2007年09月17日

「フーコーの振り子」(上)ウンベルト エーコ 文藝春秋

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正直言って私には、本書の面白さが理解できない。確かに衒学的な装いに目を惹かれるところはあるものの、オカルト関係の本を自費出版させてお金を稼ぐ素敵な出版社が舞台の一つになっているだけに、個々の事項については、意図的だと思うが、かなり胡散臭い眉唾のものの説明が随所に見られる。

下巻を読む前に書評を書くのもどうかと思うが、下巻を読むか否かを悩んでいるので現時点での感想や気付きについて書いておく。

メインテーマの一つであるテンプル騎士団関係の情報は、全然物足りないし、類書の専門的な本と比べると、甚だしく興醒めだった。エジプト関係の話なら、グラハム・ハンコックの本の方がはるかに楽しい♪ ケルヒャーとかなら、荒俣さんの図鑑とかに頻出してるし、今更なあ~ってカンジ。

勿論、私の知らない話もたくさんあるのですが、如何せん料理の仕方が悪い! 全然、話が広がらずにただ列挙してるだけのように感じてしまうのですが・・・? 下巻でそれらが全て有機的に結び付き、伏線として効果的な役割を果たすのならば、凄い傑作だと思うのですが、『期待薄』な感じがしてなりません。

ただ、極め付けに読む気を失せさせるのが本書の妙に『こなれた』訳。というか、強烈な違和感を感じさせる訳があちらこちらに頻出し、読んでいて気分がそがれてイライラしてしまう。

この手の本でよくこんな訳をするものだと翻訳者の良識を疑う一方、それを認めて出版させる担当者と文芸春秋にがっかりさせられる。ここまでくると、呆れてしまうし、情けない(涙)。

少なくとも翻訳者が別な人なら、本書は上下巻を読み通す自信があるが、今の訳で下巻もと思うとかなり憂鬱な気分になる。さて、どうしょうか?

読んでいて決してつまらないわけではないし、話には引っ張られるところもあるんですが(オカルトネタ満載だし、ブラジル出てくるし・・・)。でも、いかにも結社やセクト的なごちゃごちゃした関係の話は、ちょっとパスしたい。そして女性関係の話もどうかなあ~、必要? 話を膨らませる為に要るのかな? 個人的には、もっと本質的な内容に踏み込んだものを期待したいのですが・・・。

やっぱり下巻も読むべきなんでしょうね。しかし、この訳は嫌い。つーか、大嫌い! 「太夫(たいふ)」なんて単語がどうやったら、この本の文脈で出てくるんだ。いわゆる高級娼婦のことだろうけど、センスのかけらもない。いちいち挙げてたらキリがないのですが、もっと劣悪な訳があちこちで出てきます。う~イライラ・・・。

決して本書はお薦めしません。ちゃんとした翻訳のできる方が訳した新訳版が出たら、買ってもいいかも。

そういえばamazonのレビューを見たら、訳の酷さは折り紙付きですね。もっとも英語版でも読むの大変みたいだから、私もそちらを買って読み直そうかと思ったが、あえなく挫折しそうなんでやめときます。

現時点でまとめると、オカルトネタとしてくすぐるものはあるものの、あくまでもネタになっている感じで、もっと生真面目にオカルトを楽しむ気になれないなあ~。雑誌の「ムー」と同レベルに水準を落とし過ぎている感じがします。あのエーコですから、意図的なのでしょうけど、私には不満だし、つまらないです。

フーコーの振り子〈上〉 (文春文庫)(amazonリンク)

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posted by alice-room at 23:37| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 海外小説A】 | 更新情報をチェックする
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