正直、期待していたほどのものではなかった。定価で2万4千円。どうしても欲しけりゃ買うけどさ。それだけの価値があるのか、確かめてみたいという気持ちで時祷書拝みに行ってきたのです。
確かに並みでない大型本ですが、これだけの大きさと高価な装丁と高価な紙を使いながら、図版にどうしても納得がいかない。同じ頁を全体で写したり、トリミングして拡大したりと結局、同じ図版を3回も載せているのって無駄としか思えないんですが・・・。
これだけ大きな本です。写本の頁全体をそのまま1頁にしただけでは不十分でしょうか? 私のような浅学のものには、それだけで十分だし、細かいところが見たけりゃ、繊細なつぶれない印刷しておいてルーペでもなんでも使えばいいだけだと思うんですけどねぇ~。
私がこんなことを言うのには理由があります。だって、同じ頁(の部分)を3回も使っているところがある反面、1頁に3~4枚の図版が入っている頁があるんだ。小さくぎゅっと押し込まれた頁。
だったら、重複して載せてる頁を削って、押し込まれた図版を一枚づつ載せればいいのに・・・と思わないではいられません。私には、このレイアウトや編集意図が分かりません。
どんな人が本書を欲しがると思っているんでしょうか? マーケティングのターゲットが一部の特殊な学者だけ(or 図書館)なのでしょうか? 普通の人だったら、こんなレイアウト許さないと思うのですが・・・。もっとも、研究者だったら、こんな解説では意味ないだろうし・・・疑問?
実際、書かれている解説は、たいしたことありません。時間的な制約があり、解説はほとんど読まずに図版だけ見てましたが、少しだけ読んだところもやっぱりたいしたことありませんでした。
もう絶版みたいですし、誰も買わないでしょうが、絶対にお薦めしません。これを買うならば、本書の翻訳者が出している「美しき時祷書の世界」を買いましょう。絶版だけど、安く手に入るなら絶対にこちらが上です。コストパフォーマンスもいいし、十分に綺麗です。
余談ですが、「美しき時祷書の世界」はハードカバーですが、これとほぼ同じ内容で同じタイトルで、先行して特別号の雑誌形式で出ているものがあります。なんでそんなのがあるかというと、元々雑誌の特別号として出したのが大いに売れたので、それをハードカバーの本として出したというのが真相のようです。
ちなみに私がそのことを知ったのは、非常に安くこの本が手に入ったので喜んでいたら、手元に届いたらハードカバーでないのでビックリ!!
逆にハードカバーの方(近所の図書館にあり)を調べたら、増刊号のものに加筆修正して本にしましたと書いてありました(←読んだけど気付いてなかった私)。
まあ、中身は比較してもどこが変わったか分からないぐらいなのでOKです。紙質もさほど変わらず綺麗なのですが、ハードカバーでないので角とか折れたりしないかだけちょっと心配です。まあ、ホントに余談でした。
さらに余談ついでに。
国会図書館内には、スキャナーとかデジカメの持ち込みは禁止なので本書の写真も撮れませんでした。どんな具合に重複しているか、ブログにも載せたかったけどね。一度、見れば十分です。手元に置いていつも見たいと思うような本ではありませんでした。
そうそうくどいけど、更に余談。
ベリー公の時祷書で、現在入手可能で安くて綺麗な印刷なら、「Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry」をお薦めします。洋書だけど、新品が2千円以下で買えたよ~。最近、手元に時祷書や写本の本が溜まりつつあり、嬉しいけど、置き場所に困る日々。
本書と同時に眺めていた写本の書評はこちら。
「ベリー公のいとも美しき時祷書」フランソワ・ベスフルグ、エバーハルト・ケーニヒ 岩波書店
【目次】ベリー侯の豪華時祷書(amazonリンク)
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『ベリー侯の豪華時祷書』の魅力(ウンベルト・エコ)
関連ブログ
「ベリー公のいとも美しき時祷書」フランソワ・ベスフルグ、エバーハルト・ケーニヒ 岩波書店
「Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry」Jean Dufournet
「美しき時祷書の世界」木島 俊介 中央公論社
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
「ケルズの書」バーナード ミーハン 創元社