
NHKが番組制作したついでに、取材した材料をまとめて本にしたというよくあるパターンの本です。
歴史的な意義における『聖徳太子』像ではなく、現代に至るまで民衆から信仰の対象として崇敬されてきた『聖徳太子』像を採り上げています。
具体的に人々がどのようにして聖徳太子を崇敬を行っているかをレポートする体裁をとるのですが、都会の宗教心が薄れた人々と対比して、田舎の地域共同体に残る素朴で篤い崇敬心をことさら美化したり、スピード化、競争化した現代社会を卑下したり、いささか陳腐でステレオタイプの文明批判的なノリには、苦笑を通り越して、安易さの謗りを免れないだろう。
たぶん映像で見ると、郷愁を誘う感じでそれなりにまとまったイイ感じ系の番組だったのではと思うが、個人的には編集サイドの作為が強過ぎて嫌悪感を覚える。本でもそれが端々に出ていてイヤ!
何故、そんなに地方を特別視するんでしょうね? 旅行していれば、いくらでもそういう民衆信仰が息づいているのに気付きますし、自分の近所でさえ、たくさんあったりする。都内だって古くからいる人なら、思い当たるはずなんですが、地方から都内に根無し草で出てきて、地元をしっかりと見てないから、こんな安っぽい言動が出るのでは・・・?と下種の勘繰りをしたくなります。まあ、視聴率とる為でしょうけど。
まあ、嫌な部分もあるのですが、実際にそれらに目をつむれば、人々の普通の生活の一部(普通に聖徳太子を崇敬する日常)を紹介していて、興味深いです。
そもそも太子信仰が日本全国に広がっているのは知っていたし、地方を旅行する度に寺社の片隅に太子像や太子講の碑文があるのを目にしてきたのですが、その内容って知りませんでした。近所の寺にも太子の像とかいっぱいあるんだけどね。
本書では、実際にどのようにして信仰されているかの姿を通して、諸宗派から信仰され、宗派の祖とされていることや、浄土真宗との結び付き、太子伝会、職人に崇められる太子といったものを描き出していく。
その過程で紹介される寺に伝わる縁起や、『聖徳太子伝暦』『御手印縁起』などの内容が大変面白くて好奇心をそそられる。
本書自体は、軽く読み飛ばすタイプの本でしかないが、次にどういった観点から、聖徳太子の資料を探せば良いか、私には大変良いヒントになった。今度、関連書を読んでみよっと!
こうして、読書の連鎖はいつまでも&どこまでも無限に続いていくのでした。少なくとも聖徳太子について、全然知らない私には、いいきっかけになりました。悪い本ではないかと思います。
【目次】聖徳太子信仰への旅(amazonリンク)
1 太子道をたどって―飛鳥から斑鳩へ
2 王陵の谷―太子町・叡福寺
3 極楽浄土の入り口―大阪・四天王寺
4 六角堂の夢―京都・頂法寺
5 絵解きの法要―富山・瑞泉寺
6 まいりの仏―岩手・東和町
7 技術の神様―静岡・三島
8 北辺の太子堂―北海道・知床
付表―現代に伝わる聖徳太子信仰
「日出る処の天子」で固まってしまっていて、
他のものが入る余地なし(笑)
太子信仰というのがあるんですねえ。
これは初耳でした。
決して驚くことではないけれど、なんとなく考えつかなったです。
こういう番組はハリウッドっぽいつくりのほうが大衆受けするのかも・・・・
あるいはするという作り手の中の固定観念ですかね?!
「日出る処の天子」で固まってしまっていて、
ああっ!私もそのイメージが強いです。確か法隆寺から訴えられたのでも有名ですよね。
太子信仰って日本全国にあるみたいですよ~。弘法大師様と一緒で、歴史を通して人気みたいです。
ハリウッドですか、お金かかりそう・・・なんて(笑)。太子の生涯を一連の掛け軸などに描いたものを指し示しながら、説法するのが寺社で現在も行われているそうです。
それをシンプルに映像化しても面白いかもしれません。同様なパターンに、日本の夏になると地方のお寺などで行われる地獄絵図の説法なんかも面白いですよ~。夏に旅をしていると、たまにそういう場面に出くわします。じっと、それを眺めている私。暇な人かもしれません(自爆)。