
バチカン図書館内での殺人事件。人の生皮が剥ぎ取られ、「聖バルトロメオ」を象徴した猟奇事件。そりゃ、誰だって「ダ・ヴィンチ・コード」を連想し、あの手の小説を想像するでしょう。実際、私もそれを期待しつつ読んだクチです。
結論から言うと、本書はそういった類いの小説とは全く異なり、一切ダ・ヴィンチ・コード系とは無縁の小説です。訳者か著者だったかな?どちらかの言葉を借りると、純然たる警察小説だそうです。
うん、私もそう思います。バチカンは舞台として使われていますが、本書のポイントは、むしろ人間の「情愛」というか人間性に関わる心情を描いた小説でしょう。推理小説的な面白みや、薀蓄的な面白さはあまり期待できません。
その一方で、上巻についてはバチカンにまつわる事実を知っているとそれだけで惹き込まれるだけの魅力があります。例えば、ロベルト・カルビやマルチンスク枢機卿、こういった固有名詞が頭に浮かぶ人ならば、ニヤリとしながら読んでいけるでしょう。本書に出てくる登場人物は、明らかに現実の人物がモデルになっています。
しかし、そういったことがすぐ頭に浮かぶ人でなく、単純な小説として読もうとするとちょっとつまんないかも? 上巻の時点で。登場人物のの女性についても、いささかの嫌悪感を抱かずには読んでいけないだろうし・・・。
下巻に入ると、状況は様変わりしていきます。いつのまにか、人間関係の複雑さを描く人間ドラマになったりする。上巻で覚えていた不快感は下巻では消えて別なものになり、アイデアは面白いんだけど、結末はかなり微妙。
私的には、人の心に関する読み物として面白かったけど、通常の小説とはちょっと違う感じですね。たぶん、あまり受けない作品かもしれません。歪んではいてもそれなりに巧みに人の心の揺れ動きを描写していて、うまいんだけどね。
普通の小説(推理小説など)を期待するならば、読むべきではない小説かと思います。
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この本わたしも読みましたが、あんまりおもしろくなかったです。
同じ著者の「ヴェネツィアの悪魔」というのも最近読みましたが、まだそっちの方がおもしろかったかな。。。
確かにこれって、毛並みの違う系統の小説って感じがしました。この著者、他にも書かれている本が翻訳されているんですね。全然知りませんでした。どんな内容だろう? 今度、本屋か図書館で探してみたいです。
かび臭い雰囲気がよかったです(?)
最初の方にまた聖バルトロメオのエピソードがちょこっと出てくるので、この人よほどカワハギが好きなのだな、と思いました。
ランダムハウス講談社文庫で出ています。
皮剥ぎを好む性癖(というか趣味)って・・・著者さん・・・・(苦笑)。