
読む前から、本屋でパラパラ見てても内容の無い本だと思ったが、図書館で借りれたので改めて読んでみた。
そもそもキャメロン監督が映画にするずいぶん前から、イエスの銘のある石棺があるのは知られていたし、私でさえも知っていたぐらいで完全に『ネタ』としての話だった。(かなり有名な話です。)
と、同時にイエスの弟の石棺についても本書で触れられているが、私も意識していたので経過を知っているが、明らかに偽造だったのに、本書の著者は、本書執筆時点でもあれは本物だったと主張している。この一点だけ採り上げてもまともな理性を有する人は、本書の主張を肯定したり、信じたりする事はできないだろう。
実際、読んでいて失笑を禁じえない場面が続出する。深呼吸して読んでみれば、キリスト教関係の知識がなくても、論理的に考えても実に胡散臭い内容の本であることが分かるはずである。
実際に、読んでいて論外だと私が感じた点を思いつつくまま挙げてみよう。
「マリアムネ」という銘のある石棺があったので、googleで検索したら、マグダラのマリアの本名であることが分かった、そうです。
・・・つ~か、ググんなよ~っといいたい。google検索は便利であるが、ネットの世界は虚実混淆である。まともな良識のある人物が、アカデミックな事柄に関して『ググる』なんてことは有り得ない!!
正直、この記述読んだ時点で本書は終わったと思った。検索で出た内容が正確か否かが問題なのではなく、その方法自体が決定的に間違っていることに気付かない著者達に失笑を禁じえない。
それと著者達が力説する統計によるイエスの骨棺である『確率』について。彼らは肝心の数式を書いていないので、確率が10分の1だろうと、1億分の1だろうと何を言っても説得力がないうえに、全く意味が無い。更に、彼らが確率を計算している前提条件はたかだか数百個のサンプル中、いくつ該当する事象があったかという、非常にアドホックな例を元に確率を推定し、ひどいことにこのアドホックな確率を複数回かけて確率を出している。
要は、適当に決めたパラメータを何個も掛け合わしているので、そんな確率は0%から100%までいくらでも作り出せる数値であり、全く意味が無いように思えてならない。
同じモデルを使い、パラメータの数字が一つ二つ違うだけで、マイナスの経済成長と10%以上の高度経済といった経済予測をするシンクタンクの予想を見れば、そのいい加減さは歴然だろう。(などと言っている私自身が以前提出した企画の損益シミュレーションの数値を操作していたのだから、確信を持って言える!)。
まあ、騙されやすいけど、もっともらしい専門家の出す数値というのは複数の仮定があってのものなんで、仮定が変われば、全く意味無かったりする。
それ以外にもたくさんあったなあ~。そうそう、本書読んでいてさすがにこれは・・・と思ったのにテンプル騎士団の関与がどうとかあった。もうここまでくれば、TVの企画屋さんが大好きな『ネタ』としか思えないでしょう♪
実際、著者は自分がTV局にこの手のものを売り込む企画屋さんだと言ってるしねぇ~。
既述したけど、あくまでも「イエスの弟の骨箱」の件、あれは真実だと固執してる時点で論外なんだけどね。
本書は読んでもいいけど、買ってまで読むべき本でないことは保証します。映画の公表前にやっつけ仕事で書かれた本らしいし、翻訳もやっつけみたいです。こんな薄っぺらな本を分けて翻訳する人達もなんだかなあ~。私一人でこれぐらい訳せますって!マジに。
本屋で手にとってみれば分かりますが、これほど活字が大きくてスペースがある本ってのも・・・? テイムリーに一瞬で売って稼がんとして書かれたよくある本です。しかし、文字数少ないなあ~。
そうそうダ・ヴィンチ・コードで小説としての面白さを出す為に、語られていたイエスとマグダラのマリアが結婚していた、という『ネタ』が本書でも繰り返されています。う~ん、二番煎じだし、それが科学的調査で明らかになったと言われても・・・上記の通りだから、その信憑性って??? 暇つぶし以上の何物でもないですね、本書って!
amazonの書評も見ましたが、私には信じられないことばかり書いてあるんですが・・・? うちのブログを見られた方には、くれぐれも騙されませんように、老婆心ながら。
【追記】
アメリカの大学にいたことのある友人と話をしていたところ、アメリカの大学では、参考文献としてweb上の資料を挙げることもOKなんだそうです。政府関係が公表する経済統計とか、研究者が公表している論文とかなら、タイトルとurlを列挙したりするそうです。
ということは、別にググったからといって私のような評価をするのは、早計らしいです。う~ん・・・。まあ、電子証明とタイムスタンプとかいろいろあるからかなあ? 私的にはweb上にあるデータは、いつでも変更の恐れがあるし、必ずしも常に参照できる安定性もないから、どうかなあ~と思っていたんですが、考えが古いのかもしれませんね。
ふと思ったのですが、上記のようなことを踏まえると、以前読んだニュースでアメリカのテストでwikipediaを参考文献に挙げるのが禁止になったという意味がようやく納得できました。ふむふむ。
【目次】キリストの棺 世界を震撼させた新発見の全貌(amazonリンク)
第1章 2000年の封印が解かれた日
第2章 <シンハの報告 1> それは偶然の出会いから始まった
第3章 <シンハの報告 2> 墓は生きていた、しかも呼吸して
第4章 <チャーリーの報告 1> 250万分の1という確率
第5章 <チャーリーの報告 2> ジェームズ・キャメロン参上
第6章 マリアムネと呼ばれたマリア
第7章 双子という名の息子
第8章 <チャーリーの報告 3> 反証に光を当て、厳しく再検証
第9章 なぜ不当に高い? 「キリスト標準」
第10章 ナザレ人(ルビ・びと)の末裔
第11章 <シンハの報告 3> ついにタルピオットの墓に!
第12章 <チャーリーの報告 4> イエスの骨棺が壊れた!
第13章 DNA鑑定が明らかにした「真実」
第14章 <チャーリーの報告 5> 鑑識にまわされたイエス
エピローグ <シンハの報告 4> 真実の確証
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もっとちゃんと読んで書評したらどうですか。
計算式はここで見れたけどね!!
あんまりいいかげんなのでコメントしました。
http://www.youtube.com/watch?v=dT2zWvLRVmA&mode=related&search=
私の書評の表現は分かり難くかったかもしれません。ポイントは、説得力のある統計データを提示するには、以下の2点が最低限必要であり、本書ではそれが提示されていないということでした。
1)モデルの妥当性
2)パラメータの妥当性
本自体は手元にないので、ちょっと確認できませんが、この2点について正確な記述はなかったと思います。
また、本書はあくまでドキュメンタリー風のジャーナリスティックな観点で書かれたもので、少なくとも統計学的な資料の点では不備だと思いました。
紹介してもらったyoutubeについて(情報有り難うございます)。時間のある時に見たいと思いますが、この書評はあくまでも本書の内容についてですので、直接そこに統計モデルがあっても関係ないと思います。
ちなみに、モデルの妥当性以上にパラメータの数値設定が任意になされては、統計的には無価値ですが、その例を挙げたくてしばしば出てくる経済統計の例を出したのですが、かえって煩雑で分かり難くかったかもしれません。
社会科学系で統計処理をよく使ってる方を前提にして書いていたので誤解を招く表現だったかもしれません。
書評の表現は、私が走り書きしたものですので問題があるかもしれませんが、本質的な内容評価は上記の点を統計的に考えれば、妥当だと思います。
どうせ読むなら、読む価値のあるものにしたいですよね。
時間と金を浪費させられるのは、本当に困りますよね。全く同感です。
まあ、面白ければそれはそれで許せる場合もありますが、読み物としても面白さがないのは悲しいですね。コメント有り難うございました。