2007年12月12日

「とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅」中村好文、木俣元一 新潮社

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とにかく写真が素晴らしい! 写真の撮り方もさることながら、どれを対象に選ぶか、その「選択」が冴えていると思う。本のサイズにしては非常に大きく写真が載せられていて、写真を最大限に生かすべく文字のレイアウトも考えられている。

解説はエッセイ風で気軽で読み易く、親しみ易い。ロマネスク建築を全く知らない人でも抵抗感無く読めるし、知っている人なら単純な旅行記(取材記?)として読んでも楽しめる。観光ガイドよりは、かなり詳しい説明になっているし、アクセスなども丁寧に説明されているので通常の観光ガイド+αとして現地に持参してもいいかもしれない。

本書を見ていると、改めてロマネスク建築を自分の目で見てみたいと強く感じる。ただ、アクセスの悪い所が多いのでそれだけが難点だけどね。

ロマネスク建築や美術に関する本や全集の写真はしばしば見ているが、本書はそれらに負けず劣らずの価値を有すると思います。きちんとした解説は、他の本を読むとして建築や美術はまず眼から入っていかないとネ! 最善は実物を見ることですが、それが無理ならせめて写真で見たいものです。本書の写真は、ロマネスク建築の理解に大いに役立つと思います。

もっとも堅いこと抜きにして、柱頭の怪しい彫刻などがとにかく好き。タンパンなども素敵だし、Simple is best.を地でいくシトー派の教会堂なども雰囲気が素敵♪

手紙流用形式のロマネスク紹介もいいけど、ちょっと紙幅を取り過ぎかな? もう少し割合を減らせば更に良いかもしれません。手元に置いて眺めていたい本です。
【目次】
ブルゴーニュ地方
 ロマネスク建築の宝石箱
 小さな教会を訪ねる ブランシオン
 トゥニュ 初期ロマネスクの空間美
 オータン 中世彫刻の甘美なささやき
 ヴェズレー 永遠の丘に座す栄光のキリスト

プロヴァンス=コート・ダジュール地方
 シトー派の三姉妹に会いに行く
 ル・トロネ 信仰をはぐくむ光の回廊
 セナンク うしろ姿に宿る気品
 シルヴァーカーヌ 修道士の夢のあと

ロマネスクからの手紙 中村好文

ラングドック=ルション地方
 ピレネー山麓の隠れ寺詣で
 ブール・ダモン 緑に埋もれた小修道院
 カスタイユ よみがえった絶壁寺院
 モレイヤス・ラス・イヤス 小堂を彩る仰天壁画

ミディ=ピレネー地方
 巡礼路の至宝をもとめて
 トゥールーズ 巡礼者が集う薔薇色の教会
 モワサック フランスでいちばん美しい回廊
 コンク 山里に息づく聖女の魂

ロマネスク美術談義 木俣元一

中世美術を見るヒント
旅案内
とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅 (とんぼの本)(amazonリンク)

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「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
祈りの中世‐ロマネスク美術写真展~国立西洋美術館
「ロマネスクの園」高坂知英 リブロポート
「世界の文化史蹟 第12巻 ロマネスク・ゴシックの聖堂」柳宗玄 講談社
posted by alice-room at 19:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】 | 更新情報をチェックする
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