
2003年の世界幻想文学大賞を受賞したファンタジイ、それだけにつられて購入した本です。だって、過去に同じくこの賞を受賞したタニス・リーの「死の王」とかって、すっごくお気に入りだったので・・・。
で、この本はどうかというと、予想に違わず、きっちりファンタジイしてるのですが、どこぞの子供向けのつまらないおとぎ話ではなく、良質のファンタジイだけが持つ虚構の世界なのに、妙にリアリティがあってしかも哲学的な本質を備えている、そんな作品だったりします。
結構、好きなタイプ!!
でもね、読了して謎が説明されても、私全然理解できていなかったりする。とにかく不思議な感じが薄~い膜のように、あるいは霞のように頭にかかった感じ。子供の頃、読んだ「コロボックル」とか「飛ぶ教室」とか、なんか分からないんだけど心に残る、そういった感じの物語です。
舞台は世界でもっとも古く、もっとも豊かで、もっとも美しい都であるオンブリア。この都は、現在の都であるオンブリアのすぐ下に、いにしえのオンブリアが多層構造のように重なっており、そのいにしえのオンブリアへは分かる人ならば、相互に行き交うことのできる不思議な空間になっている。
同時に現在のオンブリアで歳若い少年を大公として擁立し、傀儡政権を牛じる悪玉「黒真珠」に対し、地下のいにしえの都で世界創造と共に生きてきたかのような魔女「フェイ」。魔女の下で働く蝋人形と自分を信じていた少女「マグ」。歳若い大公を黒真珠から守ろうとする若き貴族「デュコン」。暗殺された元の大公の愛妾であり、元酒屋の娘である「リディア」。
これらの登場人物を中心に、政治的な陰謀が渦巻く宮中で数々の事件が湧き上がる。シンプルな構成なのですが、実に味わい深い世界観がじわじわと現在と過去の互いの侵食の中で描かれていきます。
とにかく、巷で有名な某ファンタジイよりかは、はるかに私の好み。洗練されて、いろいろなものが削り落とされた架空世界は、なんとも素敵で魅力的です。
現実逃避したい方にはお薦めですね! タニス・リーとかその系好きな方にはお薦めです。ベタなファンタジイファンにはお薦めしませんけどね。
影のオンブリア(amazonリンク)
今度私も読んでみようとおもいます。
表の世界である宮中や街の路地が、いにしえの都に壁隔てて、通路を隔てて複雑に入り乱れつつ、相互に出入りできてしまう、そんな世界観が興味深いです。
不思議な幻覚感に襲われます。