
いつも愛読している柳宗玄氏の手になる著作集の一つ、サンチャゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路に関する本です。
中世において、大変有名な巡礼案内書を全訳していると共に、著者自身が何度も実際に道を辿った経験を踏まえつつ、その内容について解説を加えています。
本書は決して学問的な観点(歴史学等の視点)から書かれた本ではなく、進んで中世の非合理的側面と切って捨てられる側面に光を当てることで、中世の世界を、中世の人々を理解しようとした本です。
本書内で随所に出てくる巡礼路の写真も著者自身が撮影したものらしく、実際の巡礼路を彷彿とさせます。
そもそも巡礼路に興味を持っている人だったら、巷に出ている現代的なサンチャゴ・デ・コンポステーラの巡礼本とは、一味違った楽しみ方、味わい方ができる本だと思います。逆に興味無い方は全然面白くないでしょう、きっと。
巡礼者は人々の善意や喜捨で露命をつなぎつつ、ひたすら聖地を目差すのですが、そういった人々を食い物にする悪人達が出てくるのもやっぱり悲しい事実だったりします。
本来無税の巡礼者に税をかけ、あまつさえ、通常の倍の税を取ろうとする役人。川を渡すからと高額な渡し賃を取るにとどまらず、舟を川の途中で転覆するように仕向け、巡礼者が溺死すると残った手荷物を横領する輩など、いつの時代も旅は本当に命がけだったことが分かります。
まあ、未だにどこの国に行っても空港からタクシーに乗る外国人がぼったくられますが、それなんて可愛いものなんでしょうね。もっとも、日本の田舎へ観光に行ってタクシー乗っても、回り道して時間と料金を倍請求することがしばしばあるし、性悪説を採らないと酷い目に合ってしまうことを本書を読んでいても痛感します。
その一方で、実に善良な人々の存在もあり、ほんと世の中って不思議です。時代が変わっても、国が変わっても、それは普遍だったりします。
私的には、結構楽しく読めました。一度は是非、読んでみたいと思っていた『巡礼案内書』がようやく読めたしね(笑顔)。そうだ、巡礼案内書の内容についてもメモしておきます。
『サンティヤーゴ巡礼案内書』の日本語訳目次旅に必要な水や食べ物、土地の人々の性情などなどまさに旅のガイドブックです。当然、巡礼中に訪れるべき聖地・聖遺物(観光スポット?)も詳しく書かれています。ご利益の内容や由来なども。
第一章 サンティヤーゴへの巡礼路
第二章 サンティヤーゴへの巡礼路の宿場
第三章 巡礼路に沿う町村の名
第四章 この世の壮麗なる三大救護院
第五章 サンティヤーゴへの巡礼路再建に貢献した人たち
第六章 街道沿いの悪しき水と良き水
第七章 街道沿いの土地の名と住民の特色
第八章 参詣すべき街道沿いの諸聖人の墓所、聖エウトロピウスの受難
第九章 ガリスィヤにある聖ヤコブスの町と聖堂の特色
第十章 聖ヤコブス参事会の人数
第十一章 サンティヤーゴへの巡礼者たちの善きもてなし
で、最後には、終点であるサンチャゴでの詳しい町情報も完備。これもって、巡礼したいものです・・・。
そうそう、本書の最後にある「奇蹟」に関する引用文も大変興味深いです。実際に当時、巡礼した人が残した文書に記載された奇蹟の内容です。人はいつでも奇蹟を待ち望んでいるものですね!私もですが!!
但し、内容は悪くないけど、値段は高過ぎでしょう。どう考えても内容からして半値以下が妥当でしょうね。もっとも購入者数から判断すると、この値段になってしまうのかもしれませんが・・・需要がいかにも少なそうだし。
「サンティヤーゴの巡礼路」~メモ本文中の抜き書きメモはこちら。
【目次】サンティヤーゴの巡礼路 (柳宗玄著作選)(amazonリンク)
サンティヤーゴの巡礼路
第1章 聖ヤコブスの聖地へ
第2章 巡礼に旅立つ人々
第3章 ガリスィヤを目指して
第4章 さいはての大聖堂
終章 中世の巡礼たち
全訳『サンティヤーゴ巡礼案内書』
「サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダの奇蹟」(コーモンの領主ノパール筆)
関連ブログ
「巡礼の道」渡邊昌美 中央公論新社
「中世の巡礼者たち」レーモン ウルセル みすず書房
「星の巡礼」パウロ・コエーリョ 角川書店
「スペイン巡礼の道」小谷 明, 粟津 則雄 新潮社
「芸術新潮1996年10月号」生きている中世~スペイン巡礼の旅
「スペイン巡礼史」関 哲行 講談社
「聖遺物の世界」青山 吉信 山川出版社
「スペインの光と影」馬杉 宗夫 日本経済新聞社
「サン・ジャック・ド・ラ・メッカ」とかいったかな。
ある仲の悪い3兄弟(姉、弟1、弟2)の母親が亡くなり、遺産分けをするという段階で遺産には条件がついているのがわかります。
その条件というのが3人そろってサンティアゴ・・・への巡礼をする、というもの。
姉は学校の先生、弟1はアル中の失業者、弟2は成功している(妻はアル中気味)事業家。
誰も「歩く」ということには縁のない人々。
そして顔もみたくないほど嫌いあってる。
それがフランスのどこかの町から巡礼グループに参加。
このグループもいろいろで、とにかく旅を続けていくうちにさまざまなことがおき、仲間意識が芽生え、問題も解決するものもあり、と字面にするとハリウッド製でもOKそうなのが、さすがフランス映画というか、人情話も甘い展開にならなくて、嫌々行ったのにすごく楽しめました。
巡礼路をずーっと歩いていくから景色の移り変わりを堪能できます。
フランスからスペインにはいってからのガラッと
変わる自然とか面白かったです。
題名はグループの中にアラブ人のいとこ同士がいて、ちょっとおつむの弱い子のほうが母親にサンティアゴ・メッカに行っておいで、と騙されてのが由来になってます。
このあたりにもエピソードがあるんですけどね。
ちょっと 話題がそれてしまったうえに長くなりました。
失礼しました。
変わる自然とか面白かったです。
ピレネー山脈を越える辺りからでしょうか? 結構、その辺から自然がだいぶ厳しくなると何かの本で読んだような気がします。怪しげな地理感覚で言ってるので全然違っていたら、笑って聞き流して下さいませ。
フランス映画ですか、ちょっと見てみたくなりました。レンタルやってるかな? 今度、お店に行った時にでも探してみますね。最近、全然映画見てないなあ~。
何故か二時間集中していられない、集中力の無さが悲しいです(涙)。感動して泣く経験もここんとこしてないかも?
景色みてるだけでも楽しいし。
基本的に外国語映画をここでは観ません。
ドイツ語の字幕を読まなくてはならず、悲しいかな、
追いつかなかったりするんですよねえ。
(スピードあげると画が目にはいらないし)
だからしぶしぶだったのですが、ほんとに思いがけなく楽しめたし、
いや、巡礼しちゃおうかなぁ、なんて思ったりしました。(笑)
外国語の字幕ですか・・・即、断念です、私。インド映画とかなら、映像と音楽だけで楽しめるかもしれませんが?
>いや、巡礼しちゃおうかなぁ、なんて思ったりしました。(笑)
夏だと学生のグループとかの巡礼もあるみたいですね。私も是非、行ってみたいんですけど・・・。日本国内の巡礼さえ、まだ行ってない私です(苦笑)。
ここはスイスなので英語の映画にはドイツ語とフランス語の字幕スーパーがつきます。
英語ならなんとかなるので、読まなくてもいいのですが・・・ってこれは一般論。
ふと気がつくと読むのが追いつかないのに、ドイツ語みてたり、わからないのにうっかりフランス語みてたり。
この映画はフランス語なので字幕はドイツ語のみ。
日本で上映されれば日本語の字幕がつきますから問題ないです。
・・・・って、なんか私この映画の宣伝担当みたいですね。
いえ、いえ、そんなことは。。。。(笑)
宣伝有り難うございました、な~んて(笑)。