
そもそもタイトルでローマと言いつつ、全7章中の3章分がマグダラのマリア関係であり、タイトルは出版社が決めて、著者は実質、自由テーマで好きなことをエッセイのようにして書いている。アマゾンのレビューにもあるが、タイトルとの齟齬が甚だしくそれだけでもヒドイと思う。
また第一章のプロローグは、骸骨寺のことを述べているが、私も行ったことがあるので知っているが、この人の勝手な印象や感想を述べているだけで、歴史家がこんなもの書いて意味あるのか真顔で問い詰めたくなる。正直、一人よがり以外のなにものでもない。また、そのノリは本著を通して一貫しており、ネロやミケランジェロについても愚にもつかない事を書かれているが、まともに古代ローマに関心のある人なら、当然誰でもが知っているレベルの話であり、読んでいて読者をなめているのかと、不快感を覚えた。
いつもなら、途中で投げ出すのだが、今回はマグダラのマリアに関する情報が無いか、あくまでも資料探しとして読んでいたのでイヤイヤながら全部を読み通した。そもそもこれを購入したのもマグダラのマリアについて、相当数の紙面を割いていたから、あえて買ったんだけどね。
で、結論からいうと、内容として私が価値を見出し得たのは、著者が他の文献から引用している文章だけだった。いささか皮肉ではあるが、どんな(使える)文献があるのかを探すのが資料読み込みよりも大変な門外漢としては、この点だけは嬉しかった。この本を買って無駄な投資にならなかったと言えるかもしれない。
○カール五世と教皇クレメンス七世の対立で生じた『サッコ=ディ=ローマ』の資料としてクリストファー=ヒバート「ローマ―――ある都市の伝記」(横山徳爾訳、朝日新聞社、231頁)。この辺のことだけ、分かっただけでもヨシとしますか。どっかでビザンツ帝国の話は、聞いたことがあるし、これが二度目だから、きっとそういう伝承があるんだと思います。もっと詳しい内容や文献知りたいなあ~。
とにかく教会側への暴虐、略奪は凄まじかったらしい。病院では看護されていた病人のほとんどが全員虐殺されるか、テヴェレ川に投げ込まれた。孤児院の孤児は殺され、監獄からは囚人が解放されて略奪・虐殺に加わった。ユリウス2世墓廟も暴かれて、死体から宝石や衣服が剥がされた。聖遺物やキリスト磔刑像が火縄銃の標的にされた。聖ヨハネの頭部聖骨は街路で蹴り回された。修道女も他の女性同様に陵辱され、街路でせりに出された、父母が自分の娘の輪姦されるのを手伝わされたりした。内蔵を抜き取られた聖職者達。ロバに聖餐式を執り行うことを拒否してルター派兵士に殺された聖職者等々。凄まじい事例が挙げられています。
○荒井献「新約聖書の女性観」岩波書店。
この荒井氏は、グノーシス関係の著作でも有名で、アマゾンからのお薦めでいつも買え&買えと勧められている著者だったりする。この本でも荒井氏の見解によっているところが書かれている。改めて、グノーシス関係本をこの人ので買ってみようかな。と思った。
○ビザンツ系東部のマグダラのマリア伝説:
マグダラのマリアは聖母マリア及び聖ヨハネと共にエフェソに移り住み、そこで死んだ。そしてマグダラのマリアの遺骨は後にビザンツ皇帝レオ六世(在位886-913年)の命令によってコンスタンティノープルに運ばれたという。
これとは別にマルセイユに流れついた伝説にも触れているが、黄金伝説の核心部分を抜いた紹介であまり意味無いかも?
でも、あとは要らなかった。最終章でローマで宣教した宣教師マグダラのマリアが述べられているが、この人が勝手にそう言ってるだけみたいだし、誰からも相手にされてないんじゃないかな? この部分だけだったらよくいる妄想家や脳内作家レベル。う~、時間の無駄だった(涙)。小説だったら、笑ってすませれるんだけどね。ちょっとヒドイなあ~。
【目次】
1「私のローマ」を求めて
2ネロとローマ
3ローマのユダヤ人
4ミケランジェロとその時代
5マグダラのマリアとイエス
6マグダレーナ伝説と美術
7ローマのマリア
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新約聖書の女性観(amazonリンク)
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マグダラのマリア 黄金伝説より直訳