
タイトルだけ見ると、キャメロン監督により映画化で話題になった「キリストの墓、発見」ニュースの関連かと思ってしまいますが、こちらは完全なる独立した小説です。
著者は1980年代に亡くなっていますから、そういう意味ではずいぶんと先見の明があったんでしょうね。キリスト教をネタにした小説を他にも書いていて「謎の聖杯」ってのもあります(読了してから気付いたけど)。
粗筋は、エルサレムで地下室を作っている途中で古い遺跡が出てくる。当然発掘調査が始まるのですが、大きな石でふさがれた中から一人の人骨が出てくる。鉄の釘で打ち付けられた痕、槍で刺された傷、なによりも文字が書かれた粘土板が決め手となって「キリストの遺体」である可能性が浮かび上がり、即座にイスラエル政府からバチカンに極秘連絡がなされた。
バチカンからの使者として、あくまでも厳正なる事実を確認しようとする神父に、宗教家をすべからく毛嫌いするかのような第一発見の責任者たる女性考古学者。世界各国の思惑と政治や宗教感情が入り乱れる中、数々の科学的調査の下でその遺体が証明する事実が明らかになっていく。
キリスト教における根幹に関わる『イエスの復活』そのものを根底から揺るがす事件であるが、その調査過程で出てくるキリスト教関連の雑学的内容は、そこそこ楽しめます。イエスの復活自体を掘り下げたり、新しい解釈をしたりといった点はないので、あくまでも小説として読む分には悪くないかと思います。
ただ、女性考古学者の嫌味な性格には、辟易しますけどね。その後の神父との展開もありがちなワンパターン。ただ、ラストはアレレ?って感じですけどね。私の好きな終わり方ではなかったですが・・・。
ネタバレになってしまうので、これ以上書けませんが、肝心の『イエスの復活』そのものについては、薄っぺらな記述で深くはないのでそこは期待しないで小説として読みましょう。
読みやすいし、テンポも普通以上。さらっと読めます。
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「謎の聖杯」上下 リチャード・ベン サピア 徳間書店
本の方は読んでいませんが、粗筋を読ませていただいた限りでは、アントニオ・バンデラス主演の『抹殺者』にとても近いですね。もしや元本?
映画の方も、『抹殺者』というタイトルとストーリーは何の関係も無くて、ラストもしょぼかった気が・・・
粗筋もほとんど一緒みたいですし、Nikkiさんのおっしゃられる通り、まず原作に違いないようです。
でも、この原作で映画になることの方が驚きですねぇ~。売れる本には思えないんですけど・・・? 不思議なこともあるものです(笑顔)。