2005年07月14日

メディナでお買い物~チュニジア(7月1日前後?)~

ファティマの手

さて、その後数日に渡ってぶらつくメディナであるが、実はここで私は買い物をしている。イスラム圏に留まらず、最近は知名度がかなり高い「ファティマの手」もごたぶんに漏れず入っている。基本的にこういうの好きだから。

一応、簡単に由来をご紹介すると…。
ある日、預言者ムハンマドの娘ファティマは預言者である夫アリーが帰宅した際、食事の準備をしていていました。ファティマが驚いたことに夫は若く美しい妾を伴っていたのです。ファティマはショックを受けて動揺するんですが、ひたすら忍従し、何も考えられないまま熱い鍋の中に手を入れ続けてしまう。気が動転していたのでしょう、火傷にも気付かないまま作業を続けていたんです。夫がそれに気付き、妻に駆け寄って大声を上げて初めて自分がしていたことに気がついたということです。 この故事にちなみ、ファティマの手は忍耐や誠実さの象徴とされ、やがてそこから拡大して、持ち主に幸運をもたらしたり、災いを防ぐ魔除けとしても尊重されるようになったそうです。また、中央に眼や呪文を描いたものも多く、邪眼をしりぞける眼としても有名なんだそうです。

フィレンツェ購入のバッグ

と、こういったものも相当数買い込んできたのですが、それらとは別に私物として購入したものもあったりする。単品としてもっとも高かったのが革製の肩かけバッグ。元々、以前いた会社でバイヤーをやっていた時、革製品が好きで幾つか扱っており、個人的にも革製品は好きだったりする! 鹿革の柔らかさ・軽さが一番好きなんですが、フィレンツェで購入した牛革バッグ(写真)もなめしの技術が最高に良く、柔らかさ・丈夫さ・肌触りともに気に入っており、皆さんにもお薦めしたいくらい。自分でも愛用している。

キャメルのバッグ
そんな私が目を止めたのがこのバッグ(写真参照)。アラビア商人もなめす技術が高いというのは有名ですが、実際に製品で見たのはこれが初めて。業者向けの展示会でもあんまり見た覚えないなあ~。結構、いいのにね。素材はキャメルでたま~に市場で見かけますが、思ったよりイイかも?モノは軽いし、柔らかく丈夫。折り曲げてもシワみたいな変なふうにならない。想像以上になめしの技術が高いんだろうね。ついつい、店員に声掛けてモノを見せてもらう。

むこうも商人、説明に力が入る。モノと色は気に入ったが、高いのをつかまされるのは元バイヤーとしても日本人一旅行者としても避けたいところ。頑張って、交渉開始。

定価57TDと書いてあったが、こんなもん当然、客あしらい用のもの。ここからディスカウントして2回目か3回目が、実際の売値。これはだいたいの国で共通するルール。1TD=80~85円ということで2千円だったら、買ってもいいと内心計算する。25TDというところか。

むこうはオーソドックスに48TDを1回目に提示。こちらは、高くていらないとつき返す。おじさんは日本人に友好的な姿勢を示しつつ、ちょっと雰囲気をそらせて、たらし込み始める。日本人の場合、これでコロっといく場合が多く、次の2回目の割引価格で大概OKと言って買っていく(たぶん?)。

私はにこやかにしながら、あちらからの45TDは全く相手にしない。むこうはしたたかな商人の民。すると、戦略を変えて、いくらで買いたいかと要求金額を探り出す作戦に出てきた。こちらとしては25TDが希望だから、15~20TDを提示するが、さすがに半値以下だし、今回は20TDとした。

おじさんは、え~っと驚きあきれる表情とジェスチャーでその値段は無理ですよ、と言うが、これはプロの演技。こちら側では相手に余裕がありそうで18TDくらいにすべきだったかと少々後悔。

でも、安ければ買う気があるんだよと示す為、私もバッグを再びいじりだし細部をチェック(するフリ)してみせる。むこうも損しない限り、売れば利益が出るので、商品の良さを再度アピールしつつ、38TDを提示(紙に書いてくれる)。このやり方が実にうまい!

57TD  48TD 45TD
20TD(こちらの書いたもの)    38TD(○で囲んである)  

ちゃんと値下げした履歴を示しつつ、こんなにうるほうも頑張っているんだよ~ともう一度説明しながらの価格提示。うまいよ~。こういうプロは大好き!!

こちらもそろそろ、買い手としての行動をしなければと思い、一気に核心の25TDなら買うよ宣言。

おじさんの他に、店の売り子達も寄ってきて楽しそうに見始める。あのジャポネも頑張るなあ~って感じかな? おじさんのプロの売り方を品定めしているのかもしれない? しばし考えて 25TDを斜線で消して33TDを提示。本当のベストプライス、むこうも利益が出なさそうな顔をしつつ、OKの握手を求めてくるが、握手しない。

こちらもしばし考えつつ、25TDでは買えなさそうなのを感じる。諦めて購入しないのも正しいやりかた。義理人情で売買したら、それはプロではない。改めて自分の中でいくらまでなら買っていいのかを考える。革製品でお土産にしたいし、何よりも気に入っている。2500円(=30TD前後)でLIMITを作った。さすがにこれ以上なら、付き合ってくれたおじさんにも悪いが買うべきではない。後悔しそうだ。

差し出された手を握らないまま、おじさんの肩を抱きつつ、ペンで紙に書く。
  30TD (下線が二重線)
最終提示額だよという意味で二重線で強調し、逆にこちらから握手の手を差し出した。

おじさん、周りの人達の顔を一瞬見つつ、参ったなという顔で力強く手を握り締めてくれて売買成立。

お互いにすぐ笑顔になり、両者ともに頑張って交渉したという気分でしっかりと抱擁する。私も交渉の緊張が解けたのでつたない英語で
You, good business. I’m lucky. You’re lucky, too?
とか、なんとか言いながらお互いに肩をたたきつつ、なごやかに精算した。

さて、これがここの物価より安い買い物かどうかは、本当のところ分からない。他の店でも40~45TDだったから(ここから値下げしても)少なくとも高い買い物ではなかっただろう。私的には何よりもこういう買い物が好きだ。いにしえより続くアラビア商人の末裔と売買したという実感が大きな満足感にもつながっています。岩波文庫で読んだ線や一夜物語の人々もこんなふうに売買してたんでしょうね。なんか勝手に想像して感慨深くて嬉しかったです。

単なる「物を買う」という行為ですが、人と交渉することで初めていろんなことが分かったような気もします(勝手な思い込みも含めて)。物の値段ってそのモノに対して付ける価値の評価であり、国や文化的な差異に加えて個人的な尺度がモノを言いますし、何よりも真剣に交渉した相手には、敬意と親近感が生まれます。そういう意味で物の売買って好きですね、やっぱり!

日本人はよくeconomic animal などと言われてますが、あれって自己判断できない人が上の(会社の)判断に従って、ただ盲目的に行動した結果が非道な商売人かのように誤解されているだけのように思います。だって大企業で見積もりとってプロジェクトのコストを下げてるおえらいさんが、個人的には言い値でモノを買っているのは理性を疑う。昔、オーナー社長の会社にいたが、上場しても金銭に関しては会社で一番シビアでした。この人の下でしっかり価格交渉することの大切さを学んだような気がします。近江商人の末裔らしいですが…その社長は。アラビア商人VS近江商人、っていうのも面白そう(笑顔)。

さて、こうしてGETしたお土産だけど、今週末渡そうかと思ってますがこれ読んでるかな?コレ、いる~?(笑)まあ、いらなかったら、親にでもあげましょうか。 
posted by alice-room at 02:36| 埼玉 ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | 【旅行 散策A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
さすがバイヤー!
イスラミックショッピングを堪能されたようですね。
あの、値段に訂正線を引きながらのやりとり、私も大好きです。こちらの勝手でゴネすぎない具合もほんと、ベストです。やはりプロは違いますね。
因みに私は仕事をしていた頃、ツアーをイスラム諸国から仕入れてまして「タフネゴシエーター」として担当各社からは有名だった模様です(笑)
自分も愉しい。
相手も愉しい。
それが愉しいお買い物のありかたですね。
Posted by マユ at 2005年07月14日 22:46
マユさん、こんばんは~。お褒め頂き、有り難うございます。私自身はたいしたバイヤーではないんですけど、基本は守ってます。
でも、お互いに納得のいくまで交渉できれば、本当にそれが一番ですよね!特に価格交渉では、最終的には人間性が出ますから、必ず。それだけに、真剣ですが人との会話は何よりも楽しいし、好きだです(笑顔)。

今日も都内で商談してきましたが、じっくりと話し合って細部に至るまで納得のいくまで説明を受ければ、自然と信用が生まれますね。表面的に言葉を飾っても、分かる人には分かりますから。勿論、その為にはこちら側も入念な下準備や最低限度の業界事情等の情報を押さえておくことが必須ですけど。知っていれば知っているほど、相手は更にいろんな情報を教えてくれますもんね。

今日も3時間も話し続けましたが、心の底から納得できました。実績のある職人さんでしたが、何よりもいいモノを作ろうとする情熱がある方で、仕事の内容を聞いているうちに結構感動しちまいました(くぅ~、粋な職人さんだよぉ)。まだまだ日本のモノ作りは熱い!、と嬉しくなってしまいます(満面の笑み)。

コストは高いけど、いいモノ作りたいと思った狙いは正解だったようです。後は頑張ってモノを完成させ、TV通販とかに売り込みにいかねば!
Posted by alice-room at 2005年07月15日 04:20
↑腕の良い職人さんに会うのも、話をするのも、見るのも、聞くのも。。。好きです。
そういう人に会うたびにまだ世間は捨てたもんじゃないよね。と思います。
↑マユさんも、Alice-roomさんもバイヤーとして根性、パワーがあるのですね。
私は途中で気力が失せてしまう。
TV通販に売り込む商品って何なのか?興味が。。。
Posted by seedsbook at 2005年07月15日 15:49
seedsbookさんもそう思います? 私もやっぱりそう思います。世間はそう捨てたもんじゃないかもしれませんね、ホント。
たぶん…(マユさんが見逃してくれることを願いつつ)私はバイヤーとしてのパワーは負けると思いますよ~。ほらっ、気が優しいもんで…(怒られそう…(笑)。
現在、作成中の商品は…内緒!
って、いうのは冗談ですが、出来上がったら宣伝も兼ねて(宣伝になりませんが)、ブログ上で紹介しますよ。今、教えてしまうと楽しみが半減しちゃうと思いますので、想像してて下さいね(ニヤニヤ)。
Posted by alice-room at 2005年07月15日 18:22
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