2005年08月15日

「アグネス―神の小羊」レオノー・フライシャー 角川書店

もともとは芝居で好評を得ていたものをノベライズ化するという、最近ありがちなもの。で、物の見事に大失敗している。暇つぶしに電車内で読み捨てようかと買ったものだが、本当に捨てたい気持ちになったのは、なかなか珍しい。そういう本です。

ストーリーは、ある精神科の女医がいさかか変わった事件の精神鑑定を依頼される。被疑者が犯行当時、責任能力があったか否かという非常にありがちなものだが、事件は特殊な性格のものだった。

厳重に出入りを制限される女子修道院の若き尼僧が、どのようにしてか身籠り、あろうことが僧院内で出産し、更に赤ん坊を殺したというものだった。それ自体は、スキャンダルであったものの本質的に問題ではないが、その殺人を実行した尼僧は、その犯罪を全く記憶しておらず、しかも一見する限り、このうえなく純朴でその証言が偽証なのか、精神的な病に起因するものなのか不明。この上なく、不可思議な様相を呈する事件となった。

私としては、イエス様の処女からの生誕を念頭に置き、現代に起きた「奇蹟」とかという話を期待していたのですが…見事に裏切られました。この女医が、これ以上無いっていうぐらいのありがちのトラウマをもった女性で、西欧的な信仰に伴う苦悩をまさに体現しているんですねぇ~。非キリスト教的価値観の下で生きてきた私が知ったようなことをいうのは、少々心苦しいのですが、この主人公である女医の行動や思考方法が、もうどうしょうもないくらいいやらしくて吐き気がします。トラウマから、ただ宗教というものは何でも敵という安易な態度でかみつくかませ犬みたいで、正直嫌悪感を覚えてたまらなかったです。

別に信仰心があるわけでもないが、個人的な苦しみを他者のもののせいにするその考え方に唾棄すべきいやらしさを覚えてしかたがなかった。さらにそれが一連の謎説きを通じて、自分の問題を明確化し、認識して克服していく。もう、ある種の人びとが好きそうなパターン。実際、この手の人間の内面を掘り下げ、その葛藤からの脱却を描く心理劇は多いし、名作もあるが、それをそのまま小説にしても陳腐なだけしょう。まさに、そこが一番この作品をくだらなくしていると思う。

せっかく、話を膨らまされる状況でも、無理してつまんない推理劇にされてもねぇ~。こちとら、そんな安っぽい推理に満足するほど、ウブじゃないんだよなあ。もちっと知恵を出して欲しかった。

天使のような歌声で歌う尼僧。恐ろしいまでに世界から隔絶され、歪められた世界に生きている人物。当然、この人もトラウマの迷宮に閉じこまれているんですが…安易・陳腐・お手軽。
私には駄作としか思えないのですが…。amazonのマーケットプレイスで1円ですか。それでも欲しくないな、時間の無駄。皆さん、有限の時間を大切に使いましょう。電車内で寝てれば良かったなあ。眠いです、お休みなさい。ムニャムニャ。

アグネス―神の小羊(amazonリンク)
posted by alice-room at 01:30| 埼玉 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 海外小説A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
面白くなかった本までも紹介してくださって、有難うございます。それではこれは読間ないリストに書き込みます。
。。。と言うより、これは映画で見ています。大変ひどかったです。だから読む気はどちらにせよ起こりませんでした。

面白くなかった本。。。というリストアップしたら、どんなかなあ、なんて読みながら思いました。
Posted by seedsbook at 2005年08月15日 05:06
そうですね、もともと何を読んだかすぐ忘れてしまうので、面白かった情報がどの本だったか分かるようにという個人的な意味合いで書き始めてたりします。そのついでに、他の人が読書する時に参考になれば、嬉しいですね。

なかでも、ハズレの本の事も重要ですよね。良書は出版社でも宣伝してくれたり、情報流れてきますが、お金が絡む商業ベースではまず本の批判ってしませんから。逆に買う時に知りたいのはそういう情報だったりしますけど。

もっとも読む人の趣味嗜好が反映されてしまうので、私がつまらなくてもある人には面白い場合もあるのですが、何もないよりはいいかなあ~って。後は個々人の大人の判断にお任せして。

おおっと、seedsbookさん、映画にまでなってたんですか。間違っても映画見ないようにしよっと(笑)。どうせなら面白いもの見たいですもんね。
Posted by alice-room at 2005年08月15日 13:57
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