2005年08月18日

「サファイアの書」ジルベール シヌエ 日本放送出版協会

safaia.jpg謎解き冒険物というべきか、歴史ミステリーというべきか、それとも宗教ミステリーであろうか? 非常にたくさんの要素が詰まった内容の本だと言えるかもしれない。

舞台は異端審問が華やかなりし、15世紀のスペイン。大航海時代を目前に控えつつも、キリスト教徒悲願のレコンキスタ運動がまさに完成しようという時代を背景にして、物語は始まる。そこには私の大・大・大好きなアルハンブラ宮殿の主(あるじ)であった最後のグラナダ王朝のことも端々に触れられている。この本の中に出てくるシアラ・ネバダ山脈やダロー川、みな私の記憶では色褪せないイスラム文化の思い出であり、本書を読んでいるだけでひとしおの感慨がある。

しかし、そんなことでさえ、大したことではないかのように本書には、様々な宗教に関する知識がきらびやかに織り込まれ、とっても大切な『宝』を求めてユダヤ教徒・イスラム教徒・キリスト教徒が反発・協力しながら旅を続けていく。彼らは、おのおのが学識深いその道の精通者であると共に、ある者の友人であった。そして異端の疑いをかけられ、火刑に消えて亡き友人の残した暗号文を頼りに、彼らはこの世にあるとは思えないような神の『宝』を探しにいくのだ。暗号文には、タルムード(ユダヤ教の聖典)、コーラン、聖書の各知識を総動員してようやく解ける難解さでその謎解きが教養を試されます。正直言って、私には難しくてよく分からない所が多数ありました。

逆に、そういうものに素養がある人にはとっても楽しめるものみたいです。私は、この謎解き自体については、薔薇の名前やダ・ヴィンチ・コードほど面白いとは思えませんでしたし、ルブランの「奇岩城」や「813の謎」とかの方が楽しいのですが、友人はすっごく誉めてました。人を選ぶみたいです。残念ながら、私は選ばれませんでした。

そうそう、コロンブスもしっかり出てきます。コロンブスが航海の資金を求めてカスティリア女王に嘆願していたのは有名な話ですが、それも出てきます。但し、私にはそれがストーリー上、有効なシーンだとは思えないのですが…? ある程度、史実に基づきつつ、いろんなエピソードを取り込もうとして、十分に消化しきれていないようにも感じました。

途中までは、結構、宗教的な知識を駆使した謎解きが面白くて引っ張るのですが、最後がなあ~。私的にはすっごく欲求不満で消化不良な感じが残ります。本書の内部であちこちに振りまいたテーマが最後に一点に収束することなく、中途半端に投げ出された感じを禁じ得ません。

たぶん、このラスト次第で全体の印象がガラって変わったと思いますが、私的には微妙な評価ですね。トータルで言うと、可もなく、不可もなくってところでしょうか。正直言って、一般受けはしないと思います。謎解き自体はかなり魅力的で、ダ・ヴィンチ・コードよりも突っ込んでいるんでしょうが、宗教に偏り過ぎて私のような普通の人には辛いです。

但し、宗教について、ある程度分かる方には、とっても面白いかも? 私の友人は非常に高くこの本を評価していましたので。参考までに。

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posted by alice-room at 01:54| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 海外小説A】 | 更新情報をチェックする
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