2007年10月30日

「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会

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ゴシックではないからなあ~と軽い気持ちで最初は読んでいました。また、初めの方は勉強にはなるものの抽象的な退屈さもあって、読んでるうちに眠気を誘うのですが・・・。

2章、3章と進んでいくにつれ、より具体的な図像(写本、ステンドグラス、柱頭の彫刻等)を採り上げた解説になってくると、グイグイと引き込まれいきます。

私が大好きなシャルトルのステンドグラスや彩色写本の図像が題材なのだから当然と言えば当然ですが、それがどのような歴史的な伝統を引き継いだものなのか、また中世に入ってそれがいかなる修正を受けた図像なのか、そこに秘められた深い象徴性故に大変面白いのです!!

更に&更に、今までも分かったような気でいた図像が正確に理解していなかったことを痛感させられます。著者のエミール・マール氏により、図像が意図する本来の象徴を、具体的な資料と論理的で明解な説明で学べるのは本当に喜び以外の何物でもありません。まさに目から鱗と言っても良いでしょう♪ 表面的なガイドブックの説明を見て分かったような気でいた自分が情けないというよりも、悔しいというか、なんともったいないことをしていたのかと反省することしきりです。

それぐらい本書の説明は、私のような無知蒙昧の輩の目を開かせてくれます。シュジェールの言でいうならば、
 「愚鈍なる精神は物質を経て真実にまで昇る」
ということで愚鈍な私も少しは真実に近づいたでしょうか?

さて、本書の内容ですが、まず4~6世紀のキリスト教美術には大きく二つの流れがあり、以下の二つがあった。
 1)ヘレニズム的キリスト教美術
 2)シリア的キリスト教美術
それらが写本等を通して、ヨーロッパのキリスト教美術に取り入れられたとする。

十二世紀のキリスト教美術は、ビザンティンを通り越してそれ以前のニ系統の伝統を継承したものと言える。中世を通しても、伝統的な図像はお手本に対して忠実に守られていった一方で、その一部は修正を受けたものもあった。

そういった大きな枠組みを説明したうえで、個別具体的な例証を挙げて説明していきます。勿論、大きな流れも大切ですが、私的には具体的な意匠の意図の説明が何にも増して有用でした。

例えば、「エッセイの木」とかね。典礼劇の影響をどのように受け、それがどのように反映しているのかとか。当初はイエスの玉座の系統樹を示していたものが、聖母崇拝の高まりに応じて、聖母の系統樹と変質していく視点など、なんとも示唆に富む解説ばかりで改めて手持ちの資料等を見直したぐらいです。

後でそういった個別の説明部分は、抜き書きメモを別途載せますが、
本書を読んでから、ステンドグラスや彫刻見た時、ただでさえ胸を打つ感動は更に数百倍以上に増大すること請け合いです。

私は知らないで見ても、シャルトル大聖堂に心を揺さぶられましたが、本書を理解してから見たら、更にどれほど感動できるか、想像できないくらいです。写本もきっと同じでしょう。

手元にある中世の時祷書の本も、ただ綺麗だなという一線を越えて、深いその象徴性に気付くと全然違った見方ができると思います。象徴性を理解するには、絶対に知識が必要であることを再認識させられました。

本当に素晴らしい本です。エミール・マール氏の本を読むといつも感動させられますが、本書も間違いなく良書です。ただ、分量が多いので読むのにはかなりの気合が必要なのと、いつもながら図版は数があるものの、小さくてよく分からないのが大きな欠点です。図書館等で巨大な美術全集とか建築全集で可能な限り、図版を確認するとベストです。

本当に勉強になり、視点が変わる一冊です。でも、下巻を読むの大変そうだなあ・・・。実は上巻も読破するまでも結構時間かかってます。

具体的な記述については以下に抜き書き。
「ロマネスクの図像学(上)」~メモ
【目次】
<上巻>
第1章 モニュメンタルな大彫刻の誕生と写本群の影響
第2章 十二世紀の図像の複合性―そのヘレニズム的・シリア的・ビザンティン的起源
第3章 フランスの芸術家たちによるオリエントの図像の修正
第4章 図像の多様化―典礼と典礼劇
第5章 図像の多様化―シュジェールとその影響
第6章 図像の多様化と聖人たち
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<下巻>
第7章 図像の多様化―イタリアの巡礼起源
第8章 図像の多様化―フランスとスペインの巡礼路
第9章 芸術における百科全書的性格―世界と自然
第10章 修道院の刻印
第11章 図像に飾られた十二世紀の扉口
ロマネスクの図像学(上) (中世の図像体系)(amazonリンク)

関連ブログ
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「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(下)」エミール・マール 岩波書店
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ルターの首引き猫」森田安一 山川出版社
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社


posted by alice-room at 20:24| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 美術】 | 更新情報をチェックする
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