
世界の全ての叡智が書かれていて、世界を危険に晒す力を持った謎めいたいにしえの書『最後の書』を巡る物語。これがジュブナイル作品だとは、私には信じられません。大人が読んでも十分に鑑賞に耐え得る内容を持った作品だと思います。
最近読んだ本に関する小説としては、これが一番だと思います。ジョン・ダニングの作品よりは、私はこちらを高く評価しますね。
だって、ここに描かれる英国(オックスフォード)の図書館がなんとも魅力的。貴重な写本やインキュナブラ、稀稿本に囲まれた中世以来の『知』の殿堂。これは、本好きにはたまりません! そういったものに囲まれた至福の空間を是非味わいたいものです。普通に描かれている舞台の図書館や蔵書票協会などがいちいち羨まし過ぎ。
また、現代と並行して描かれるグーテンベルクの世界。私も何冊かグーテンベルク関係の本は読んでいて知っているだけに、より一層の興味をそそられます。
確かに主人公が少年であり、ジュブナイルらしいところも多々ありますが、本質的な意味でそんなこと気にならないくらい面白いです。まあ、ネバーエンディングストーリーみたいな部分もありますが、あれと比べたら、こちらははるかに硬派です。
ジャンル分けするとファンタジーになるかもしれませんが、極上のファンタジーだと思います。とにかく本好きの人にはお薦めしたい小説です。しっかし、いいなあ~。やっぱり本に囲まれて勉強するなら、アメリカではなく、イギリスだよね。うっ、お金に余裕があれば、永遠に図書館に籠もっていたいかも?
最近、書庫に入ったことないなあ~。あの独特の感覚って、経験しないと分からないけど、くせになりますよね。書庫で本を探していると、時間の感覚が一切無くなってくるし、ある種の異界ですねぇ~。本書ではそういったものも含めて描かれていて、ドキドキしてしまいます(ウットリ)。
あ~、印刷博物館にまた行きたくなってきた。
【追記】
ワーナー・ブラザースで映画化が決定しているそうです。よし!これは映画館で見ようっと♪
新潮社の関連情報サイト
【新潮社サイトより転載】エンデュミオン・スプリング(amazonリンク)
過去、現在、未来、全ての知識が詰まった本『最後の書(ラスト・ブック)』をめぐり、オックスフォードの図書館で始まる大冒険。全世界17カ国で翻訳される話題のファンタジーがついに登場! 全世界の〈本と活字と図書館〉で育った人たちへ──。
ワーナー・ブラザースで映画化決定!
過去、現在、未来のすべての知識が詰まった全知の本『最後の書(ラスト・ブック)』をめぐる物語。この本を手にした者は全世界を支配できる。もし悪人の手に渡ったら、世界は破滅への道をたどることだろう。ただし、その本のページは、空白でなにも書いてなく、選ばれし者しか読むことができない。──グーテンベルクをはじめ、歴史上の人物も登場させ、印刷術の話などもおりこみ、主人公の現代の少年が追跡者の影に怯えながらも、本の謎を解明していく。──『エンデュミオン・スプリング』は1450年代のドイツと現代のオックスフォードを舞台にした歴史サスペンスタッチになっています。
関連ブログ
「ヨーロッパの歴史的図書館」ヴィンフリート レーシュブルク 国文社
「世界の図書館」徳永 康元 丸善
「聖なる暗号」ビル ネイピア 早川書房
「コーデックス」レヴ グロスマン ソニーマガジンズ
「謎の蔵書票」ロス キング 早川書房
「呪のデュマ倶楽部」アルトゥーロ ペレス・レベルテ 集英社
「グーテンベルクの時代」ジョン マン 原書房
「グーテンベルクの謎」高宮利行 岩波書店
英国の図書館って雰囲気たっぷりなんでしょうね、、。
ダックが可愛かったです。
映画化、楽しみですね。また面白そうな本があったら、ぜひ紹介してくださいね!