
「黒い聖母」の謎に迫る 東北芸工大でシンポジウム
【河北新報より、以下転載】
東北芸工大文化財保存修復研究センターは、約100年前にフランスの修道院から鶴岡カトリック教会(山形県鶴岡市)に寄贈された「黒い聖母像」の修復作業に取り組んでいる。その一環として14日、宗教、美術史、修復の専門家らが集まって同大でシンポジウムを開催。謎に満ちた聖母像の魅力を解き明かす。
黒い聖母像は19世紀末から20世紀初めにかけ、鶴岡カトリック教会建設に尽力したダリベル神父の故郷近くにあるフランス・ノルマンディー州のデリブランド修道院から寄贈された。木彫りで、高さは約160センチ。腕に抱いているキリストとともに肌が黒いのが特徴だ。
ひび割れができ、汚れやカビが付着するなど劣化が進んだことから、教会が同センターに修復を依頼した。同センターは本年度、美術史・文化財保存修復学科の藤原徹教授を中心に修復に取り組む。
肌が黒い聖母像はフランスでは山岳部などに数多く見られ、「お助けの聖母」として知られる。しかし、国内にあるのは、この一体だけ。顔が黒い理由について(1)土俗の宗教とキリスト教が交ざった(2)エルサレム方面から来たジプシーの守り神だった(3)献灯のすすによる変色―などの諸説があり、謎が多い。
シンポジウムでは鶴岡カトリック教会司祭の本間研二氏が聖母像の由来を報告した後、黒い聖母像の研究を続けているお茶の水女子大名誉教授の柳宗玄氏、ルーブル美術館所蔵の作品の修復を手掛けているフランスの修復家アニエス・カシオ氏が講演する。
総合司会を務める藤原教授は「修復作業が必要な彫刻作品は人間でいえば患者と同じ。何を表現し、どんな歴史を持っているかが分からなければ、良い治療はできない。シンポジウムの議論を修復に生かしたい」と話している。
シンポジウムは正午から。入場無料。連絡先は東北芸工大文化財保存修復研究センター023(627)2204。

聖母像の保存・修復シンポジウム
海を渡った黒い聖母~フランスから鶴岡へ~
鶴岡カトリック教会には、1903(明治36)年に北フランスのデリヴランド修道院から寄贈された「黒い聖母」像が安置され、100年にわたって人びとの祈りを受けてきました。この木彫(彩色)像は劣化がすすみ、このたび本学の文化財保存修復研究センターに修復が依頼されました。ヨーロッパでは、肌の黒い聖母像の伝統が、中世以来耐えることなく、今日でも各地でその像に崇敬を捧げようとする巡礼があとをたちません。あの柳宗玄氏による黒い聖母に関する講演会だって、うわあ~是非聞きに行きたかった! でも、ちょっと山形までは遠いよなあ~。夏休み中なら、予定合わせて行っても良かったのに・・・なんとも残念!
我が国では他に例を見ない鶴岡の「黒い聖母」像をめぐって、宗教・美術史・保存・修復の各方面から、その謎と魅力を説き明かします。
日時:2007年7月14日(土)12:00~16:30
場所:東北芸術工科大学 本館4階410講義室
入場料:無料
主催:東北芸術工科大学 文化財保存修復研究センター
内容:
報告1 鶴岡カトリック教会の設立と黒い聖母像の招来(12:00~12:30)
本間研二(鶴岡カトリック教会司祭)
報告2 鶴岡=デリヴランドの黒い聖母像(12:30~13:00)
安發和彰(本学 美術史・文化財保存修復学科准教授)
聖母像の見学(13:00~14:00)
本学文化財保存修復研究センターにて/休憩も含む
講演1 「黒い聖母」の謎と系譜(14:00~15:15)
柳宗玄(お茶の水女子大学名誉教授)
講演2 フランスにおける木彫彩色の技法と修復(15:15~16:30)
アニエス・カシオ(修復家・トゥール高等美術大学)(仏語通訳付)
総合司会と見学案内:藤原徹(美術史・文化財保存修復学科教授、文化財保存修復研究センター兼任)
申込方法:参加者氏名・所属を明記して、下記へお申込ください
お問合せ:東北芸術工科大学 文化財保存修復研究センター
〒990-9530 山形県山形市上桜田3-4-5
E-mail:iccp@aga.tuad.ac.jp/TEL:023-627-2204/FAX:023-627-2303
ニュースで既に終わってしまったのを知った時は、悲しかったです。
せめて講演会の内容ぐらい、ネット上に公開してくれないのかな? それぐらいは期待したいところです。youtubeで公開でもしてくれればいいのに・・・。
関連ブログ
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社
「芸術新潮1999年10月号」特集「黒い聖母」詣での旅
「黒マリアの謎」田中 仁彦 岩波書店
「黒い聖母」柳 宗玄 福武書店