2005年08月02日

「魔羅節」岩井 志麻子 新潮社

mara.jpg確かに特徴がはっきりしていて差別化されている本だと思う。日本的な風土に根差したねちっこい土俗的な情緒が表現されている本だとも思う。だけどね、なんか無理して『性』的な要素に固執していないかなあ~? 神への供儀としての性の供宴なんて世界中にあることだし、民俗学の本とか見ればいくらでもその手の記述は出てくる。文章として生き生きと表現している点は評価しますが、本書で採り上げられているどれもが筆者の嗜好としての『性』に偏っていて、共感を覚えない。農村社会に固有の習俗ではなく、筆者の歪んだ性的嗜好の吐露に過ぎないと思ってしまったのですが…。

基本的に、昭和初期のエログロナンセンス系は好きなんですが、あれは単なる安っぽいエロ趣味とは一線を画していると思います。あくまでも人間の深層心理の表現の一手法であり、重点はその背後にある屈折した病的心理の描写だと私は捉えていますが、この本はなんか違う。もっと個人的な「なんかあったの? 貴女? 過去にひどいことでもされた?」といった感じの属人的な感性が強過ぎるなあ~。しかも、(社会から or 世界から)捨てられた女性の悟りの境地のごとき。とにかく私には相容れないモノですね。端的に言うならば、私には美しく感じられない!ってことです。

もう、この人の作品は読まないかも? 「ぼっけえきょうてい」の一発屋さんだったのかな。ちょっと期待していただけに残念。ぼっけえ~は、作者の持つアクの強さが出る直前でかろうじて抑えられていた、その危ういバランスの故に素晴らしかったのか? う~ん、難しいもんですね。作家さんも。

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posted by alice-room at 03:51| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 小説A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ!
この本のカバー絵は、智内兄助さんではないですか?
坂東真砂子の著書などにも使われていたと記憶。
彼の絵はとても大好きなんです。
妖しくおどろおどろしい中に置かれた少女たち・・・
本の話じゃなくてごめんなさい。
Posted by cafenoir at 2005年08月02日 10:28
cafenoirさん、こんばんは。さすがですね!当りです智内氏の絵です。やっぱり独特の世界観が出ていて目を惹きますよね。私も最初は、この表紙カバーで本を手にとりました。
なんか妖しくて怖いくらいの不思議な気分にさせられますね。惹き込まれます。
Posted by alice-room at 2005年08月02日 21:23
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