
SFマガジン等で著者の名前は見たことがあったように思う。実際、著者の活躍するメインフィールドはSF関係の書評などで、本書で語られるジャンルも圧倒的にSF色が強い。
私自身も高校生の頃に、SFマガジン(早川書房)と澁澤龍彦を中心に生活してたので著者が語る内容はおぼろげながらに分かるが、やっぱり真性のSFファンって『濃いなあ~』って思わずにいられないノリがそこかしこに漂う文章です。
たぶん、こういうのがダメな人は一発で嫌いかもしれない? 元祖オタでしょう(決して悪い意味ではないので注意!)。その代わり、古書に関する愛情が滲み出ているのも事実で相反するようなコメントですが、古書好きには共感できる部分が非常に多いと思う。私、結構スキ。
そうそう、ちゃんと書いておかないと誤解を招くかな? あくまでも中核はSFだと思いますが、著者の関心の範囲は、幅広くミステリーや怪奇・幻想系なども守備範囲らしいです。ミステリやSFは、書名を聞いても知らないものがほとんどですが、幻想怪奇系になると途端に私の知っているものが増えていきます。
最初は、私の趣味と全然合わないし、収集方法も方針も私とは根本的に違うし、つまんないかなあ~と思いながら読んでいったのですが、読み進むにつれ、段々と面白くなっていきます。
古書マニアとしての特性が出てくるにつれ、やっぱりこういう人っているんだなあ~と思うと共に、自分ってなんてノーマルなんだろうって安心している自分に気付きます(良かった!)。
同じ本を買うことがあっても、ごく一部の本以外は初版や月報、帯等にはこだわらないし、ほとんどが自分が持っているのを忘れたせいで、必要以上にコレクターと化していない自分の良識さに感動しちゃうぐらい。精神安定剤として、読んでおいてもいいかも?
体調絶不調なのに、デパートの古書市初日に行く病気さをほとんど持ち合わせていない自分を誉めてやりたくなります。マジに。時々、そういうことをしたくてたまらなくなりますけどね。用も無いのに、展示会や商談と称して外出して、古書市巡りなんて滅多にしませんよ、大人ですもの私(オイオイ)。
でも、本当に古書市の初日って、サラリーマンも来てるんだよね。営業や外回りでは絶対に無さそうな人が。半休で来てるのか知らないが、怪しい???
それは置いといて。
伊達にプロの書評家ではありませんね。やっぱり、上手い紹介がされている本がちらほらあります。幾つかは私もこれから読もうと心に決めました。『ガルガンチュワとパンタグリュエル』
また書誌的な情報もそこかしこに溢れています。もっとも私の興味の対象外なんで、直接的には役立たないけど、でも、読んでて面白いです。本好きなら、楽しめると思います。
但し、著者の古書の収集法(として紹介されているもの)は、なんていうか一般的過ぎて面白くない。恐らくみんなそれ以上の独自のノウハウがあるはずだし、著者も絶対に持っていると思う。出し惜しみしてるんじゃないかなあ~。どんな情報もみんなが知った時点で、陳腐化するし、価値を失うからね。何よりも欲しい本が有限である以上、自分の手に入らない事態だけは避けたいでしょうしね。
こんなこと言う私自身も、自分なりの方法がありますが、どんなことしてもそんなことブログに書く気にはなりませんしね。釣りをしている人が釣れるポイントを他人に教えないと全く同じ心理でしょう。知人等ならいざ知らず、苦労して獲得したノウハウを無償で提供されることは有り得ません。
そこが実際は難しいところかもしれませんね。と同時にそういったノウハウと情熱とひたすら運頼みというのが、古書収集の醍醐味かもしれませんね。
本書を読んだせいか、ついつい私も古書店廻りをしてしまい、ちょっとツウ好みの本を何冊か購入してしまいました。ダメですね、すぐ影響を受けてしまうタイプのようです私って(笑)。
【目次】ブックハンターの冒険―古本めぐり(amazonリンク)
序章古本日記Ⅰ―晴探雨読日々是楽園―
第1部 ボクの修行時代
第1章古本屋がボクの教室だった
第2章猟書は長い坂をのぼるようです
第3章それでもあなた、コレクターになりますか?
第2部 揃える愉快
第4章≪異色作家短編集≫は旧版にかぎる
第5章≪不思議小説≫三段跳び
第6章≪シュルレアリスム≫に夢中
第3部 ホコリ高き楽園
第7章北京で出版された怪談集
第8章戦前の科学エッセイ
第9章この世の外の料理本
第10章ヴェルヌとともに世界一周
第11章ルイスのイマジネーションに脱帽
第4部 ブックハンティングの旅
第12章サンフランシコ古書巡礼
第5部 紙魚の偏愛
第13章急にイーリイが読みたくなって
第14章≪新編・異色作家短編集≫を夢見ながら
第15章忘れられた作家、モーリス・ルヴェル
第16章ラブレーでファイト一発!
第17章言葉を使わないストーリーテラー
第18章グロテスクな想像力、ミハイル・ブルガーコフ
終章古本日記Ⅱ―世紀末百貨店古書即売会七転八倒之図
関連ブログ
「世界古本探しの旅」朝日新聞社
「本棚が見たい!」川本 武 (著) ダイヤモンド社
「古本道場」角田 光代、岡崎 武志 ポプラ社
「古書街を歩く」紀田 順一郎 新潮社
「古本屋さんの謎」岡崎 武志 同朋舎
「古書店めぐりは夫婦で」ローレンス ゴールドストーン, ナンシー ゴールドストーン 早川書房
「古書法楽」出久根 達郎 中公文庫
「世界の図書館」徳永 康元 丸善
「ヨーロッパの歴史的図書館」ヴィンフリート レーシュブルク 国文社
>なんていうか一般的過ぎて面白くない
>恐らくみんなそれ以上の独自のノウハウがあるはず
あると思います。確かに。
>何よりも欲しい本が有限である以上、
>自分の手に入らない事態だけは避けたいでしょうしね。
そうそう、自分が入手できない状況は避けたいですし、
そういうのを公表することができませんね。
自分が入手できなくなる確率が高くなります。
>釣りをしている人が釣れるポイントを他人に教えないと全く同じ心理でしょう。
まだ釣りのポイントはマシかもしれません。
魚は一匹しか存在しないわけではありませんから。
古書とは量が違います。
自分が購入した後の本なら、いくらでも紹介しますが、購入予定リストは、あまり書かないのもそれが理由だったりします。
まあ、私の場合、そんな珍しいものを狙いませんが、すぐ絶版になってしまう昨今、安く買いたいので競争者は少ない方が嬉しいのもまた真実だったりします。