っていると本で読んだことがあります。

もっとも私のおぼろげな記憶なんで、信憑性は怪しいのですが・・・(苦笑)。

それはともかく、なんか面白そうでいいですねぇ~♪


Posted by alice-room at 2007年07月22日 10:28
聖堂参事議員、そうそうそれだと思います。
ありがとうございました。
さすが博識な管理人さま(笑)
昔クリスティの小説で名前は読んだ覚えはあったんですけど。

間仕切り壁はドイツ語ではレットナーというそうで、辞書にもしっかり載ってて驚きました。
そこのお城の聖堂は参事議員とそのおつきが住んでいたということで、ミサのときは主人と召使に分かれて参加していたとか。
ただかなり高い丘の上だし、飲み水すらなくて下の町から運ばなければいけない、という環境の悪さがたたったのか、常駐の参事議員の数は減り、当然おつきの人間の数もへって、これじゃ一緒にミサをしてもいいだろうという結論になったらしいです。
(召使側の要求に負けたって感じかな)
で、人数も少ないから全員内陣にはいれるし、壁を取り壊すのも一仕事、ということで残ったとか。
めんどくさいが幸いしました?!(笑)

15だか6世紀に作られた参事議員が座る、壁際の奥行きの浅い椅子(なんていうのでしょう)は木製で素晴らしいものでした。
alice-roomさんならきっと喜ばれることと思います!
もし、スイスに来る機会があれば是非どうぞ。
ちなみにシオンはローザンヌからジャズフェスティバルで有名なモントルーを越してしばらく行ったところにあるスイスの町です。
Posted by at 2007年07月23日 06:16
名称、当たっていたなら良かったです(たぶん、まぐれです・・・笑)。最近っていうか、昔から記憶力には自信がなくて。

そうそう、身分とかによって場所が仕切られているのっていろいろありますよね。日本でも格式のあるお寺で、周囲から見えないように壁で仕切られていて中二階から、仏像を参拝する仕掛けのあるところがありました。お殿様の一族がそこから仏事に参加するそうです。庶民と一緒の下の畳に並ぶわけにはいかなったんでしょうね。

でも、時代が変われば、そんなことを言ってられないのも一緒ですね。

>15だか6世紀に作られた参事議員が座る、壁際の奥行きの浅い椅子(なんていうのでしょう)は木製で素晴らしいものでした。

それって、個人用の指定席なのかな? きっと立派なんでしょうね、うっ見たいです!!
シオンってローザンヌとかあちらの方なんですね。いやあ~勉強になりました。スイスはまだ一度も行ったことがないけど、きっと行くつもりはあるので心に留めておきま~す。
Posted by alice-room at 2007年07月23日 21:29
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