2007年11月11日

「敵は海賊・正義の眼」神林長平 早川書房

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もうずいぶんと久しぶりの海賊シリーズでしたが、やっぱり神林氏の海賊シリーズは文句無く面白い。外れが無いんですよねぇ~。

表面的には、いつも通りのたわいないお馬鹿な会話を交わすアプロ、ラテル、ラジェンドラの愉快なノリが楽しませてくれる一方で、ツザキの『何者にも束縛されず、ただ自分の生きたいように生きる。そして、その障害となるものは徹底的に排除する』というシンプル且つ明確な世界観の描き方には、強い共感と憧れを抱きます。

今回の海賊課の面々は控え目の出番であり、むしろ舞台の設定の一部として溶け込んでいる感(←結構、そういう場合多いですね。このシリーズでは)もありますが、『海賊課 VS 海賊』の対立構図はあたかも世界を構成する陰陽二元論として本作品の中でも強く息づいています。

神林氏の作品に共通のテーマだと思いますが、この『世界』というものの認識や個々人のそれへの関与の仕方、それはやはり本作品でも貫かれています。

小難しいことを考えなくても、読み物として十分に面白いのですが、娯楽として楽しみながらも、ふといろいろなことを考えさせられる作品です。まさにSFの本質を兼ね備えていることは疑い無いところでしょう。

本書の前日に中世思想の本を読んでいたせいか、「天上位階論」とその思想的背景を思い浮かべてしまい、なんか感慨深かったです。

まあ、堅い話はその辺にして。ストーリーは・・・。
今回は、自然保護運動家だった人物が出てきます。主義主張は無いものの、人々を先導する天性の才能を有した人物。彼がツザキに操られ、ある行動に出る事で海賊課は、その根本的な存在意義さえ脅かされる・・・ことに?

「下手の考え休むに似たり」ではないけれど、行動することこそが海賊課を支える不滅の存在意義かもしれません。な~んてことを考えながら、楽しい読書をしました。

【余談】
先日初めて『敵は海賊~』のアニメを見たけど、う~ん・・・原作を一切考慮しなければ、普通のちゃらいアニメなんだけどね。原作を知ってるとちょっとショックかも? 少なくとも原作の設定を活用した別作品として捉えるべきモノでした。

まあ、割り切ってみれば、それはそれなりのアニメなんだけど・・・いやあ~原作の旨みが完全にばっさり割愛されているので、神林ファンの人は要注意! こういうのは難しいものですね、ホント。

敵は海賊・正義の眼(amazonリンク)

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posted by alice-room at 15:22| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 小説A】 | 更新情報をチェックする
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