
出てくる登場人物も「ダ・ヴィンチ・コード」著者ダン・ブラウン、「レンヌ=ル=シャトーの謎」のヘンリー・リンカーン、「マグダラのマリアと聖杯」のマーガレット・スターバード、「マグダラとヨハネのミステリー」のリン・ピクネット等々、ダ・ヴィンチ・コード関連本の大御所勢揃いって感じです。よくも集めたなあ~、という驚きとギャラいくら払ってんのとか勘繰りたくなる豪華さです。もっともダン・ブラウンは顔を出すだけで、自分の作品についての解説は一切しないんですけどね。でも、出演料は取るんだろうなあ~(笑)。
で、内容ですがいくつかのテーマを絞ってそれぞれの人に自説を主張してもらう形になっています。個々にインタビューしたものを編集してつなぎ合わせているので、平行線のまま交差しない議論にはならず、それでいていろんな説があるんだなあ~と素直に思えて楽しいかも?
但し、それぞれの本を読んでいる方はそこで既出の内容ですが、いちいち本なんか読んでらんないよ~。本代も高いし、時間もないし、という人にはまさにうってつけ!! それぞれの本の美味しそうなところをつまみぐい的に説明しているので、大幅な時間の節約になるかも?
反面、それぞれの説の論拠の説明が少々不十分になっているのは、止むを得ないでしょう。ここで出てくる説明を聞いて、興味を持ったらその人の著作を読んでみることをお薦めします。本の方がきっちり説明してますしね、当然。
でも、このDVDもなかなか面白い。私の場合は既にほとんどの本を読んでいるので知識的には新しく得る物はなかったですが、それぞれの人の自説の主張の仕方が際立っていて面白かったです。「レンヌ~」のリンカーン氏はTV関係者の割になかなか慎重で、非常に信頼が置ける姿勢が印象的。シオンの秘密文書に関しても、フランスの公文書館に確かに実在するけど、信憑性は別物だといい、自分の著作も含めて捏造なんていくらでもできると冷静に物事を眺めている。あとで訂正したにせよBBCが企画を取り上げるのも頷ける真面目な態度に、大変好感を覚える。
それと対象的なのは、さながら西洋の魔女といった雰囲気のリン・ピクネット女史。この人はいつもそうなんだけど、自分の思っている仮説がもう絶対的な真実だと頭から信じ込んでいるようで、いつみても狂信的な信者の如き態度で主張をするのが特徴的。勿論、非常に勉強して博識なのは確かなのですが、その知識から仮説を産み出し、それを立証していく姿勢には、多大なる不信感を思える。仮説自体は、これから立証していくことなのに、比較すべき他の仮説や通説等を頭から、ローマ・カトリックの陰謀で歪められているとでも思っているように感じられてならない。話としては面白くても信頼できる結論はこの人の著書からは得られないんだよね。すご~くもったいないと思うのですが…。
そしてこの二人の中間に位置するのがマーガレット・スターバード女史。この方のベースは、冷静に資料を読み込んで、比較的論理的に妥当な歴史解釈を進めていくようでいい感じ。時々、自説に入れ込み過ぎるきらいはあるものの、まずまず冷静かも。分かり易い論旨でなかなか勉強になります。
内容についてはというと。
レンヌ=ル=シャトーの謎、シオン修道会、絵画に隠されたダ・ヴィンチの暗号、イエスとマグダラのマリア真実とフィクション、失われた福音書、コンスタンティヌス帝の陰謀、テンプル騎士団。これらの項目について、それぞれの人が自説を展開しているので内容は盛りだくさんです。
ダ・ヴィンチ・コードでは触れられていなかったソニエール伝説について、きちんと紹介されていますし、彼が発見した暗号文書の話もいいかも。マグダラのマリアについては、イエスに香油を塗って聖別する行為が古代においては、まさに「婚姻」を表す儀式の象徴であったこととかも詳しく述べられています。で、失われた福音書はいわゆるグノーシス派の福音書ですね。そこでは、しばしばイエスとマグダラの関係について興味深い記述が見られるというアレです。コンスタンティヌス帝については、元々太陽神ミトラ教の信者でその教義とキリスト教の類似性に着目して融合を図ったとか、ミトラ教の聖なる日である12月25日をクリスマスにしたとか、うちのブログでも何度か扱った話題に言及しています。まあ、13日の金曜日がテンプル騎士団逮捕の日に由来するというのは、俗説の一つでしかないのを、さも常識という感じで語っているのは茶番ですが、ご愛嬌で許しましょう(笑顔)。
時々、勝手な思い込みと不正確な断言があるものの、それなりに充実している内容ですのでダ・ヴィンチ・コードの本を読んで、もっとその背景を知りたい!という知識欲に萌えた(じゃなくて、もえた)方にはお薦めします。他にもある関連DVDの「ダ・ヴィンチ・コードの謎」よりは、はるかにイイです。
でもね…、興味がないと眠くなるタイプのDVDです。あと、聖書についての若干の知識がないと説明自体についていけないかも? これはどうしょうもないですね。逆にいうと、ダ・ヴィンチ・コードって極力その辺の説明をしなくて済むように、或いは要領よくポイント解説に留めつつストーリーを進められるように、うまく描かれているんだよね。だから、あのスピード感を維持しつつ、あの情報量を伝達するんだから、素晴らしいです。それなりに説得力がある文章と何気に洗練された文章力、構成力があって初めてあの作品は成り立っていることを感じました。
まあ、ダ・ヴィンチ・コードのファンで、知りたがり屋さんにはOKの作品です。これをきっかけに資料を読み漁ると、私のようにどつぼにはまりますが・・・(苦笑)。でも、私もこれ観て2回ほど寝てしまったのも事実。人によっては辛い作品ですのでご注意を!
ダ・ヴィンチ・コード・デコーデッド(amazonリンク)
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