
いろいろあって残り30頁が読めなくて止まっていましたが、ようやく読了できました(満面の笑み)。
上巻からの続きとなります。具体的に言うと、4つの鏡のうち『歴史の鏡』の途中からです。
ステンドグラスや彫刻に残された図像、そもそもそれらが描かれた大聖堂がどんな聖遺物を有していたか、それが分かると自ずから判別するらしい。具体的な聖アンナの話では、シャルトルにおける特異な描かれ方(聖母を抱く聖アンナ)は、聖アンナの聖遺物をシャルトル大聖堂が有していた歴史的事実から合理的に説明されていく。
思わず、大きく頷いてしまう説明です。聖アンナの遺物があったことは、別な本で知っていましたが、それがこういう風に関係してくるとは本書を読むまで全く知らないでいました!う~む。
また、聖書で説明されていない聖人の人生の残りの場面は、素朴な中世人の関心を惹き、そのまま放置されることはなかったそうで、外典や黄金伝説がそのすきまを埋めていき、それらに基づく伝承は大聖堂に残された図像に反映しているそうです。
その一方で、描かれた図像を見た人々がそれから新たに着想を得て、伝承を作っていくようなこともあったらしく、相互作用的にも関係しあった事実もあるそうです。
そうかと言っても、図像の内容は全部が全部、伝承によるものだけだったわけでもなく、たくさんの工房で共通して用いられた図像の手引書のような存在があったことをうかがわせている。
こういった示唆は、本書を読まなければ、一切知らずに意識することなく見過ごしてしまったであろう点であり、読めば読むほど著者エミール・マールの偉大さ(とゴシックに対する情熱)を感じざるを得ない。
王も貴族も司教でさえも普通の寄進者の資格においてしか大聖堂には描かれず、聖人とは明確に区別されていたことや、歴史的出来事も神の世界との関連がなければ、一切大聖堂には記されないことなど、中世の人の考えが徐々に伝わってくるかのようです。
しかし、これだけの内容をよく本にまとめられたなあ~と感嘆します。それ以上によくもこれだけきっちりと典拠を調べ上げたと感動しないではいられません。注釈も宝の山のようです。
内容から考えれば、タダみたいな値段です。大袈裟かもしれませんが、ゴシック建築に関心があるなら、どんなことをしてもまず読むべき本かもしれませんね! 岩波文庫で出してくれたら、更に凄いんだけどなあ~。それは無理か。
でも、これは必ず手元に置いておくべき本ですね。何度も読み返すだけの価値があります。久々に感動モンの書籍でした。時代は経ってもいいものはいいです!!
これを読まずに、ゴシックを語られてもきっと相手にされないんだろうなあ~ということを心の底から感じた本でした。
具体的な内容については次の抜き書きを参照下さい。
「ゴシックの図像学」(下)~メモ
【目次】ゴシックの図像学〈下〉(中世の図像体系)(amazonリンク)
<上巻>
序論
第1の書 『自然の鏡』
第2の書 『学問の鏡』
第3の書 『道徳の鏡』
第4の書 『歴史の鏡』
第1章 旧約聖書
第2章 福音書
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<下巻>
第3章 旧約聖書と新約聖書に関連するさまざまな伝承
第4章 聖人と黄金伝説
第5章 古典古代―世俗の歴史
第6章 世の終わり―「黙示録―「最後の審判」
結論
関連ブログ
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ヨーロッパのキリスト教美術(下)―12世紀から18世紀まで」エミール・マール 岩波書店
「ゴシックの図像学」(下)~メモ