
前半の部分は、やはりイタリアもキリストの国だからなあ~と思わずにいられないし、つまんない本だなあ~と思った。読了しないでやめてしまもうかと思ったほどだったが、読み進めていくとドンドン面白くなってきた。
そもそもイスラム原理主義という言葉は知っているけど、その言葉の指すものが歴史的にどういった背景を持ち、それがどう変遷してきたのかは全く知らなかったので興味深かった。そして、更に読んでいくと、このビンラディンという人物、単なるテロリストのスポンサーとか指導者なんて枠にはいらない人間としては大物であることを感じた。
父親が大富豪なのは知っていたが、その父自体も港湾の荷揚げ人夫からの叩き上げであり、苦労人であってなかなかあなどれない人物だが、ビンラディン自体も非常に恵まれた生活環境で大変なエリート教育をうけて育ったインテリであることが分かる。しかも、単なる机上の人ではなく、前線では率先して闘う一兵士であり、熱心なイスラム教徒であり、それだけでもなかなかの人物だが、本当の凄さ・怖さがそこではない。
サウジアラビアの王家とも関係が深いだけでなく、世界中のイスラム教国や軍事組織とも親密な関係を有するのみならず、表面に出ないような多国籍企業を無数に有する、超やり手経営者であり、ベンチャーから一代で大成功させたその手腕は、資本主義国にいたら、NY証券取引所にいくつも上場企業を有するオーナーとして君臨していたであろう。売上高100億円とか1000億円なんて規模ではすまない筋金入りのコンツェルンを今もその配下に押さえているようだ。
もっともそうでなくては、世界中のありとあらゆる所から、輸出禁止の軍需物資を調達し、密輸し、テロを推進する軍事組織に提供するなんて芸当はできないであろう。何よりも主義主張が異なる各独立抵抗組織を反米・汎イスラム主義で連携し、ネットワークしていく外光手腕は、国連にも匹敵しかねないほどだ。アメリカがてこずるのも無理は無い。また、彼らは情報の交換には細心の注意を払い、テキストを映像ファイルに紛れ込ませる手法やさらには情報交換にイスラムの理念には相容れないアダルトサイトを利用するなどの事例も報告されているらしい。
アメリカが合法非合法を問わず、世界中に流れるあらゆる情報を集めようとしてネット上での検閲や盗聴などを日常茶飯事に行うのはこうした事情が背景にある。だからと言って、建前で個人主義やプラバシーを尊重している国自らがそれを踏みにじっている行動は、イスラム側からしては更なる不信と侮蔑を招き、彼らの自己正当化を補強するだけであろう。
この本もそうだが、フセインにしろ、ビンラディンにしろ、日本のTVや新聞を通じて得られる情報ではほとんど聞いたことがないような情報が多い。日本人は何も知らないまま(=情報を捜査されたまま)、与えられた歪んだ情報の枠内で自由に決めていいよ、と言われているような気がしてならない。郵政民営化も然りだが。
もっといろんな情報が欲しいですね。フセインにしろ、ビンラディンにしろ、彼らが勢力を伸ばしていく過程で必ずCIAが絡んでくる。親米で利用できる際には、資金を援助し、対軍事教練や軍事マニュアルまで提供していたのが、やがては袂をわかち、反米に向かう。この図式はここでも変わらないことが分かる。ノリエガもそうだったが、アメリカの戦略はいつもこればかりだ。ちなみに現在でも自爆テロ等で使われる爆薬製造の処方はCIAのマニュアル通りだそうだ。
私が学生の時に、多国籍企業論を受講中のテキスト内に、中南米に展開する米系多国籍企業がCIAの指図の下、現地政権に資金援助等で干渉し、国際政治上の問題となっているという記述を見た覚えがある。当時は私も無知でそんなのは漫画か映画の世界だと思っていたので、驚愕したが、それは事実であり、今も変わらないのだろう。現在のイラクがその好例である。
もっとそういった情報が欲しいと思うのだが、身近なTVや新聞は、芸能人と可愛い動物達の記事でいっぱいで、私の欲しい情報が入手できないのが困る。最近は新聞は眺めるだけで読まず、ネットで複数の情報ソースから知識を得るようになったが、これがなかなか面倒。TV局等にも自由競争が導入され、自然淘汰の原理が働くことを切に望む今日この頃。
いささか話題からそれたが、アルカイダという組織も含めて、知らないことばかりだったのを痛感した。この本はきっかけにはなるが、それほどいい情報源でもないのでもっと使える本を今後探していってみよう。何も知らないままなのは、絶対にイヤだから。
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