
法律上でいくら債権があるといっても、債権は回収して現金になって、初めて本当の意味での財産権になるのであり、回収できない債権は子供銀行券のおもちゃのお金と同じようなもんです。いくら法律上、保護されていても力がない者(更にいうならば、無知であることが一番最悪ですが)には意味ないんですね。その辺のことが分かり易く、実例入りで紹介されていて面白いです。
実際に社会でそれなりの仕事をしている人なら、そうそう良くあるねと共感できますし、あまり社会経験のない人なら、自分が物を知らない故にカモにされたり、搾取されたりといった目に遭わない為にも有用だと思います。
もっとも、先日お亡くなりになられた青木氏は、かなりのマルクス信者でそこには私は共感できませんけどね。私は大学院でも近経(=近代経済学)専攻で、マル経(=マルクス経済学)には、あまり価値を見出しませんでした。あれって、経済ではなくて哲学とか思想の範疇のような気がしますしね。まあ、人それぞれですが。
まあ、それらはおいといても、現在の資本主義社会では、生きていくうえでの法律や経済の知識に関する限り、「無知」は「純粋」や「無邪気」といった肯定的な価値観ではなく、「怠慢」といった否定的なものなのかもしれませんで、こういう本もたま~に眺めるのは有用だと思います。実際、ここに出てくるような国家の払い下げる国有地の入札や、マンションやビルの一棟買いの話は個人がすぐできる話ではないですが、定価で売られているマンションを購入するのがいかに暴利をむさぼられているかを理解するうえでは参考になります。
これは私が実際に知っている話ですが、とある副都心の一等地にあるオフィスビルに入居するにあたり、最初の数ヶ月の賃料をタダにしてもらうなんていうのは、なんでもなくて。まとめて15年とか20年分の賃貸料を現金一括で払うから、賃料を3割とか4割まけろとかそういう交渉をするんですよね。金持っている人は。
あるいは、通常のお客さんでもプラチナカードホルダーとかは、モノを買うのでもまとめて20個買うならいくらまけるかと、交渉してくるんですよね。一般カードの人は、必ず定価で買うのに、金持ちは必ず値切る。勿論、お金があるからできるし、それをするから金持ちなのですが…。
だいぶ昔の話になると、あるとオフコンを一台入れるのにハードとソフト合わせて2000万以上とかいうのを、他社とあいみつをとってさんざん値段を落としたうえで、細かい見積もりを出させて不要部分を削りながら、1000万円まで落とす。更に契約書の最終段階で、支払を一括現金にするからといいながら、もう一度値切る。かなりエグイ。そこまでしないと駄目なんだろうなあ~。ビジネスって。
それと同種の事柄がたくさん載っていて、思わず納得・共感しながら読みました。青木氏の本、全般にいえるけど、知っておいて損はない知識や情報がたくさんありますね。少なくとも自分が資本主義の社会で騙されたりするのを防ぐ役に立ちそうです。
こういうのを知ったうえで、必要に応じて専門書を読むと便利です。どっかの銀行が漫画の「ナニワ金融道」を新人研修で採用したと言っていたけど、さもありなんってね。私が大嫌いだった道徳の本よりは、人生にとって有用だと思いました。
青木雄二のナニワ資本論(amazonリンク)