2007年09月25日

町田市国際版画美術館 企画展「カラフル・ワールド! 版画と色彩展」

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版画美術館に至る公園の中にあった巨大なオブジェ。写真では実寸が分かり難いと思いますが、ものすご~く巨大です。しかも、意味無し。

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でも、個人的にスキだったりします。水の重みでシーソーのように上下に動きます。

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あの噂の『蘭花譜』の中の版画です。戦前、大金持ちであった実業家が金に糸目をつけずに世界中から蘭を集めて温室を作り、独自品種の開発したというアレです。英国の植物協会に世界でここにしかない品種を次々と登録し、生み出された新種の蘭を職人技の極みというべき多色刷りで刷り上げて無料で大学等に配布したんだそうです。

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今のお金持ちと違い、破産するまで徹底的に成し遂げるオタク気質には、神懸り的なものがありますね。その作品を2005年に再刷したもののようです。それでも興味のある方はどうしても見に行くべきものでしょう!! 展示は3枚だけですけどね。

詳しくは、NHKにっぽん再発見 ハイビジョンふるさと発 「失われた蘭の楽園~京都・版画集“蘭花譜”ものがたり」の記事、ご覧下さい。

蘭花譜―天王山大山崎山荘(amazonリンク)

『エジプト誌』よりデンデラの円柱
(『エジプト誌』よりデンデラの円柱)

『エジプト誌』とは、かの皇帝ナポレオンが国家の威信をかけて物凄い数の研究者を連れていき、非常に厳密なエジプトの学術研究を行わせた後、その調査結果を記録する為にこの上なく精確且つ精密な多色刷り銅版画により作成した本なのです。

『エジプト誌』より
(『エジプト誌』より)

この精密さは、肉眼で見たのでは普通の模様にしか見えない部分がガラス直前まで近づいてルーペで拡大してようやく線描画だったり、別なデザインの集合体であったりするのが分かるほどなんです。

『エジプト誌』より王家の谷の墳墓の壁画
(『エジプト誌』より王家の谷の墳墓の壁画)

肉眼では平板に見えたものがルーペで細かく観察して初めて3Dの立体的に浮き上がってくるんですよ~。これは感動モンです!! 是非、関心のある人は行って実物を見るべきです。いやあ~、実に凄かった。

他にも『フローラの神殿』なんかもあったりして、失礼ながら何故、町田市に・・・というぐらいの素敵な作品があります。

『フローラの神殿』より

これらが全て自分の館の所蔵というのが凄いです。そもそもここの美術館に来ようと思ったのは、「澁澤龍彦ー幻想美術館ー」展や西洋美術館の企画展で、ここから版画が貸し出されているのを知ったからなのですが、わざわざ町田まで来て正解だったと言えるでしょう。

その一方で、自館の所蔵品なのに常設展としてではなく、企画展で展示するのは大変違和感を覚えます。常設展は無料としているせいではないかと勝手な憶測で恐縮ですが、市民の税金なら、市民だけでも無料にすべきだと思ったりするのですが・・・???

その一方で常設展は、ここが所蔵している版画がちっとも展示されていない。有料でもいいのでもっと公開できないのでしょうか? 勿論、版画は痛み易いとか理由があるのかもしれませんが、膨大な浮世絵や西洋版画など持っていても外部に貸し出しているだけなのは、おかしいように感じてなりません。

一緒に行ったツレも企画展(本来、常設展の企画のはずですが)は大いに喜んでいましたが、常設展には憤慨を通り越して呆れていました。あまりにも情けないです。

あと、企画展ですが、通常自己の所蔵物以外は著作権の問題があるので、写真撮影を禁止なのは分かるのですが、何故、ここの所蔵品なのに写真が禁止なのかはななだ理解に苦しみます。

海外では、モノにより作品が痛まないようにフラッシュは駄目でも通常の撮影はOKなのが常識だし、必要以上に無粋なガラスもないもんですが。日本でも、国立美術館や博物館では最近、所蔵作品ならば写真OKのところが一般的ですけどねぇ~。
(従って、写真駄目だったのでうちのブログで載せてる写真は絵葉書や別のところから探したものです。)

あれだけ素晴らしい作品を有しながら、入場者が極端に少ないのもそういった姿勢に問題があるのでは・・・?などと邪推したくなってしまいます。

本当に素晴らしい作品をたくさん所蔵されているだけに、もっと&もっと開かれて使える美術館になることを切に望みます!!(合掌)

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実物は展示してなくてハイビジョンの映像だけ公開してましたので、泣く泣くそちらを見てました。浮世絵は、私の大好きな芳年の作品です。

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これとか。

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これね。残酷絵ならではの美しさ。金なら払うから、本物見せてよ~と切にお願いしたい。こないだの企画展の時には間に合わなかったんです(号泣)。

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15世紀末~16世紀初頭の手彩色木版画。他にもたくさんの西洋・東洋の木版画や銅版画を所有されています。

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1488年刊、ヴォラギネ「聖者の生涯」手彩色木版画。

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1519年エングレーヴィング「聖マリア・マッグダレーナの踊り」

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これもいかにもってカンジの作品ですが、こういったものをずいぶんと所蔵されています。素晴らしいだからこそ!今後に期待をしたいところです。

友人の言いわく、「宝の持ち腐れになるならば、西洋美術館か印刷博物館に寄贈してもっと有効に使えばいいのに・・・」。私も同感しちゃいます。だからこそ、しつこく期待!!

余談ながら、サイトもなんとかして欲しいです。これでは集まる入場者も集まりません。予算や人手の関係もあるでしょうが、金をかけずにいくらでも今の時代ならできますよ~。
【展覧会構成】
「色を塗る」 ドイツの書籍挿絵 15世紀~16世紀、フランスの民衆版画など

「色を刷る」
◎木版画 16世紀イタリアのキアロスクーロ(濃淡刷り)、19世紀ドイツの多色刷り木版画
◎銅版画―華麗な18世紀フランス版画
◎色彩の饗宴―19世紀
  石版画の多色刷り:ショッター=ボイス、ヴァロットン、シェレ、ミュシャ、トゥールーズ=ロートレック、ボナール、ドニ、スタンランなど
  木口木版の多色刷り:グリナウェイ、クレイン、ドイルなど

「色を伝える――博物誌の世界」
◎ゴーティエ=ダゴティの解剖図(18世紀)
◎植物図譜『フローラの神殿』(19世紀)、『蘭花譜』(1946年刊 2005年部分再刊)、鳥類誌『オーデュボンのアメリカの鳥』(1827~1838年 ※ファクシミリ版=複製)
◎エジプト誌(18世紀末~19世紀)
「光と闇――――まぼろしの色」
ジョン・マーティン(メゾチント)、オディロン・ルドン(石版画)、長谷川潔(メゾチント)
駒井哲郎(エッチング)、丹阿弥丹波子(メゾチント)など
展示総数 版画約130点
町田市国際版画美術館 企画展 カラフル・ワールド! 版画と色彩展

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ラベル:アート 版画
posted by alice-room at 20:17| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 【芸術】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
実家が「何故、といわれる」町田の近くのOZです、こんばんは。(笑)
ここの国際版画美術館は興味があるものの、近くていつでもいける、と思うせいか足を運んだことがありませんでした。
今回管理人さんのレポートでやはり行ってみようと思いました。感謝です。
来年になってしまうけど行きます。
管理人さんやお友達の言うとおり、遠くの美術館に所蔵品が移ってしまう(?)前に。
ところでわが町ではありませんが、町田市は文化教育にはかなり力をいれているようです。
そのあたりが「何故」の理由かもしれませんね。
Posted by OZ at 2007年09月27日 05:41
こんばんは~。OZさんのご実家が地元でしたか。版画に関しては日本で有数というか一番ぐらいの美術館らしいですね。素晴らしい収蔵品を持っているようですよ~。お近くなら、是非、一度行かれる価値があると思います。

収蔵数が多いせいもあるのでしょうが、公開されているのはいつもほんの一部だけみたいでそれがなんとも残念です。行っても見れない作品が多くて・・・。うっ、うっ、見たいものがたくさんあります~(涙)。

>町田市は文化教育にはかなり力をいれているようです。そのあたりが「何故」の理由かもしれませんね。

そうなんですか。あれだけのものとなると、相当強力なリーダーシップと意欲がないと続けられないでしょうし、中心になって情熱を持って頑張っている方がいるんでしょうね。きっと。

是非是非、展示・公開方法についても今後期待したいですね。私も企画展の内容に合わせてまた行きたいと思ってます。



Posted by alice-room at 2007年09月27日 22:38
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