

もう言うこともないでしょう。先日行った弥生美術館でも展示されていた華宵の作品集です。編者がそもそも弥生美術館の学芸員なので、こないだ見た作品について、更に詳しく説明がされています。

華宵は、元々は苦しい生活から努力して当世に名だたる売れっ子挿絵家になったそうです。その後、売れていくに従って生活は、あたかも殿様のようだったとお弟子さんの証言が述べられています。その私生活はまさに上げ膳すげ膳で、靴を履くのもお弟子さんが手伝うのだそうです。勿論、食べ物にもうるさく、今で言うならお取り寄せに近いようなことまでしていたそうです。
稲村ガ崎に「華宵御殿」と呼ばれるモダーンな豪邸を建てて、白いカーテン、セセッション式の絨毯、ゆったりしたアームチェア、虎の毛皮の敷き物、エジプトの煙草、トルコ風の入口、卵色のシャンデリア、金箔装の洋書に囲まれ、まさに華宵好みを実践していたんだって。
夜を愛し、まさに宵っ張りの生活をしていたそうです(ここだけだな、私と一緒なのは)。まあ、書いているとキリがないのですが、ちょっと前の小室哲哉かツンクなんかのスケールを数百倍ぐらいにしたもんかな? よく分かりませんが、とにかく華宵の描く女性の身に付けるファションを元に服が作られて三越や松坂屋で売られていたそうですから。口先だけで役に立たないおすぎさんとは違いますよ~。まさに時代の最先端で、未来の体現者だったようです。便箋の表紙を書けば、便箋が飛ぶように売れ、華宵デザインの浴衣まであったそうです。
もっともそれだけ華やかな人生も晩年には曇りが出て、渡米をして永住を願いつつも夢半ばにして帰国したそうです。楽有れば苦有り、驕れる平氏は久しからずってとこでしょうか。人生の晩年まで栄光で終わるのは、やはり難しかったようです。
それでもあの作品の素晴らしさには変わりありません。実物は更にいいです。美しいものが好きな人には、この本をお薦めします。



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