
でもなあ~、最初にオーソドックスな聖母マリアの説明してから、マイナーな説を紹介するというスタイルを取らず、いきなりマイナーな「イエスのミステリー」(たくさん売れたけど、トンデモ本として有名)の説を紹介するのは、いかがなもんでしょう?前半には「イエスのミステリー」から抜き書きした説の紹介が多く、私も既読なんで誤解はしませんが、いかにも日本人が描く、斜めから見たキリスト教観という感じがしてしまうのですが…。
その一方で、第一章では不要な頁数稼ぎにしか思えないところで、聖母マリアを祝う人々を熱狂的なまでに描いているのは何故? 民衆が聖母マリアを熱望していることを示すにしても違和感を感じます。
それ以上に、拒否反応をおこしかねないのが、著者の描くアラム語表現。イエスが語ったとされる一部地域の言葉であるアラム語だが、これをわざわざ名古屋弁にして「みゃあーみゃあー」いうのはいかがなものか? まあ、確かに当時としてもまさに方言だったんでしょうが、読んでいて個人的にはだいぶイラつくのも事実。読み終わってから、気付いたのですが、以前読んだ「絵画で読む聖書」も同じ著者だったんですね。あれもちょっと鼻につくなあ~と思っていたけど、納得しました。
まあ、内容的には処女族胎について種々の説の紹介、図像学的な聖母の絵画の解釈、聖母マリア信仰の興隆(ケルトの大地母神崇拝を取り込んだキリスト教)、現・において奇蹟を起すマリア等々。バランスは悪くないし、それなりに興味深い説をあちこちから引用しているのは評価できると思います。この本で扱っている参考文献は、悪くないと思います。巻末にあるのは、ほとんど私も既読か、知っている本ばかりでたぶん普通に手に入る範囲では、使えるんではないでしょうか?
そうそう、コーランにおける聖母マリアの扱われ方なんかも、とっても面白いかも?実はコーランにもしっかりマリア様は描かれていて、結構な人気者だったりします。私も別な本で読んだ時にビックリしましたが、その辺の事にも触れられています。あの「黄金伝説」にも言及しているし、まあまあかな?
でも、正統派とは言えない本です。これから入るとなんか歪んだ知識ばっかり、蓄積しそうなんですが…。えてして怪しい説の方が面白くて記憶に残るからね(私がこのパターン)。軽~く、冷やかしで読むならいいかも? ある程度、基本的なことを知ってから、こういう本に行った方が本当は勉強になるんだけどね。個人的には竹下節子氏の「聖母マリア」とかの方がはるかにお薦めです。
結論としては、この本で一・お薦めなのは参考文献の頁。そういう本でした。
聖母マリア伝承(amazonリンク)
関連ブログ
「イエスのミステリー」バーバラ・シィーリング著 感想1
「聖母マリア」 竹下節子著 講談社選書メチエ
著者の講演でウケたようですが、そんなの「声に出して」読みたくないよ、斉藤孝先生!と一人でツッコミいれてあげました。
私も雪国を名古屋弁だと、「ちょっと…待って!」ってツッコミ入れたくなるかも(笑顔)。
聖母マリアとは関係ないのですが、ヴァチカン
関係で面白い記事があったのでTBさせて
いただきました。イタリア語ができたら、どこか
の大学に潜り込みたいと思いました。