
著者の小泉氏の本は何冊か読んでいるが、当たり外れがあるように思う。本書は私的には大いに当たりだった。
知っている食材や料理もたくさんあるが、同時に知らなかったものでこんなの美味しそうなものがたくさんあるなんて! いやあ~感激です!!
メモしておいて、全国を旅行した際には、探して是非Tryしてみようと思ったものが実にたくさんある。読んでいて、本当にお腹がすいたし、酒が飲みたくてしかたなくなった。
そんな誘惑する魔力のある本です。基本スタンスは、いつもと一緒。有名・無名を問わず、発酵という過程に関わる魅力的な食(食材・料理・調理法等)を次々に紹介していきます。著者が発酵学の専門家であり、日本の伝統的な食文化が発酵学や衛生学などの今日的観点から見ても、実に合理的でしかも美味しくなっていて素晴らしいかを教えてくれます。
私の嫌いな「おいしんぼ」などのように、必要以上に大仰しくなく、淡々とこれ美味しい、という視点が私の本書の好きなところです。
そして、実際に紹介されているのも私的にツボに入った美味しさで、自分の知っているモノなら、思い出してお腹がすくし、本書で知ったモノならば、食べたくてお腹がすくし、どちらにしてもお腹がすく本です(オイオイ)。
魚を食べ終わった後の骨に、塩などの調味料を少し振ってお湯をそそぎ、骨をしゃぶるように食べるというか飲む著者のやり方は、新潟の漁港近くに住み、魚屋さんの娘であって母が今でもそうしているのを見るので、やはりツウの食べ方なんだなあ~と思う。
お刺身やフライなど以外のお魚はあまり食べない私は、不肖の子なのでそういう食べ方をしたことがないのだが・・・やっぱり美食家になれないわけです。
あっ、でも塩辛は買ったものよりも自家製が一番好き! もっとも自分で作らず、作ったものを食べるだけだから、やっぱり駄目&駄目君かな、私?
著者は、塩分を濃いめにして1週間以上置いたほうがお好きなようだが、私的には一日置いて二日目以降のものが大好物。当日は、味がなじまず、単に塩辛いだけで美味しくない。二日目になると、味がまろやかになり、とげとげした塩味が嘘のように消えてくる。これが日本酒や焼酎のロックにいい。ああっ、おととい食べたばかりだけど・・・。
いろいろな話が書かれているが、ふむふむと勉強になることが実に多い。酒の話もあるし、調味料の話もある。ミシュランの本を買って喜ぶタイプの方には、お気に召さないかもしれないが、本当に美味しいものを食べる為なら何でもするような、真の意味で貪欲な『食いしん坊』なら楽しくてしかたのない本だと思います。
この本については、お薦めです。あえていうと、別に『世界遺産』とか便乗するようなことしなくても良かったのに・・・というとこぐらいです。まあ、編集サイドの企画だったんでしょうから、しかたないとは思いますけど、それ以外はOKです(笑顔)。
【目次】小泉教授が選ぶ「食の世界遺産」 日本編(amazonリンク)
「発酵」の遺産
フグ卵巣の毒抜き
酢茎
大根漬け
糠みそ
豆腐よう
甘酒
種麹
かんずり
琵琶湖周辺の熟鮓
アケビの熟鮓
「調理」の遺産
日本粥と日本雑炊
焼いて食べる漬け物(べん漬けとへしこ)
早すし
握り飯
灰汁巻き
『豆腐百珍』
干し椎茸
『卵百珍』と日本流鶏卵料理
キリタンポ
沖縄の「いらぶー汁」
「食材」の遺産
蘇鉄味噌
ドングリ味噌
梅干
オントゥレパカム
ネドチ
トンブリ
花料理
碁石茶
柿渋
唐墨
宝漬け
魚骨料理
メフン
うるか
このわた
イカの塩辛
ホヤ料理
海鼠子(くちこ)
河豚料理
黒焼き
「調味」の遺産
七色遠辛子
山葵
山椒
出汁
鰹節
カレールウ
ジャパニーズ・ウースターソース
「保存・殺菌」の遺産
火入れ
灰による食料の保存法
種馬鈴薯の殺菌法
灰干しわかめ
くさや
凍み食
干し納豆
村上の「塩引き鮭」と北海道の「山漬け」
「教え」の遺産
酒道
茶道
「会席」「懐石」と「精進」料理
「酒」の遺産
泡盛の「仕次ぎ」
粕取焼酎
灰持酒
吟醸酒
燗酒
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「中国怪食紀行」小泉武夫 日本経済新聞社
「世界屠畜紀行」内澤旬子 解放出版社
「悪魔のピクニック」タラス グレスコー 早川書房
「酒の肴・抱樽酒話」青木 正児 岩波書店
ラベル:食
いつか覗いてみたい。
↑まだ紅葉がきれいなのですね。。。。
紅葉、こちらはまだまだ残っています。ようやく寒くなってきて、寒さには困っていますが、綺麗な紅葉は嬉しいです。