
あの江戸の大学者、平田篤胤がこういうものの研究に精力を注いでおり、しっかりした資料調査を行っているなんて夢に思わなかったので、そういったことを知ったのも素直に驚きましたし、この本の中にもたくさんの資料が満載でこいつは是非、一冊持っておきたい本かも。購入予定リストの本が山ほどあるけど、そのうちの一冊に入れておこうと思いました。
とくにこの怪談の特徴は、巷に流布する噂や伝承の聞き取ったものではなく、あくまでも実際に見た見聞録として、信用に値する実在の人物から、本人確認の下で記録された内容っていうのが、これまたポイント高し! しかもその内容が、他にもよくある系の話じゃなく、よくよく読んで見ると独創性豊かで(ふさわしくない表現か?創造してる訳じゃないし)、とにかく他の怪談に出てくるあやかしとは一味違っていて変わっている。これは是非とも読んでおきたい一冊でしょう。怪談好きには。
絵巻物みたいになっており、挿絵も豊富なのでそういう点でもお薦めです。この絵がちょっと違うんだよなあ~、他のと。
とりあえず、粗筋を。若干16歳の若者がとあることがきっかけで百物語(お化けが出るというアレ)をする。話し終わった時には何にも怪異がないのですが、その後、7月の丸々1ヶ月間に渡って毎日、怪異が現われるというお話です。どんな怪異か、誰もが興味を持つでしょうから、幾つかを選んでご紹介。
○女の生首が逆さになって髪の毛を足のように立て、笑いながら飛び回ってくる
○天井から青い色をした瓢箪がぶら下がって降りてきた
○親戚が二人来て、話をしている最中に、塩俵が空をただよってきて頭上を飛び回りつつ、塩を撒き散らした
○知り合いに化けた妖怪が来て、話しをしていると、頭が少しづつふくれてきて大きくなり、丸い穴があいて赤ん坊が二人、三人と這い出してきた。それらが一緒になり、一人の大童子となってつかみかかってきた
○目の丸い不気味な首が十一、二も串刺しになって飛び出した。串を足代わりに枕元を跳ね回る
○縁側から降りると、足がひやりとした。死人でも踏んだようで見ると青い大入道が横たわっていた。すぐに縁側に戻ろうとしたが、泥田にはまったように足が動かない。やっとの思いで縁側に上がったものの、足の裏に肉が粘りつき、気味悪かった
○台所のほうがもやもやしているので、見ると網の目のごとく並んだ人間の顔がった。菱形をし、口を開けたり、閉じたりしている
う~ん、なんかよくあるようなんだけど、微妙にレア物の怪異なんだよね。どこが変わっているか分かります~? なんか怪談の落語が聞きたくなってきた。確か、CDをどっかにしまってあるはずなんでもう一度探して聞いてみよっと。
前半分は絵と博物学的な記述が多いですが、後半分はその怪談の文章なんで一つぶで二度美味しいかも? 結構、こういうの好きです。ネックは値段だけですね。4千円はちょっと高い。これだけじゃないもんね。こんな感じの本毎月何冊も買ってたら、えらいことになるって…。でも、いい本だよ~。
稲生物怪録―平田篤胤が解く(amazonリンク)
関連サイト
町おこしとして稲生物怪録のお祭りもやってるみたい(公式サイト)
広島の稲生神社の夏越祭も是非一度
訪れてみてください。
http://yamamotonoriko.cocolog-nifty.com/daily/2005/07/post_c325.html
僕もこの本を持っています。仰るとおり、荒俣さんの妖怪関係の本の中では、まともですよね。平田篤胤が化物に関心を持っていたことは、有名で、この他にも「古今妖魅考」という本があり、京都大学附属図書館で、が公開されています。(確認していませんが、一部だけのようです。)
http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/0008/image/29/0008s252.html
ご存じとは思いますが、鏡花の「草迷宮」や稲垣足穂「山ン本五郎左衛門只今退散仕る」は、この「稲生物怪録」を元ネタにしています。
「読みたいリスト」がこうして増えてゆくのだけど、追いつかないよ・・・
青い瓢箪が降りてくるのは、なんかすき。
でも、親戚に化けられるだけでもカンベンなのに、その頭が膨れて赤子が這い出てくるのはかなり厭だなぁ。全然違うのに、漫画の「寄生獣」を思い出してしまいました。
知人に「妖怪大戦争」観たいと誘われているのですが、私のことを妖怪呼ばわりする人と一緒に行くのは抵抗あるな。
lapisさん>本当にいろんな本をお持ち&ご存知ですね。私は平田篤胤氏の事をほとんど知らなかったのでもうそれだけで新鮮な驚きでした。京大もこうやって資料公開してるんですね。なんとも嬉しいことです。
あと草迷宮とかがこれを元ネタにしているのも、この本を読んで関連するサイトを見ていた初めて知ったぐらいなんですよ、私。もっと&もっと基本的なことを勉強しないと…(お恥ずかしい)。lapisさんを見習いたいです。世の中には知らないことが本当にいっぱいありますね、私の場合。でも、おかげでとっても楽しいです(満面の笑み)。
マユさん>「妖怪大戦争」では妖怪がたくさん出るみたいですねぇ~。観てみたい作品ですが、映画館、子供で溢れていそうでちょっと行きづらいかも~。
でも、マユさんが映画観に行ったら、前に座っている子供が振り向くと「キャア~」と絶叫が…。(そ、そんな失礼な事、私には申し上げられません…すみません、想像しちゃいました(笑))
私も荒俣氏のこれが読みたいのですが、値段が高いですね。どういう解説を荒俣氏がしているのか気になっています。
・・って、コラ。
怪談は、旬の季節にね。
素早い購入ですね。私は一度読んだんで買うのはたぶん先になりそうです。その前にフルカネリの「大聖堂の秘密」が欲しくって…うっ、高い。
そういえば「寄生獣」の最後ってどうなるんでしょう? 途中までは連載で読んでいたんですが、ラストを知らないんです。あっ、でも教えてもらうと読む楽しみが…。知りたい気持ちとアンビバレンツな感情が…。
寄生獣ですが、単行本で6巻?程度だったと思うので、中古で大人買いするのもいいかもしれませんね。ラストはうまいこと云えませんが、まぁぼかして云うとハッピーエンド。どんでん返しはない順当な感じです。
ミギー可愛いですよね。・・欲しい。
今では、政治運動との絡みも面白いと思ってます。
といっても、あまり知りませんが・・・
昨年、国立歴史民俗博物館で、明治維新と平田国学展があったのですが、行けなくて、図録目録を通販で買ったのですが、
篤胤のいろんな面が分りやすく展示されていたのだろうことが目に浮かびました。
恋愛、神道、神代文字、物の怪、政治、出版、ロシア語などへの関わり方は、
西洋の科学者などと同じで先人の思いを守りつつ、科学的合理的思想と折衷し、中世から現代への流れの中で、新しい倫理観を確立しようとした近代の学際的知識人とその門弟たちの世界観、歴史観の壮大さを感じさせられます。
印南野きつねさん>平田篤胤ので「明治維新と平田国学展」というのがあったのですか? 全然知りませんでした。激変する時代の中で、多面的に活動された方なんですね。う~ん、本当に何にも知らなかったので、今度注意して見てみますね。コメント有り難うございます。
うっ、読みたい本が増えていく…。今日も新宿の古書展で購入してきたし、これらもいつ読み終えるのやら…???