
思いっきり世を捨てて、反社会的な『左翼』的題名。この企画を出版社側から提案したとかいうのも信じられない話。凄いなあ~秋田書店。確かにあそこキワモノ多いけど、実は結構好きだったりする。
それは別にしてもこの本が2冊も出ていること(2冊で完結)、それ自体が現代では奇蹟ではないかと・・・?
現在の出来上がった社会(体制)に対して不満を抱くのは、若者特有の一過性の病い。不満を覚えないほうがバカだろうが、本書に出てくるような、それに対する反抗の仕方が稚拙でかなりイタイ!!
自分のいる学校で何をやっても、子供がぐずってむずかるのと一緒でしかない。一番身近にいて、争いや競争を嫌う(であろう)教師相手に反抗するのって・・・完全に「無意味」&完全に「独り善がり」。
そもそも学校行くなよ!って言いたい。
日本の戦後、「左」にいっちゃうのは頭が中途半端に良くて(本当にいい奴は俗世を突き抜けるからネ)、マジメなだけで社会の事を知らない、人間的に幼い人が多いように感じる。
だって、体制を変えたいなら、外部から切り崩せる訳ないジャン! 「獅子身中の虫」にでもなって、現体制で出世した方が確実。部下も上司も、義理人情に怜悧な論理の合わせ技をしたたかに使いこなして利用しまくる。それぐらいじゃないと駄目でしょう。でもね、本当に切れる奴なら、せっかく出世した現体制で安楽に過ごす方を選ぶでしょうね。かなりの確率で。
こんなしょうもない事を私が書いてしまったのは、本書を読んでいて気持ちは分かるけど、「だから何?」で終わってしまっているのが笑止千万だったりする。
みんな悩みを持っていま~す。弱い人間でぇ~す。Hして気を紛らわしてま~す。で、終わっているようでもったいない気がします。
山本氏の描く女性って基本的に好きなんだけどね。舞台仕立ても悪くはないんだけど、いつもストーリーが空中分解してしまう・・・それが残念!山本氏の作品自体が枠にはまっている感じがしてならない。
現代社会への不満とか、若い時に感じるどうしょうもない社会への苛立ち、そのまま歳を食ってく自分に対する焦燥感とか、もっと&もっと凝縮して昇華されたら、面白いものになると思うんですけどねぇ~。
その点、かつての白倉由美子氏の作品は、あの愛らしい絵と反比例して狂気の人間性が噴出してたり、現代社会特有の病理を淡々と描き出していて寒気を覚えた覚えたものです。
実際、白倉氏の漫画で描かれた幾つかは実際に事件として実現されたのが、戦慄に値する時代感覚でしょう。その後、本人もつぶれちゃったようですが・・・。
まあ、結論としては、ぬるい日常的なストレス発散(希望・・・)漫画でしかないかなあ~。そもそも私はマルクス主義をよく知らないのですが、少なくとも本書に思想的なところはないと思います。今風にいうと、タイトルで『ツリ』ってとこですね。私も釣られました(笑)。
一応、粗筋。
進学高校に入った素直な少年が、いかにも反体制的なポーズをとっていて、お子様の目からはいけてるように見える先輩の女性に惹かれていく。少年は彼女を追って、将来が開けた道(真っ当な美術部)を捨て、お先真っ暗な『現代美術研究会』と称するいかにもありがちな部活(サークル?)に入部する。
憧れの女性に翻弄されながら、社会に適合できなかった弱者が集まる中で、ぬくぬくと『自由』と『苦悩』と『性』を謳歌する。そんなストーリー。ごめん、微妙に違ってるカンジがするが、私的にはこんな風に感じたのであくまでも主観つ~ことで。
まあ、遅れてきたなんちゃって60年代風『青春』ごっこ、そんなとこかな?
私も進学校にいたし、子供の頃は喘息だったし、社会や大人に不満はあったが、こんな人に迷惑をかける『悪い子』ではなかったな。巧妙に学校さぼって、映画のロードショーの封切り観に行ったり、成人(聖人ではない?)映画を観たり、学校から数百メートルの図書館に1日中籠もったりしてたな。まあ、保健室は小・中までは顔パスだったし。高校でも時々行ってたか。
そういやあ~国旗掲揚塔の件で「右」とか「左」とか極端なのいたなあ~。私はどちらでもいいんだけど、常に少数派につき、多数派を論破することが面白かったっけ。少し嫌な奴か・・・(自爆)。
で、未だに主流になれない訳ね、私って納得。
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いい大人にもなって「マジメなだけで社会の事を知らない、人間的に幼い人が多いように感じる」とかポンコツ認識恥ずかしくないのかな……